諷戒
あの後ケンプファーに到着した狩人一同は、衛兵に囲まれながらギルドへ到着する
ギルド前で仁王立ちするグランツ
族の親分そのものであるな
「よく思いとどまってくれたな、お前たち。今回の件、情報に不備があったのはギルドの落ち度である。大変申し訳ない。」
こいつは悪いことをしたら本気で謝罪する。
本当に馬鹿正直であるな。だから、我も謝罪を受けたのであるがな
「もちろん罰則はないことを約束すると同時に、指名手配犯であるトゥレライトの捕縛ならびに一級戦犯アルバート・デンテ捕縛の報奨が出されることとなった。皆は受付にて報奨金を受け取ってくれ。犯罪者共は衛兵に預けてくれ」
こう見ると、こいつサブギルドマスターをキチンとこなしてるんだよな
ガヤガヤと受付に並ぶ狩人達
「こんなに?」とか「マジで?」などの声が聞こえる
「エクス、少しいいか?」
「グランツから声を掛けてくるのは珍しいな。どうかしたか?」
ギルド長室へ移動し話を聞くことにしたが、そこには領主と大司教が居た
「カンプファン卿、エクスを連れてまいりました」
「エクス君すまないな。君の意見も聞きたくて来てもらったのだよ」
話は”蛇”からの防衛なのであるが、あの大きさでは普通の柵では意味が無かろう
土魔法が使える者を使って壁を作るくらいしかできないのではなかろうか
具体策として”蛇”とケンプファーの間に10m位の壁を間を開けて3か所以上作成することを勧めた
「君でも倒すことは難しいか・・・・・・」
「大司教様、私は足止めと情報収集で依頼を受けておりますが、天神教の使徒様は討伐されないのですか?」
最初はそういう話であったと思ったが?
「・・・・・人の手で倒すと誓約した以上は、手出ししないとのことです・・・・・」
「まったく、金の亡者が余計な事しおって!!防衛費を全て請求してくれる!!」
あートゥレライトが天神教本部で直談判したんだったな
最寄りの村には、いつでも退避できるよう指示を出しているらしいが難航していると
『死ぬならこの土地で死にたい』などほざいているらしい
個人の感傷も大事であろうが、退避させねば領主が非難されるのだ
そういった者たちは死んだ後のことも考えるべきであるな
「まずは観測所と壁作りからか・・・・」
領主が悩み始めた
「ところでグランツ。トゥレライトはどうして馬鹿を連れだしたんだ?顔見知りだったのか?」
その質問の予測をしていなかったのか3人とも此方を見ている
「そうだな。何で気づかなかったんだ?・・・トゥレライトの経歴を調べてみよう」
すぐさま出て行った
「エクス殿?どうしてその様な疑問が?」
我は大司教に向かって答える
「いや、アルバートが従順だったからさ。少し見た感じ自己中心的なくせにトゥレライトの言うことは従いそうだったんでな。ひょっとしたら以前に会っていたのではないかと思ってな」
「ふむ・・・十分あり得ますね」
「そうだな。爵位持ちが高名な魔術師などの教えを受けることも珍しくはない」
まぁグランツの結果待ちであるな
我は街を出てペールデンテへ向かう
うーん・・・テスタロッサでは不味いであろうが、エクスでも可能性が無いわけではない
そうなるとイオラになるのであるが、あのドピンクな装備は目立ちすぎる
どこかで子供用の衣類を手に入れるか
下を見ると前回の飛行では気づかなかったが、やや大き目の街がある
ここで装備を見てみるとしよう
我は近くの森に降下しエクスに変わり街へ向かうことにする
「ようこそフォーゲソンの町へ」
ペールデンテ寄りの町である。ベレーナほど人通りが多いわけではなさそうであるな
我は町の中を物色しながら、のんびりと歩いた
食料品や旅装用品が少し割高に思えるのであるが?
露店の串焼きを買いながら、そのあたりを聞いてみると
「なんだ兄ちゃん知らなかったのか?ケンプファーとの間にバカでかい魔物が居座ってんのよ。どっかの馬鹿が戦争を吹っ掛けたから報復で魔物をけしかけられるんじゃねぇかって噂だな。皆逃げ出すのに必死さ!」
ほむ、その影響で食料などの物価上昇したと
「ケンプファーでは防壁を作るらしいぞ?騎士爵様もとっとと対応してくれればいいがな」
「そりゃ本当か?かぁー、御領主様も『面汚し』だけでなく、もっと対応してくれって言いたいな!」
うむ?
誰か派遣しているのであるか?
