慮外
蛇は領主館へ帰っていったので我は宿へ戻ることにした
窓を伝い部屋に戻る
あと1時間ほどで日が昇るであろう
しばし休憩したのちイオラの形で階下に降りる
「早ぇえな嬢ちゃん。もうすぐ朝飯が出来るから座っててくれや」
我は礼を言って席について待っている
昨日と同じ流れである
「今日出立するのか?」
朝食を持ってきた坊主頭のマッチョが聞いてきた
「そうね。こう見えても忙しいの私」
今日は複合体の検討もする予定である
ブラックサンタの行く手も気になるが、まずはどれだけ力を引き出せるかである
昨日の様子ではエアライフルに執着してそぅであるが
朝食を食べ終え部屋に置いた荷物を担いで降りてくる
「あ!よかった、まだ居たー。ねねイオラちゃんってキヨネと仲いいの?」
髪がハネている寝起き感がすごいアルカである
は?何言ってんだこいつ?
「何で私がキヨネと仲がいいと思うわけ?」
「えーだって森の前で、二人でごはん食べてたじゃない?」
ほーん
夜にこいつも居たという訳であるか
何も探知できなかったぞ?
「それで?その暗部の方が私に何か用なの?」
目線を逸らすアルカ
「な・・・ナンノコトカナー・・・・・」
「私とキヨネが一緒に居たのを見たのでしょう?隠密行動が得意みたいね?」
マッチョ親父は何も答えない
まあアルカの自滅であるからな
「仲がいいなら紹介してもらおうと思っただけよ・・・・」
消え入りそうな声であるかが言う
「最初からそう言えばいいのよ。でも、こそこそと裏で動く人間を紹介したくはないわね」
我はそういって宿を出て北門へむかう
北門は人通りが少ないせいか衛兵の数も少ない
門を出て森の中に入る
追ってきている者の気配はない
しかし昨夜はアルカの気配を見つけられなかったのだ油断はできないのである
ムカデや芋虫を躱しながら奥に向かう
もしアルカが追跡してきても蟲が邪魔ですぐには追えなくなると期待しているのである
右に行き、左に行きと繰り返した後で飛んで移動する
高度は取らない。
高すぎると見つけられやすいし、樹の間を縫うように飛べば蜘蛛みたいな木に巣を作る魔物にぶつかるかもしれないから、樹上3m位を目安にする
遠回りして昨日作った拠点に向かう
10m位の崖の中腹にある出っ張りに降りる
穴の様子を見るが蟲や魔物が入った形跡はないようである
我は中に入り火球を明かりがわりに灯す
うん。だだっ広い空間
火球一つでは奥まで見えないので三つ追加する
四隅に散らせば明るくなるであろう
酸欠になっても我には関係ないしー
入口の穴を土魔法で埋める
これで外へ明かりが漏れることもなかろう
じっくりと組み合わせを検討していくとしよう
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時間がどれだけ経過したか分らんが、新モードの素案は出来た
後は実戦で使えるかである
一つ目、獣モード
長剣虎の体をベースに雷鹿の角を生やし、背中からは先が長剣となった腕を付けた
これにより走りながら切り裂くことも、平行にした剣に雷を通し電磁砲としても使える・・・はずである
弾は魔法鞄から随時出す予定
二つ目、捕獲モード
本来は大蜘蛛をベースに考えたのだが、街中などでは騒ぎになる可能性が高いため獅子獣人をベースにする
獅子獣人本来の目の間に二つ、額に二つ小さい個眼を付けている。これで距離感も精度もあがるであろう
またアメコミヒーローのように両手首から蜘蛛糸を射出でき、ロープのように使うこともできる
いざとなったら背中から蜘蛛足をだして押さえつけることも可能である
三つ目 天使モード
ベースにしたのはアインと呼ばれていた天使擬き。
手足や急所と思われる部分を水棲人の鱗で覆いハーピーの羽を6対背に生やした
耳の上で巻いている角には雷鹿と同じ能力を持たせることができた
正直このモードは見てくれだけで強くない。だが人間種にはこのようなハッタリはきくであろ?
