釈明
昨日の内に整地した空間を見渡す
大体直径10㎞の円形の更地、それと一部に川が流れている
端には倒木を文字通り山のように積んであり壁のようになっている
出入口になるように数か所開けて置いてあるので問題なかろう
昼前にワークルエ隊が到着した
「・・・・・・ここを一晩で・・・・・・作っただと?」
「テスタロッサって何者ですか?隊長」
「私にも分らんよ・・・・ただ、彼女に迷惑を掛けたことは謝りたいがな・・・」
「イオラちゃんも言ってたから、いつか会えたら誠意を込めて謝りましょう」
入口で呆然と景色をみながら語っておるのだが・・・
我、後ろに居るのである
「これだけの広さがあれば、1000人でも大丈夫でしょ?」
「「「「ヒャッ!!」」」数人が驚きの声を上げ、その声で他の者が悲鳴を上げる
「もうすぐイグノランテが此処に来ると思うわ。どういった職人が来るか分からないから役割分担をして上手く回してね。」
「そうか。イオラちゃん・・・・堕ちた我々が立ち直れたのは君のお陰だ。ありがとう」
「はぁ、お礼だけは受けるわ。あなた達はこれからなんだからね、それだけは忘れないで頂戴」
我は街道へ向かって移動を始める
街道近くまで行くと馬車が数台止まっている
此方の様子をうかがっており、その中の一人がこちらに気付いた
「おいコラ嬢ちゃん!森ん中で遊ぶんじゃねぇって親から教わらなかったんかぁ?コラ」
モヒカンの如何にも『ひで〇っ‼』とか『あ〇し!』とか言うタイプの男である
「知らないわね。親なんていないから」
そう答えながらも距離を詰めていく
ギョッと目をむくモヒカン男
「知らなかったとは言い訳にしかならんが、済まなかった。この辺りは巨大な魔物が出ていて危険だから近くの村まで退避しておくことを勧める」
「え?」
急に真面目な言葉使いをし始めたので動きが止まってしまった
「俺たちはこの辺りに先行している部隊を追って来たんだが、お嬢ちゃんは見てないだろうか?」
「・・・・あなた達・・・キャラバン?の隊長は誰?」
モヒカンヒャハーな見た目で丁寧な口調って怪しすぎるわ
「む・・・この格好では分かりずらいであろうが、私はペールデンテの兵士だ。このキャラバンのリーダーはギルド長のイグノランテという女性がしている」
「そう。ワークルエ隊はこの先に居るわ。イグノランテは何処にいるかしら」
「情報感謝する。ギルド長のところまで案内しよう」
にかっと笑って扇動していくモヒカン男
最初の口調はキャラ付けであるか?
「イオラ!来てくれたか。言われた場所まで来たのはいいが彼女らは何処なんだ?」
「この先の横道を入っていけば広場が作られてあるから其処で拠点を作って。必要な職人も人でもいるんでしょ?」
イグノランテがモヒカン男をみると、モヒカン男は頷いて戻っていった
先行して合流するのであろう
「それとスウォート達と打ち合わせして拠点を急がせて。必要最低限でいいわ。」
我はイグノランテに地図を見せながら
「ケンプファー側のここに壁が3枚出来る予定になってるわ。なのでペールデンテ側はこの位置に3枚壁を作って頂戴」
「3枚か・・・・大仕事だな」
「わかっていた事でしょ?1000人と言っても『烏合の衆』なんだから効率よくね」
「あぁ、そこらへんは何とかするさ」
拠点は任せても良かろう
我は空を飛びケンプファーへ向かう
「そうなりまして、ここの森を開いて拠点と壁をこのように作るようです」
我はケンプファー庁舎の執務室で領主に報告している
「そうか・・・詳しい内情が聞けて助かったよ。戦争なんてしない方がいいのだからね」
「それとエクス。カンプファン卿より依頼料だ」
グランツから小袋を受け取る
中身は金貨が6枚?
