占拠
我は今ケンプファーに居るのである
ギルドではなく庁舎の方であるがな
「そういう訳でカンプファン卿、あの村の責任者は辞退させていただく」
「むう・・・そこまでなのか、ペールデンテの民は・・・貿易の窓口としても良い場所だと思ったのだが・・・」
「あの手の人種は信用なりませんな。私たちは手を貸すことはしないでしょう」
「君にそこまで言わせるとはね。すまないが私の手の者にも調べさせてもらうよ?」
「どうぞ、私たちは協力を一切致しませんが」
その日のうちに文官が護衛を連れて開拓村へ出発していった
まあ10日もすれば帰ってくるであろ
次は開拓村へ移動する
今度はテスタロッサの姿である
「止まれ!何者だ!」
門番が誰何してくる
「ベレーナのテスタロッサ。ワークルエ隊の荷物を回収しに来た」
「あぁ?ふざけるな!此処はペールデンテ開拓村だ!ベレーナの人間が来るとこじゃねぇ!とっとと帰れ!!」
「貴様は此処の責任者か!この土地はカンプファン卿の領地である!!そもそも貴様らは亡命を希望していたのではないのか!不法占拠したということで間違いないな!」
大声で宣言する
付近にいた者の耳にも聞こえたのであろう
ざわざわと野次馬が集まり始めた
「聞こえなかったのか!無益な戦争を吹っ掛けてきただけでは飽き足らず不法占拠をするペールデンテのクズども!!誰の開拓村だと?もう一回言ってみろ!!」
「う・・・う、うるさい!ここはペールデンテの民が作り上げた場所だ!ペールデンテの村だろうが!」
「阿呆が!イグノランテから説明されているはずだ!!交易の拠点とするために開墾と土地の提供をカンプファン卿が負担していると!亡命を希望した貴様らは飾りつけをしているだけの分際でデカい口を叩くな!!」
野次馬たちが集まり始めた
その中にガタイが一回りデカい、顔中に包帯をまいた男が出てきた
「おい姉ちゃん!ここはペールデンテの村なんだよ!カンプファンだか何だか知らねぇがとっとと帰りやがれ!」
「そうだそうだ!」「帰れ!」など後ろで騒ぎだす
「ほう。あくまでもペールデンテの村であるというのだな?つまりペールデンテの侵略戦争の前線基地であるわけだ。ならば殲滅しても問題なかろう」
我は槍を一振りすると剛力の影響か町を囲う柵を吹き飛ばした
それをみて息をひそめる野次馬たち
「では参るぞ、侵略者ども!貴様らを潰した後はペールデンテも更地にしてくれよう!」
ビビりながらも突っ込んでくる者たち。おそらく元衛兵組であるかな?
使徒との戦闘にくらべれば何ということもない
まあ全て手加減して殺してないが、骨の数本は折っておく
衛兵組が大体40人位であるか?
後は非戦闘員のようであるな
「や・・・やめてくれ!どうして、こんなひどいことを!」非戦闘員の男が叫ぶ
「阿呆が!聞いてなかったのか!貴様らが侵略してきたことを自分で宣言しただろうが!」
我は槍の石突で男のみぞおちを突くと胃液を出して悶絶した
殺さぬよう手加減しつつ建造物を破壊していく
数刻もすれば骨折者と瓦礫の山が残った
「次はペールデンテでも同じ事をするから、せいぜい逃げるんだな!」
我はテントと荷車を回収して開拓村跡を出ていった
魔物も増えてきているらしいし、逃げれたらいいね?
ワークルエ隊が待機している場所へいき壁の一部を壊してから中に入る
壊した個所はもとに戻しておくがな
「テスタロッサ・・・・君が来てくれたのか」
スウォートである
「まあ、あんたらの処遇に私も関わっているからね。イオラに頼まれなくても協力するさ」
「あ、ありがとう。ところでイオラちゃんは・・・・」
「ん?あの子ならカンプファン卿の所へ行って開拓村の破棄を宣言しているわ。もし続けるとしても私たちの協力は無いことも伝えてるしね」
「あなた達の協力・・・・樹の1本斬るのにも労力が相当かかると・・・」
そうなのだ
本来であれば樹を斬り根を掘り返して開墾していくもので
一晩で出来る方が異常なのである
「それに魔物も増えてるんでしょう?生きていたら良いわね」
「あなた、まさか・・・・」
「殺してはないわよ?柵も建物も崩れてるけどね・・・・」
誰も殺していないであるよ?