実際これで戦えるかと言われると確実ではないのである
「男なら、危険をかえりみず、死ぬと分かっていても行動しなくてはならない時がある。
負けると分かっていても戦わなくてはならない時がある」
某宇宙海賊の言葉である・・・・我に性別はないが
獣モードを試したときに思ったのであるが、嗅覚が鋭くなるようである
ネコで大体、人の数万~数十万倍というであるからブラックサンタの行方も終えるのではなかろうか
我は塞いでいた入口を広げ獣モードで表に出る
様々なむせかえるほどの匂いの本流。なれるまでに時間が掛かるかもしれん
樹の匂い、土の匂い・・・水のにおい・・・それと、血の匂い
血の匂い自体は何か所かから匂っている
魔物が食事をしている場所もあろう
しかしアルコール臭を含む血の匂いは1か所である
酒飲みの所為か消毒に使ったか・・・・森の中でそのような匂いをさせるのは奴しかいまい
我は獣モードのまま、匂いの元へ向かう
足音も出さずにトップスピードで森の中を走る
我のいた場所から東に5kmほど、ペールデンテからなら北北東に4kmといった所で地面が途切れた
足元は6m位の崖となっており、300mほど先に十にも満たない集落が見える
その周辺は本来、森であったであろうが全て伐採されており乾いた土と石榑が広がっている
一つの小屋から煙が上がっていることを考えれば、伐採して炭にでもしたのか?
近くを流れる川も汚れて見える
碌な爺ではない
一つの小屋を除き集落自体に人気はなくシンとしている
此方から見える範囲では窓など無いので家の中の様子がわからないであるが
煙が出ている以上、誰かいるのであろう
中の様子を確認するために近寄るか?
此処からの狙撃をするのである
我は背中に生えている二本の長剣を平行に揃え小屋へ先端を向ける
この件に雷魔法を掛けて磁場を作り出そうというのだ
本来であれば落雷並みの電力が魔法で賄えるのだ。それに元が魔物素材である
魔力の通りは十分に良い
魔力量に伴い長剣が振動で震え、青白く光っていく
長剣と長剣の間に放電が始まりバチバチと音を立てていく
弾丸にするのは以前に拾っておいた折れた剣先である
震える長剣の先を煙の出ている小屋の根本に向け力づくで抑える
長剣と長剣の間に弾丸を落とすと磁場により中心を通り加速、発射される
飛び出した弾丸は、そのまま雷の魔力を引き寄せながら小屋を破壊
魔力をまとっていた長剣は溶けはじけ飛んでいた
我の背中部分も一部、衝撃でなくなったのであるが
差ながらビーム兵器の如く打ち出された弾丸は小屋を含めた集落全て地面ごと吹き飛び、土ぼこりを巻き上げている
我は直ぐに崖の上を移動する
決して『やったか!』などのフラグは言わない
天高く舞い上がった土煙を切り裂くように衝撃刃が走り、我が居たあたりを穿つ
やはり生きていたようである
だが我は既に300mは離れておるわ
ようやく土煙がはれてきたので、小屋のあたりを見やると黒焦げになったドワーフらしきものが立っていた
右手には戦斧を振り切っており左手はない
全身焼けただれており、毛もなくなっている様だ
その様な状態でも生きているのは流石、使徒といったことか
横に移動したことで奴との距離が約400mと離れてしまった
この距離ではエアーライフルでは届かないし、電磁砲では時間が掛かるし光が目立つ
我はイオラに形を変えて慎重に近づくことにした
魔法鞄に入れている圧縮ポンプは既に作動させてあるので何時でも撃てる状態だ
問題は崖下が隠れる場所が無いということである
ゆっくりと歩き始めるブラックサンタ・・・生焼けサンタ
こういう時に脳筋のすることは一つであるな
