閑話 フィーダ①
少し本編がダレてきたので閑話を挟みます
あの子が生まれたのは20年前も寒い日だった
苦しい生活の中で生んだ子
狩人だった主人も、一層頑張って稼いでくれた
そのおかげで生活もだいぶ楽になって、あのこ『フィーダ』もすくすくと育ってくれた
学校にはやれなかったけれど、教会のシスターが読み書きや計算を教えてくれたので
商人になれるかもしれない
あの子の未来が楽しみで夫婦でよく話し合ったもんだ
10年前には主人も魔物の大発生で亡くなってからは死に物狂いで頑張った
その分、あの子には寂しい思いをさせたかもしれないねぇ
まさか。狩人になるって言うとは思わなかったよ
主人の話を覚えていたのか直ぐに資格を取って狩人になっちまった
幾ら最初のころは採集の仕事だけとはいえ注意するんだよと口が酸っぱくなるまで行ったもんだ
それを、あのギルドの連中は・・・・・・
ペールデンテの領主が徴兵を始めた
この時点で狩人ギルドに加入している者は徴兵されずに済むはずだったんだ
登録リストに記載漏れがあっただと・・・・・
冗談じゃない!
そんなミスであの子の未来を変えないでおくれ!!
私はギルドへ毎日詰め駆けて抗議したよ
当時のギルドマスターだったケインも領主に掛け合ってくれたけど駄目だった
責任を取ってギルドマスターを退職したけどね、それであの子はどうなるんだってことだよ
今ではギルドへ近寄りたくもない
謝罪と賠償という形で私とフィーダが死ぬまでギルドが幾らかの生活費を補填される
私はソレで納得しちまった・・・・親として失格だよ
兵士は街にいても、そう簡単に帰ってこれない
あの子は兵士になって女の子ばかりの隊に配属になったって言伝を聞いたよ
良い隊長に仲間に妹みたいな子もいると言って楽しそうにしていたらしい
領主の息子が兵を集めて進軍するという
街の中は意味が解らなかったよ
何で進軍する必要があるんだろうってね
だってケンプファーとは取引で売り買いしている街だよ?
そこと戦争する?
それよりもフィーダのいる部隊も参戦しなければならないということが不安でたまらない
とうとう明日の朝、戦争に行くことが決まったそうだ
それなのに顔を見ることも出来ないなんて酷い街だよ・・・・
西の門から出ていく兵士たち
後の方に女性兵士がまとまっていた
あの中に居るのだろうか
必ず生きて帰っておくれ!喉がつぶれたって構うもんか!私は力の限り大声で叫んだ
あの子が出ていってから、ずっと祈りを捧げてきた
明日帰ってくるのか。怪我はしていないか。不安で潰れそうだよ
7日たった日に門から兵士の帰還の声が聞こえてきた
御立派な鎧を着けた男達が帰ってきたのだが・・・・これだけ?
100人くらいじゃないのかい
しかも男ばかりで女性兵士の姿は何処にもない
兵士は街の人を追い払うようにして庁舎へ駆けて行った
それからはボツボツと帰還してきた兵士たちが居た
私は毎日のように門であの子の帰りを待ち続けた
3日ほどしたら女性兵の集団が帰ってきた
ようやく帰って来たんだ。ほっとして集団に寄ったんだけどフィーダの姿が何処にもない
「ちょっと・・・ちょっと、あんたら・・・あの子は何処だい?一緒の隊なんだろ?」
女性兵たちは顔を見合わせていた
「ごめん、おばちゃん。あの子って誰のことだい?」
「フィーダだよ!私と同じ赤毛の娘だ!」
「フィーダ?・・・」「フィーダ、フィーダ・・・」
「あ!あの娘じゃない?ワークルエの!」「そうだ!ワークルエにそんな娘いたね!」
「おばちゃん、フィーダって娘はおそらくワークルエ隊所属と思うんだ。私たちは別の場所にいたから、その隊がどうなったか迄分らないんだ・・・・ごめん」
そういって謝ってくれた
「そ・・・そうかい。無茶言って悪かったよ・・・・・」
私はまた門の前で待つことにした
それから帰ってきた兵士たちにワークルエ隊がどうなったか知らないかと聞いて回ったら
命令で殿を、最後尾で敵の足止めをしろと・・・
せめて、捕虜となっても生きていてくれさえいれば・・・・・
女性兵士の集団が帰ってきた
待ちに待ったワークルエ隊!
先頭の女性に声を掛ける
「あんたたち、ワークルエ隊だろ?フィーダは・・・娘は何処だい?少し遅れているんだろ?」
その集団にフィーダが居ないのは直ぐに分かった
だから、きっと遅れているだけだ。そうに違いない
「すまない・・・・フィーダとは、途中はぐれてしまい・・・・探すこともできなかった・・・・」
先頭の女性、スウォートというらしいが沈痛な顔で頭を下げた
フィーダ・・・・はぐれただけだよね・・・・
必ず、帰ってきておくれよ・・・
私は毎日、門へ行った
来る日も来る日も・・・・・
あぁ、神様に祈っておくもんだ・・・・・
私は奇跡を信じるよ
いま、門番と話しているのはフィーダだ!フィーダが帰って来たんだ
門を通り街へと入ってきた!
「フィーダ!フィーダじゃないかい!!生きてたんだね!!」
あぁ・・・あの子が帰って来てくれた
やっぱり死んでなんかいないじゃないか
待っていてよかったんだ
ギルドのミスで兵隊にとられてから心休まる日は無かったんだ
もう退役して街の仕事に変えて私のそばにいておくれ・・・・・
「フィーダ!どうして無視するんだい!いままで何処に居たんだい?!」
どうしたんだい?
なんで私を無視するんだい?
通り過ぎようとした娘の腕をつかむが、キョトンとした顔をしている
「すまないが、あなたとは初対面なのだが。それに私はテスタロッタというのだが?」
は?
何言ってんだいこの子は?
フィーダ・・・じゃない?
何故だか分らないが、コレは違う
何だコレは・・・・
私は力が抜けて崩れ落ちてしまった
「ご婦人?如何かされたのか?」
ナニかが話しかけてくる
「・・・!・・・・・・・!!」
男の声が聞こえる
だけど・・目の前が暗くなる・・・・
「気が付いたか・・・何があったか知らんが無理はしないことだ」
何時もいる門番が声を掛けてくれた
アレは・・・何なんだい・・・・
何でフィーダの真似を・・・




