約束
蛇がスキップしそうなほどの上機嫌でペールデンテに向かっていったあと
我はケンプファーへ飛んだ
明日の昼までに間に合うかなー
ケンプファー執務室に着いた
何故か入り浸っている大司教
我には都合がいいんだがな
「帰ってきたかエクス君。蛇の行方が分かったかね」
キヨネのことは言わない方がよさそうである
何、不意打ち闇討ち・・・手はいくらでもある
「いや、蛇ではなく亜人の方だな」
「亜人ですと?ペールデンテに出没している使徒ですな。ひょっとして見つかりましたか」
使徒の行方を気にしている大司教
「見つかった、というより倒された。イオラが討伐している」
「なっ!南に現れた『亜人』を倒したものではないですか!そのものがもう一人の『亜人』を倒したと・・・」
「本人から聞いているので間違いない。『亜人』はドワーフだったらしい」
「イオラといったか、その少女は。エクス君、彼女と連絡が取れるなら一度ケンプファーへ来てもらうことは可能かな?以前にも言ったと思うが彼女に礼を言いたいのだ」
そんなこともあったのー
「了承した。大司教、使徒討伐の報奨をイオラに渡すことは可能か?」
「もちろんだとも。南の亜人の討伐報酬も用意しよう」
「エクスよぅ、知っているなら教えてくれよ!」
いたのかグランツ
「ちょうどいいグランツ。イオラは狩人ギルドに登録していないが報酬を受けても良いんだよな?」
「うぁ?・・そりゃ、問題ねぇが・・・・」
「なら問題ない。俺はイオラに伝えて、その足で蛇の行方を追うよ」
やれやれ
街を一回出ないとならんである
街を出て森に入る
この前気づいたのであるが次元潜宙の中で変化することができたのである
この方法であれば変化の際に人目を気にしなくていいのである
ならば街中で変化すればいいだろうだと?
門番が出入りをチェックしているからイオラが街中に居るのがおかしくなるのである
木の陰で次元潜宙に潜りイオラに変わる
イオラの装備を『村娘装備』から『魔女っ娘装備』に変える
相変わらずのドピンク装備である
木を3本ほど移動してから次元潜宙から出て街に入る
そういえば何処に行くとも話していなかった
ギルドに行けばよかろ
街中でジロジロと見られながらもギルドへ到達した
ギルドの中でも見世物扱いである
「エクスからこちらに来るよう言われたんだけど?誰が対応してくれるの?」
受付にいるアメリーとウィレンスタークの目がきょろきょろしている
「え・・と、お名前を伺っても宜しいですか?」
ほむ
ウィレンスタークが対応するか
「イオラ」
短く名前だけ告げる
「イオラ?・・・・イオラって南の漁村で活躍したっていう・・・」
「愛と希望のマジカル少女!?衛兵たちも探している?」
アメリーが叫ぶ
「それが、どうかしたの?エクスから呼んでるって聞いたから来たんだけど、用がないなら帰るわ」
我は踵を返してギルドから出ようとする
ギルドがダメなら庁舎へ行けばいいだけである
「ちょ!ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ・・・まってまってまってまって!」
「直ぐに副ギルマスを呼びますので、こちらへどうぞ!」
アメリーが慌てて止め、ウィレンスタークがギルド内へ指示をしている
「こちらでお待ちください」
ギルドマスター室に通されて茶を出される
暫く待つと数人の足音が聞こえた
ドアがノックされる
返事をするとドアが開かれ3人の男が入ってくる
「お待たせいたした!副ギルドマスターをしているグランツという。そしてこちらが領主であるメンシン=カンプファン様と大司教のライヒ=グロウヴィカイト様です」
「イオラよ」
「初めまして、イオラ嬢。メンシン=カンプファンという。南の使徒なる者を倒していただき街を代表して感謝する」
「べつに感謝はいいわ。そんなもので、お腹は膨れないからね」
「・・・・ベレーナの衛兵騒動も納めてくれたと聞いている。その報奨も渡したい」
「横から失礼する。天神教の大司教を務めているライヒ=グロウヴィカイトと言います。エクス殿よりあなたへ使徒討伐の報奨を渡すよう伺っております」
ほむ
大司教の名前は長くて面倒であるな
「そう。貰えるものは貰うわ」
「その前に君が倒した使徒のことを教えてくれないか?」
「・・・・・・・・ふう、良いわ。何が聞きたいの?」
まあ確認事項であったな
水棲人の『ハヤブサ』のこと、ブラックサンタのドワーフのこと
どうやって倒したかも聞かれたが、手の内を明かすわけなかろう
「どうして手の内を明かさなくてはならないの?エクスの顔を立てて、この街に来たのに不愉快極まりないわね」
不機嫌な顔をして見せる
「大司教!たとえ狩人ギルドに登録していなくても手の内を聞くのはマナー違反ですぞ!」
グランツが叫ぶように諫める
「・・・失礼した・・・・使徒を倒せる力を知りたかったのだ・・・申し訳ない」