手足の数本は折れているだろうけど
「それで、イオラから聞いたけどケンプファーへの移籍でいいのね?」
その問いに頷く面々
「そう。それじゃケンプファーへ行くまでに新しい名前を決めて置いて。別人として生きてもらうわよ」
戸惑いながらも頷く
我は荷車を出して出発準備を整えるよう指示
済み次第、移動を開始する
「隊長!準備完了しました」
「よし!ワークルエ・・・・部隊の名前も変えるんだよな?」
我は頷いて肯定する
「・・・総員、移動を開始する」
我は先導して森を突っ切り街道を目指す
元開拓村へは寄らない
街道に出ればケンプファーへ向かう
大体ケンプファー迄2~3日といった所か
街道を歩いていくのも久しぶり・・・・・いや、初めてかもしれん
最初っから飛んで移動していたであるな
街道といっても整備されてもいないし、土が剥き出しの道なので所々ヘコミや轍の跡でえぐれてたりしている
この様な状態が、この世界の当たり前なのであろうな
休憩を取りつつ街道を歩いているとケンプファーから数騎の馬が掛けてきた
5mほど手前にとまったのであるが、数人の衛兵と文官らしき男であった
「すまぬが、ちと訪ねても良いだろうか?」
両手をあげ文官が声を掛ける
敵意はないという意味合いであろう
「質問によっては答えられんぞ?」
我が代表して回答する
「ありがたい。貴殿たちはペールデンテ方面から来たようだが途中で開拓された村を見なかったか?」
元ワークルエ隊が何か言うより早く回答する
「あったぞ。開拓村というよりペールデンテの前線基地だったがな」
「なっ!」「我が領主の情けを受けているくせに!」「騙しおったか!!」
衛兵の皆さん、おこである
「私が尋ねたときに『ここはペールデンテの村だ。カンプファンだか何だか知らないがとっとと帰れ』と言われたのでな。再度の確認はしたぞ?カンプファン卿が交易のために場所を提供しただけだとな。しかし奴らは『全てペールデンテの物』と言い張ったのでな、侵攻の意図ありと判断し柵と建物を破壊しておいた」
それを聞いて文官と衛兵は引いている
なして、後ろのワークルエ隊も引いているのであるか?
「いや、その話が本当なら許しがたい者どもだ。失礼した、私はケンプファーの政庁補佐官をしているケーニッヒという。貴女の名を伺っていいだろうか」
「ベレーナのテスタロッサ。ケンプファーのエクスが証明してくれるだろう」
エクスの名前をだしたら文官も衛兵も納得の顔をした
「5属性のエクス殿か、了承した。情報提供感謝する。ではこれにて」
文官と衛兵はペールデンテ方面へ向かっていった
「さあ、休憩はそろそろ終わりにして出立するよ」
「テスタロッサ・・・・その、今の話は本当なのか?」
スウォートが聞いてくる
「本当だ。奴らはあの土地をペールデンテの物として占拠していた」
「はぁ・・・・私らは本当にお飾りだったんだな・・・・イオラちゃんが怒る訳だ。それに気づかなかった自分も愚かだがな」
「・・・・まあ、考える時間がなかったんでしょ?時間はこれから、沢山あるわ」
休憩を切り上げ出立
ケンプファーに着くのはそれから1日後であった
「ここが、ケンプファー・・・・」
10メートル位の石壁が周りを覆い、さらに目算深さ3メートル幅5メートルの空堀を備えている
中央の門には太い格子が巻き上げられており左右には門番の詰め所があった
左通行で並び街に入る人々、逆に出ていく人々
ワークルエ隊の面々はその様子を眺めて呆けていた
「名前はそれぞれ決まったかしら?あなた達には一旦、狩人ギルドに登録してもらうわ。それからどうするかは落ち着いて決めればいいわ」
我は12人を連れて門へ行く
ちょび髭の兵士が確認をしているので狩人のタグを見せる
「狩人だな。通って良し」
「後ろの12人はツレなの。一緒に通っていいかしら」
我は銀貨を12枚、ちょび髭の衛兵に渡す
「わかった。何かあったら、あんたの責任になるから気を付けてくれ」
了承してから全員通過する
「さて、まずはギルドで登録ね。この道を真っすぐいくと中央広場にでるからギルドマークが付いた建物が狩人ギルドよ。あとはエクスに聞いてちょうだい」
「テスタロッサは一緒に行かないのか?」
「子供みたいなこと言わないで。私は宿を抑えにいくから同行は出来ないわ」
「そ、そうか・・・何から何まで世話になる」
我は手を振ってワークルエ隊と別れると、物陰に隠れてエクスに変わり『猫の手亭』に向かう
『猫の手亭』で我と女性12名の宿泊を予約しておいた
部屋が少なかったので2人で相部屋のように使ってもらう。
我?なぜか職員用の部屋に通されたである
その分料金は安いのであるが
部屋を抑えたのでギルドへ向かう
ギルドの前でたむろしているワークルエ隊が居た
「待たせたようだね」
12人がこちらに振り向く
「身分証明の為にも狩人ギルドに登録してもらうのだけど、テスタロッサから聞いているかな?」