「今更ながらだけどね。グランツからの指摘もあってね、君の行動で随分助けられているから指名依頼扱いにしてもらったんだよ」
グランツを見る
「俺は以前にアフェットゥオーソのギルドへ研修に行ったことがあるんだが、その時に『ただ働きをさせない』ことと『情報の重要さ』を嫌と言うほど仕込まれたんだ・・・・・」
そんなことをいう奴はひとりしか思い浮かばない
「酒場のウディッツか?」
黙って頷くグランツ
「何もんなんだ、あの人・・・」
グランツから聞いたら、Sランクの狩人だったとか本部の諜報部隊だとかの噂があるらしい
我もそう思う
「そのような話もあってね、少ないけれど了承してくれないか?もちろん今後は先に依頼を出させてもらうよ?」
「ギルド側の処理も終わっているから、受領のサインを貰えばそれで処理される」
我はグランツの出してきた書類にサインをして返す
「それで、こちら側の拠点作りはどうなっていますか?」
「こちらは観測する場所と魔法師の寝泊まりする場所を作って、壁に集中するつもりだ。掲示板にも依頼書を出している。エクスはどうする?」
「・・・一度、”蛇”の状態を確かめたいんだがな・・・・あまりにも動きが悪すぎる。生き物なら腹が減れば動くだろ?アレは10日ほど動いていないんじゃないか?」
「それはそうだが・・・・」
「刺激しない程度にはしますよ」
我はペールデンテの拠点へ向かう
今回はテスタロッサの姿でだ
街道と反対側の森から拠点へ入るとテントが立ち並んでいるのが見える
あちこちに篝火をつけ魔物の襲撃を受けないようにしている様だ
そこで集まって歓談している女ばかりの集団があった
イグノランテとワークルエ隊である
「た!・・・たいちょー!!」
此方に気付いた様であるな
全員がこちらを見て立ち上がる
「テスタロッサ殿!貴殿には大変不愉快な思いをさせて申し訳なかった、謝罪をさせて頂きたい。また、我らの窮地に救いの手を差し出してくれたことに多大な感謝を」
そう言って12人全員で頭を下げる
90度まで腰を曲げた最敬礼の謝罪だ
「そのことはもういいわ、謝罪を受けます。私も言い過ぎたからね。イオラから聞いてびっくりしたわ・・・」
「そのイオラ嬢は、ギルド回覧で回っていた『イオラ嬢』なのか?」
イグノランテが聞いてくる
「今更ね。狩人ギルドもすこしは働いてくれるのかしら?」
「無論だ。『腑抜けた』つもりなど無いのでな!」
「それじゃあ、早速今後の事を伺いましょうか。拠点作りに周囲の柵、寝床、トイレに浴場。食堂や厨房も必要よね?壁作りは魔法師で作るのかしら。食料の調達も必要よね、蛇への偵察もしないとね」
「う・・・うんうん、それは解っているとも。今手分けして、皆が出来る仕事を確認中だ。済み次第に仕分けして取り掛かるつもりだよ。うん」
イグノランテの見積もりでは結構な日数がかかりそうであるな
「完成までにどれくらい掛かりそうかしら?」
「・・・・拠点作りと壁作りを並行して行うなら50日といった所ではないだろうか」
思たより掛かるであるな
「魔法師の数が足りない?大分かかるようだけど」
「そもそも魔法師自体がすくないしペールデンテには魔法部隊がないんだ。大体手作業になる。これ位はかかるさ」
「・・・・・そう。討伐の時の衝撃が予測されるから壁を優先できないかしら」
「攻撃の衝撃・・・?そんな威力が?」
「1枚じゃ不安、2枚でイチかバチか。3枚でおそらく止められると思う」
「それで3枚か・・・・ケンプファーの方は?」
「向こうでもギルドで魔法師を募集している。拠点は観測所と寝泊まり出来る程度に収めるらしい」
「そんな少数で?それで守れるの?」
「カンプファン卿は体裁より市民の安全を選択した。街に来ない様に動いている」
「はぁ、それが騎士爵様との違いだね。私もケンプファーに行けばよかったよ」
イグノランテが一人ごちる
「行きたければ行けば良い。死んだことにして逃亡する手もあるのよ?」
「死んだことにして、逃亡?」
「簡単でしょ?ギルドで戸籍問い合わせなんかしているの?」
しばしの沈黙
「出来るだけケンプファーと歩調を合わせてね。後日エクスとケンプファーギルドの者が来ると思うから戦争ではないことを説明しておいてね」
そこ迄言ってから我は来た道を戻るのである
だんだん面倒になってきたである
いっそのこと我が壁を一気に作って魔法をぶち込むであるかなぁ・・・・
ケンプファーで領主と大司教とグランツに顛末を説明。
最終的にグランツもしぶしぶ了承しペールデンテ拠点へ向かうことになった
「なぁエクスよ、俺じゃなくていいんじゃないか?」