次元潜宙に入ると同時に辺りが吹っ飛ぶ
予測通りの乱れ打ちである
崩れていく崖に目掛け、次々と衝撃刃を打ち込む生焼けサンタ
一部を次元潜宙から出してみているが”でたらめ”である
我は崩れる崖と共に地面へ落ちていく
着地と同時に這うように移動
これだけ崖を崩したので一部しか見えていない我が隠れるには十分である
「これだけ崩しても出てこんか・・・・それとも埋まってしまったか?」
崩れた崖をみて呟く
「儂にこれだけの深手を負わせた武器を見てみたかったがのう」
奴が横を向いた瞬間、光が奴の右足を打ち抜く
「はっはー!爆発が見えたから来てみたら死にぞこないがいるじゃん!」
ゆったりした服を着た女、蛇のキヨネである
「スティルナーの蛇か!ふん!貴様ごとき片手片足で良いハンデとなろう、相手してくれるわ!」
戦斧を杖にして立ち上がるブラックサンタ
「あぁ、そうかい。それじゃ死んどくれ!」
両手から光魔法?を打ち出すキヨネ
ああ!あれ手と思ったら蛇の頭だわ!!光魔法にみせたブレス攻撃だ
蛇のブレスは人間サイズの片手から出しているので、それなりに細い光線であるが威力はあるようだ
休みなく打ち続けるキヨネ
そのことごとくを躱し戦斧で裁くブラックサンタ
はて?
両手が蛇の頭でキヨネの頭。あと足が頭として、残りの頭は何処へ行ったのであるか?
その時ブラックサンタの左から光線が放たれ、辛うじて躱した物の
右からの光線がブラックサンタの右足を穿つ
その場に崩れ落ちるブラックサンタ
「はっはは!油断したなぁ・・人間の姿に騙されすぎだ!」
キヨネをよく見ると背中のあたりから細いロープが伸びており、それをたどると先端に手首?ヘビの頭が付いていた
オール〇ンジ攻撃であるか!
「オタの知識が役に立ったな!さて、言い残すことはあるかい?」
「ほざくなよ蛇風情が!」
ブラックサンタの体が闇に覆われていく
変化に驚いてブレスを吐く蛇であったが闇に吸収されてしまった
「ふははは!愚かな蛇よ!魔力を打ち消す闇の鎧のまえにはブレスなど効かぬわ!」
その鎧の効果なのかブラックサンタは浮き上がっており両足を潰したのも意味がなくなった
余裕を取り戻しキヨネと対峙するブラックサンタ
逆にキヨネに余裕がなくなってきている
「さぁ!戦いはk
側頭部から血しぶきを上げて倒れていくブラックサンタ
我は次元潜宙から出ていく
「・・・・・・」
ジト目でみてくるキヨネ
なんかすまん・・・・・
いや、キヨネだけと思ってたのか無警戒で真正面に立っていたからつい撃っちゃった。てへぺろ
目の前には血まみれのドワーフの死体
「えっと・・・・キヨネ?これ、いる?」
「・・・・・・・・・・・・・・いや・・・・・・・・・・・・・・・・いらない。私は使徒を倒せればいいから」
「それじゃ、もらっていい?あとで分け前渡すから」
「分け前?」
「うん。多分お金貰えるから半分渡す」
「・・・・・どこから?」
「天神教っていう教会。使徒を名乗る者を討伐したり情報をもって行くだけで報奨が貰える契約なの」
いまいちピンと来てないようだ
「お金は要らないけど、ごはん欲しい。領主のご飯は不味い」
「わかったわ。それじゃ明日の昼にペールデンテの『騎士の誉れ亭』って宿に来て。作れそうなものなら作るわ』
「ホント!!!約束よ!!絶対ね!『騎士の誉れ亭』!!うん、覚えた!!!」
「明日のお昼よ?今から言っても作れないからね?」
「うん、わかった!『騎士の誉れ亭』!明日の昼!・・・・・じゃね!!」
片手を上げると走って街の方へ向かっていった
多分大丈夫でしょう
我はドワーフの死体を魔法鞄に入れケンプファーへ向かった