「エクス君、君からの物資で我々は生き延びることができた。テスタロッサやイオラちゃんからも随分助けられた。ペールデンテにいいように使われてきた我々だが進むべき道を示してくれたことに礼を言う。ありがとう」
12人全員が頭を下げる
ギルドの前なので当然、人目について目立っているのだが
一先ずギルドに入り、大会議室を借りることに
グランツに言って登録の準備をさせる
受付はアスシオンとエトゥーディーであるか
「おやおやおや、正妻2人のほかに愛人12人ですかぁ。私も立候補してもいいですか?」
「君はマゾなのか?前回、大変な目にあったと思っていたが?」
「私は真面目なので何も言ってませーん」
「では書類の方は頼む。グランツ、彼女達のランクなのだが元兵士ということで2種にならんか?」
「ああ、そりゃできるがエクスの時みたいに試験は受けてもらうぞ?」
了承してもらえたので書類を書き終わった12人に説明する
「そういう訳で2種免許になる為には試験を受けてもらう」
「ああ一つ言い忘れていた。エクスはソロだったが12人でパーティを組むのか?それとも分けるのか。パーティなら団体戦でも試験させてもらうぞ。エクスは団体戦の試験官として対応してくれ」
しょんない
試験の結果であるが
スウォート改めシトナイ Cランク
クンター改めセミラミス Cランク
他、カラミティ、ジェーン、タマル、アン、ベイリー、ディカ、キュベレ、クレオ、シトナイ、ゼノビア、アニータ
の10名がDランク
シトナイをリーダーとする元A班『輝く夜明け:ファストシャイニング』 Cランク
セミラミスをリーダーとする元B班『希望の朝:セリブリーツ』 Cランク
と決まった
登録費用と会議室使用料で銀貨37枚をアスシオンに渡す
「これで登録は終了だ。腹も空いたろう?併設の酒場で好きな物を注文してくれ。食事が終わったら宿へ案内しよう」
「ま、まってくれエクス君。その、我々は手持ちがなくてだな・・・」
「俺が持つから心配しなくていいよ。テスタロッサからも頼まれてるしな」
「・・・・・すまない・・・・重ね重ね恩に着る」
多少の出費など使える駒が手に入るとしたら安いものである
結局使えそうなのはこいつらだけであったな
食事も終わり『猫の手亭』に向かう
「すまないが部屋の都合で、二人一部屋になる。部屋割りは其方で決めてくれ」
部屋割りを決めて荷車から荷物を下ろしていく
「それと当面の生活費だ」
一人金貨1枚を渡す
「こんなに?」「貰いすぎじゃ」など言っているが装備を揃えるところからである
金貨1枚でもギリギリじゃないか?
「魔物を狩るにしろ装備を整える必要があるだろ、ギリギリだと思うぞ?」
「エクス。今日は飲むか?」
宿の筋肉親父が聞いてきたので、歓迎会とすることにした
12人に街中の把握と買い物に行かせて親父と二人で準備する
今日はグランツも早く帰ってきている様だ
「エクスよ、開拓村の件を断ったんだってな。ギルドも設立予定であいつ等を行かせる予定だったんだがなぁ」
「思ったよりひどかったのでな・・・・潰してきた。アレなら最初から作った方が良いものになる」
「そこまでか・・・」
「あいつらはカンプファン領への亡命を希望しておきながら、開拓村をペールデンテの物だと言っていたのでな」
「そいつは・・・ひでぇな」
雑談をしていたら12人が帰ってきたようだ
「ただいま戻りまうぇ!」
玄関で止まったシトナイにぶつかるセミラミス
「なんだよ隊長!急にとま・・・・はっはーん」
セミラミスが手招きして俺を呼ぶ
「グランツ、あとは配膳ぐらいだから頼む」
我は続きをグランツに頼みセミラミスに近づいた
「なあなあエクス君。ギルマスが何でここに居るの?」
にやにやしながら話す。時たまシトナイを見ているが?
「?グランツの事か?この宿はアイツの実家だしな。そりゃ居るだろうよ。あとアイツは副ギルマスな」
「マジで?あの風格でサブなの?」
「ああ、アイツあれで24らしいんだわ」
「「「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」」」
12人全員の息が揃った
「どう見ても50言ってるよな?若いからサブだけどもうすぐギルマスになるんじゃないか?」
「あの見た目で年下・・・・・でも、いい・・・・」
グランツを見つめているシトナイ
「なあなあセミラミスさん。シトナイさんてひょっとして親父好き?」
「そーなんだよなー。父親好きをこじらせてんだよアイツ」
「ほうほう。それは是非とも祝福しなくてはなりませんなー」
「おや、ご協力いただけると?」
シトナイを除く11人と我で悪だくみをするのである
「エクス!出来たぞ!」
「おう!それじゃ皆席についてくれ。グランツ!音頭をたのむ」
それぞれに酒を渡しグランツを立たせる
「ちっ!えー、あー・・・詳しくはエクスから聞いてる。つらい中、苦しい中耐えて、この領に来てくれたこと嬉しく思う。ようこそケンプファーへ!新たな狩人達に乾杯!」
乾杯の合唱のあと飲み食いが始まる
進展があれば良いであるな