「教会なんかに引きこもってるから、世間のマナーに疎くなるんじゃないの?」
「これは・・・手厳しい・・・しかし、その通りですな。大変申し訳ない」
「はぁ、解ったわ。謝罪を受けます」
「和解してくれて良かったよ。話を勧めさせてもらっていいかな?謝礼の件なんだが、大金貨で5枚出させていただく」
「教会からは使徒二体の討伐報奨として大金貨30枚を受け取っていただきたい」
ほむ
大金貨で35枚であるか
「ギルド外のことだから本来、書類は書かないんだが金銭の受け渡しは証書を作った方が良いからな」
グランツが書類を作成して持ってきた
我はそれにサインして金を受け取る
「それじゃ、もういいわね」
我は席を立つ
「ま・・待ってくれ。もう少し話を・・・・」
「私は忙しいの。それじゃね」
我は窓から飛び降りて街の外まで走り去る
そっかベルーナも久しぶりな気がするであるな
魚を買うであるか
ベルーナに出入りしてたのはテスタロッサであったな
ベレーナまで一っ飛びして市場へ向かう
流石に良い魚はあまり残っていないがカツオっぽいのやホタテみたいなの。
エビとカニは此方では外れ扱いで安く仕入れられる。あとタコとイカも
蛇のことだから大量に食べると予測して多めに買っておく
次は北東に飛び、アフェットゥオーソを目指す
アフェットゥオーソはエクスであったな
此処では野菜類を購入し渓谷猪を仕留めてギルドで解体してもらった
ウディッツに銀貨を渡せば急いで捌くようにしてくれた
この女中がギルマスだったっけ
我がペールデンテに着いたのは日も暮れてる時刻である
イオラの村娘装備で街中をあるく
食料品を売る店も閉まっており買い物もできない
しょんない
足りない分は明日にしよう
『騎士の誉れ亭』へ向かう
カラコロと音を立ててドアを開くとやる気のない女の声
「いらっしゃっせー、しょくじっすかぁーとまりっすかー」
「あなたは相変わらずね。店主はいるかしら」
だらけているアルカに声を掛ける
「え、イオラちゃん?やたー!!また来てくれたんだー。たいしょー!たーいーしょ―!!」
「騒々しいぞアルカ!聞こえてんだよ!!で今度は何のようだ?嬢ちゃん」
丸坊主のマッチョ親父が奥から顔を出す
「お願いがあって来たの。明日の昼に領主の所にいるキヨネがここに来るから厨房を貸してくれない?」
はっきりいって不審者まるだしである
「領主の所のキヨネちゃん?たいしょー!受けましょう!絶対受けましょう!!」
「・・・・・何に使うか聞いていいか?」
アルカは乗り気、坊主マッチョも大丈夫っぽい
「キヨネに仕事を手伝ってもらったから、お礼に食事を作る約束をしただけよ」
「ふむ・・・俺が作るってのは?」
「焼く・煮る・蒸すのほかに調理法を知ってる?」
しばし考える坊主マッチョ
「ケンプファーで揚げるっていうのが流行っていると聞いたことがある」
「『猫の手亭』の主人に教えたからね。あと『炒める』『ゆでる』『和える』方法があるわね」
また、考える坊主マッチョ
「・・・・わかった、厨房を使って構わない。その代わり俺にもその調理を教えてくれ」
「マジ!?イオラちゃんの手料理!私も御相伴に預かりたい!」
勢いよく手を上げるアルカ
「それじゃ泊りでよろしく」
我は料金を払って1泊することにした
我は階下に降りて顔をあらう
「もうすぐ朝飯が出来るから座っててくれ」
我は礼を言って席について待っている
「で、いつから始めるんだ?」
朝食を我の前に置きながら坊主マッチョが聞いてくる
「うーん・・後幾つか食材を買いたいから、買い物の後だね」
「わかった。今日はランチを中止にしとく。それと厨房にある食材は使っていいぞ」
「そう、悪いわね。これ貸し切り代ね」
我は金貨を1枚、坊主マッチョに渡す
しかし坊主マッチョは受け取らない
「・・・・少なかったかしら?」
坊主マッチョは首を横に振る
「違う。ケンプファーで噂の料理を教えてくれるのなら金は要らん。むしろ貰いすぎになる」
料理人の矜持であるかな
「ケンプファーでも同じことを言ってたわ・・・・じゃあ、やり方をしっかり覚えて頂戴」
にやりと笑う坊主マッチョ・・・・可愛くないのでやめた方が良いと思う
朝食も食べ市場へ移動する
客を呼び込む声が賑やかである
購入したのはパンとウナギっぽい魚。どうやら沼地に生息しているらしい
それと卵があったので購入。1個で銅貨2枚、200円の高級品である
それを売ってもらえる分だけ買いこんだ。12個であった
「ところでおねえさん。生活用具を打ってる鍛冶師っていない?」
卵を打っていた40代のおばさんに聞いてみる
「鍛冶師ねぇ、何が入用なんだい?」
「うん、探しているフライパンが無くてね、もう作ってもらった方が早いんじゃないかと思って」
「ああ、あんたちっちゃいからねぇ。その年じゃフライパンを振るのも大変だろう」
ほむ?