「面汚しってのは?」
「ああ、ペールデンテで小隊をしていたワークなんとかっていう女だけの部隊でな。仲間を一人犠牲にして生き残った奴等よ!まったく兵士の風上にもおけねぇ『面汚し』ってね」
あぁ、あいつらであるか
そういえば街を出るとき文句言ったであるな
「噂をすればなんとやら。兄ちゃん、あいつらだよ」
顎で指示された方向を確認すると店の人間と言い合っている女がいる
頬に傷がある20代後半に見える女
どうやら買い物に来ているが、相当吹っ掛けられているようであるな
諦めて言い値で買っておるな
むー。
少し悪い気がしないでもない
実際むかついたのはストーカー女であるからな
我は露店の親父に古着屋の場所を聞いて立ち去る
教えてもらった古着屋に入ったのであるが、いまいちよく分らん
以前より洋服のセンスなど無かったであるしな
「おねえさん、少し相談に乗ってもらっていいかい?」
困ったら分かる人間に聞けばよいのである
我は店番をしている40代とみられる女性に声を掛けた
「おや、なんだい?」
店番の女性は機嫌が良いようだ
「妹へ服を買っていきたいのだが、俺にはセンスが無くてね。おねえさんの知恵を貸してもらえないだろうか?」
「おやおや、私でいいのかい?彼女じゃなくて妹なんだね?」
「戦うしか能がない男さ。だから未だに独り身なのさ」
「若いのにもったいないねぇ・・・・まぁ私が選んでおげるよ」
我はイオラの容姿を伝え、一通り揃えてもらう
「靴は裏手のスカーパ爺さんの所へ行きな。場所はすぐわかるよ」
全部で銀貨3枚銅貨25枚であったが銀貨4枚渡しておいた
店をでると手を振って「またきておくれよー」と叫んでいたが・・・・
一本裏手の道を通ると直ぐに靴屋は解った
でっかい看板が店の上に掲げてあるからだ
我は靴屋で同じようにイオラの靴を買う
武器は”まじかるすてっき”という名前のハンマーでよかろう
裏通りを抜けて外れまで来たのでこのまま町の外へ出ようと思ったのだが、少し開けた場所でどこかで見た集団がたむろっていた
「どーするよ隊長・・・・支援なし現地調達も難しいんじゃ、何も出来ねぇぜ?」
「仕方ない。それが私たちの罰なんだからな」
「クーシャを止められなかったばかりにね・・・・・」
「アレが原因だもんなぁ。本人から言われたみたいで心折れたからな・・・・」
少し話を聞いてみよう
「あんたらはペールデンテのワークルエ隊の者か?俺はエクスという。ケンプファーの狩人だ」
いままで気が付かなかったのか、ギョッとした顔でこちらを向く面々
「あぁ、ワークルエ隊で間違いない。隊長のスウォートだ」
「そうそう、面汚し部隊だよ」「違いない」
随分、卑下してるなー
「エクス・・・といったな?もしかしてフィ・・・テスタロッサという女性は知り合いにいるか?」
「テスタロッサなら依頼を助けてもらったりしているが?まぁ彼女から報告というか愚痴も聞いているがね?」
軽い雑談をしたあと、部隊の全員がテスタロッサに謝りたいと言い始め連絡が取れたら伝えるといって宥めた
「先ほども見かけたが、物資の補給がうまくいっていないのか?」
「話を聞いていると思うが元隊員が彼女を怒らせてな。その時の話が元で『逃げるために仲間を殺す部隊』と言われ始めたんだよ。自業自得だがね。”蛇”の討伐が成功しない限り撤退は出来ないと言われてるよ」
『実質、死刑宣告だよね」
「クーシャは精神衰弱で北の修道院送りだしね」
「どっちがマシだったんだろうね」
これには苦笑いしかできない
ストーカー女は修道院へ送られたかー。ならば少し手助けしてやるか
「テスタロッサも頭に血が上ったとはいえ言い過ぎたと思っていたからな。少し協力させてもらうよ」
は?っといった間抜けな顔をした面々に説明する
元々”蛇”と”亜人”の情報をペールデンテに連絡し出来ればケンプファーと協力して討伐できないかと思ってテスタロッサに依頼をしたことを教えた
実際は一人二役なので我がしたことなのであるがな
「俺もテスタロッサにそこまで似ている女性がいた何て思ってもみなかったがな」
「いや、彼女はギルドでもそのようなことを言っていたと思う。すべては我々の思い違いから起こったことだよ」
「話は変わるがエクス君、私は副隊長のクンターという。協力してくれるというのはどういった内容だい?」
「先ほど見ていた感じだと、町から売り渋りされているんじゃないか?俺ならケンプファーからでも買い取ってこれるぞ?食える魔物も狩れるしな」
「それは有難いが・・・・・我々には支払えるものがない」
「まあテスタロッサのしでかした詫びっていうことで。あとは本人と会った時に話してくれ」