「むしろお前以外の誰が適任なんだよ。領主と教会から信任されてるしギルドのサブマスだぞ?」
「いや、俺よりお前の方が・・・」
「おいおい、街の人間が行かなくてどうすんだってことだよ。俺は流れの狩人だぞ?忘れたか?」
距離にして3日かかるが、今回は馬での移動である
おそらく2日で着くであろう
しぶるグランツを宥めながら進みペールデンテの拠点についた
「すげえな・・・・これだけのスペースを開拓したのか・・・・」
「止まれ!お前たちは何ものだ!」
おっと見張りを立てていたようであるな
「俺たちはケンプファーの者だ!こちらのリーダーに話が合ってきた!」
「話だと?・・・・少し待て!」
門番は確認のためか一人を拠点奥へ走らせた
まもなく二人の女がやってくる
「ケンプファーからの使いというのは貴公らか?ってグランツ?」
イグノランテはどうやらグランツと知り合いらしい
「ペールデンテより集団侵攻してきた理由を確認しに来た。ケンプファーギルド、サブマスターのグランツだ。それと護衛のエクス」
我は軽く会釈する
「侵攻!?いや、まってくれ・・・・侵攻する気など当方にはない!誤解であることを承知していただきたい。というか知ってるんだろ、グランツ。それを説明してくれよ!」
「・・・・・・こちらのエクスから大まかな事は聞いている。しかし戦争から数月もたっていないのに倍の人間が攻めてきたのだ、対応しない方がおかしいだろう」
イグノランテは地面に四つん這いになって蹲ってしまった
「ペールデンテギルマス殿?イオラとテスタロッサから連絡を受けているので侵攻の意思はないとカンプファン卿には伝えていますが、街の使いであるグランツに正式に弁明されることをお勧めしますよ」
それを聞いたイグノランテはガバッと起き上がった
「それだ!イオラ嬢、テスタロッサ殿には大変世話になった。その件も踏まえて奥で話をさせて貰えないか?」
「承知した」
奥に案内してもらえるらしいが、一緒に来ていたスウォートがずっと黙ったままである
なんでかなー
通されたのは一番奥にあるテント
他の物よりは幾分かは広めのものである
「まずは・・・・・大変申し訳ありませんでした!当方には侵攻する意思はまったくありません!!」
いきなりの土下座である
「あー・・・・イグノランテ・・・考えなしで猪行動は知っているから、説明をしてくれんか?エクスも何とか行ってくれよ」
「なんとか・・・まぁ冗談だ。そう睨むな・・・・イグノランテさん?説明をお願いしてよろしいか?先ほども言った通り、あらかたは情報を渡しているが当事者から聞いた方が安心だろう」
「それより二人は知り合いだったのか?」
「同期だ。同じ研修を受けてきた」
ってことは年齢は同じくらい?
「はぁ、イグノランテさんに同情するな。こいつと同期ってことは相当年上扱いされたんじゃないか?」
「ん?如何いいうことだ?」
「わかってくれるかエクス殿!!こいつ年のわりに老け顔過ぎるんだよ!このつらに20代ってふざけるな!私に謝れ!!」
やはりグランツと同期ですっていえばBBA扱いもされるわな
グランツはどう見ても40代後半の親父だからなぁ
イグノランテを落ち着かせて説明をさせる
ワークルエ隊のしでかした事、そのあとの行動、彼女達への支援を募ったこと
順番に話していく
最終的に1000人を超えるとは思ってもみなくてケンプファーへの連絡を忘れていた事も話していた
「・・・・わかった。エクスの報告と同じだな。御領主にはペールデンテに侵攻の意思は無いこと、むしろ協力体制が取れると進言しておこう」
「いやー助かるわ、ギルマスも辞職したから御領主に会える機会がないだろうからなー」
「・・・・・・イグノランテ、お前のギルマス辞職は本部で却下されたぞ?だからお前はギルマスのままだ」
「・・・・・・・・・・・・は・・・・・・・冗談言うなよ!・・・・・・マスターは本人の意思で辞職出来るはずだぞ?見た目通りにボケたか?」
「それは此方が言うことだな。支部のマスターが辞職したとき後任が就任後3月経過しなければ隣接する支部のマスターは辞任出来ない。ギルド規則に書かれているはずだ」
「あぁ、それが?」
「お前が動く直前にケンプファーギルド・トゥレライトが免職となった。だからお前の辞任は却下される」
「はぁ?何でトゥレライトの爺が・・・・って免職?あの爺何しやがった!賄賂か?脱税か?」
「それなら良かったがな・・・・ペールデンテの馬鹿息子を脱獄させた」
「・・・・・あー政治に関わったか・・・情、じゃないな金か?」
「金だが・・・情?」
「知らんかったか?あの爺、馬鹿息子の家庭教師を一時期してたぞ?」