なんか勘違いしているようであるが、別に訂正しなくてもよいか
「この先の角を右に行ったところにシュメルってオッサンが鍛冶をしているよ。そこなら作ってくれると思うよ」
礼を言って、教えてもらった鍛冶場につく
そこには煙草を吹かすオッサンが居た
手足の筋肉は盛り上がり、太鼓腹でねじり鉢巻きをしたオッサン
鍛冶場の炉は赤く燃えているところを見ると休憩中といった所か
「えっと・・シュメルさんでいいのかな?」
「ん?なんでぇ嬢ちゃん、俺っちになんか用かい?」
合っていたようである
我は卵売りから紹介されたことを伝え、作ってもらいたい器具を説明する
「それで、出来そうですか?」
「なんてこたぁねぇよ、これなら直ぐにできらぁな」
費用も銀貨で2枚とのことなので2セット用意してもらう
「市場でも散歩してきな。その間に作っといてやるよ」
お言葉に甘えて、買い物の続きをする
市場の先まで行ってみることに
メッツ達の件もあるし、こういった先に良いものがあるかもしれんしな
しょぼくれた爺さんが御座の上に座って樽と麻袋に詰まった何かを売っていた
「おじいさんは何を売ってるの?」
どうやらまったく売れていないようで、じょぼくれ方が凄い爺さんである
「ああ、ブレスっていう穀物なんじゃがな・・・麦と違うせいか全く売れんでのう」
我は爺さんに断ってから麻袋の中身を見せてもらったら茶色の粒であった
「・・・・・おじいさん、そっちの樽は?」
「こっちはスープの味付けと思ったんじゃが、黒くて塩っ辛いから嫌煙されとる」
すこし小皿に入れて舐めさせてもらう
うひっ
思わず笑ってしまうではないか
玄米と醤油である
「おじいさん、このスープを作るとき上に茶色の固形物が無い?あったらそれも見たいんだけど」
これに驚いた爺さん
「あんた、これが何か知ってるのかい?もちろん持ってきているが、あまりにもアレに見えるから出してないんだ」
そう言って別の樽の蓋を開けて見せてくれた
間違いなく味噌である
「おじいさん。これらを幾らで売るつもり?それと幾つ持ってきたの?おじいさんの村で作ったの?それとも何処かから仕入れてきた?西、南はないから東?東ならアフェットゥオーソに先に行くだろうから、北からかしら」
一気に捲し立てたので爺さんは困惑していた
「待ってくれ嬢ちゃん。・・・・はぁ、まずはブレスが一袋銀5枚で同じ袋で5袋、セーユが一樽銀3で5樽。ミオが一樽7銀で2樽もってきている。あとお嬢ちゃんの言う通り、北のタンダ―チーザミンという国で作られたものだ」
これは良きことを聞いた
全てが終わったらその国に言っても良いかもしれない
「もってきている物は全部買うわ。まだ仕入れることは可能かしら」
我は銀貨54枚の内4枚を先に渡し『騎士の誉れ亭』へ運んでもらうことにする
残金は店で払うのだ
忘れずに鍛冶師のシュメルの所で『卵焼き器』と『泡だて器』を貰って騎士の誉れ亭に戻った
あとは料理を作るだけである