物資をもって後から宿泊場所へ行くので宿をきいたら町外だという
こいつら町に泊まっていると思ったら町外で野営をしているらしい
どこまで嫌われてるのか
我は一人町の外へ出てケンプファーへ戻り物資の調達を始めた
食料・水・酒・衣類・剣、槍、弓、矢思いつく限り揃えていく
ある程度の目途が付いたのでまたフォーゲソンの外れの森へ移動
辺りは既に日が暮れているので下は真っ暗で見えないが町の灯がある手前にか細い灯があった
おそらくアレが野営地であろう
我は地面に降りエクスになってから物資の乗った荷車を引いて野営地に行く
「止まれ!!何者だ!」
「ケンプファーのエクスだ!スウォートかクンターを呼んでくれ!」
『なに?エクスって』『ちょ!はやくない?』『たいちょーよんで!』
野営地はあわただしいようである
しばらく待つと鎧を外した格好のスウォートとクンターが出てきたので此方も明かりをつける
我は見えるけど人間種には夜の闇は見えないであろうからな
火魔法をちょちょっと松明がわりに空中に浮かせる
明るくなった中で見たら二人の着ている服なんかも、あちこち解れている様である
「本当にエクス君か?予想よりだいぶ早いのだが・・・」
「あぁ、いくつか隠している手段があるんでな。それより物資を受け取ってくれ」
我は荷車から離れると隊長二人の後ろから二人出てきた
『おっも!』『なにが入ってるの!』『ちょっと!誰か手伝って!』『これを一人で?』
がやがやと賑やかであるな
「エクス君、ありがとう・・・話もしたいし中でお茶でもどうだい?」
「いや、確か貴女の隊は全員女性では無かったかな?野営とはいえ夜分に伺うわけにはいかんよ。また明るいうちに伺うから欲しい物が合ったら言ってくれ」
我はそのまま森に戻っていく
後ろからは『服!』『下着まで?』『肉だ!』『酒もある!』『武器も沢山!!』『干し果物だ!!』『何!!!!』
和気あいあいであるな
まあ暫くはあれでもつであろ
我は再びペールデンテへ向かうのである
今は夜中なので門は締まっているから、そのまま町の中に降下する
服は買った服にしているであるぞ?
何処からみても町娘にしかみえまい
夜のペールデンテには人通りがない
というか人がいない
そんなことあるか?
我はギルドへ向かうと明かりが灯っていた
ギルドの中は酒場で数人が飲んでおり、受付に一人座っているだけである
全員が我をみて吃驚しているようであるが
「おねーさんギルド長はいる?伝言があるの」
「お嬢ちゃん、こんな時間に一人で出歩いちゃダメでしょ」
「うん、至急の伝言だからしょうがないの。ギルド長は?」
「私が代わりに聞くから伝言を教えてくれる?」
「下っ端では意味がない。イグノランテを呼べ。エクスとテスタロッサの伝言だ!」
「エ・・・クス・・・・」
受付嬢は駆け足で奥へ行ってしまった
「お・・・お待たせしました・・・こちらへどうぞ」
声が上ずっているが大丈夫であろうか
「夜分に失礼するわ。私はイオラ。エクスとテスタロッサの伝言を伝えに来たわ」
「初めまして。知っている様だが私がギルド長のイグノランテだ。早速伝言を教えてくれるか?」
「まずエクスから。ケンプファー側では”蛇”に対し、3重の壁を形成して牽制することになるそうよ。以前にテスタロッサが警告に来たから当然知ってるわよね?高々1小隊で対応できる相手出ないことも知ってると思うけど?」
「1小隊で対応?どういうことだ?」
イグノランテは混乱している
「あら、知らなかったの?フィーダっていう娘がらみで知ってると思ったけど」
「フィーダの・・・ワークルエ小隊か!何で彼女たちが・・・あの騒ぎか」
一人で納得したであるな
「そんな名前だったかしら。領主からの支援もなく地域からの物資補給もできずボロボロになって蛇に向かってるわ」
「支援も、補給もなし・・・・そんなの無駄死にじゃないか?」
「私に言われてもねぇ、そちらの領主のしたことでしょ?エクスの伝言は理解できた?掃討作戦で其方に被害が出ても知らないわよ?事前に連絡しているんだから」
「わかった・・・夜が明けたら、領主に進言しよう」
「悠長だこと」
「言わんでくれ、私もそう思っている。しかし今ペールデンテでは夜間の外出は禁止されているんだ」
「ふうん・・・・禁止ねぇ・・何で?」
「な・・・お前、知らんのか?」
驚愕の顔でこちらを見るイグノランテ
禁止理由を聞いていると例の噂が原因であった
曰く、夜中うろついていると老人に袋詰めにされて連れ去られるらしい
連れ去られた者がどうなったかわからないとのこと
「老人が袋詰めにねぇ・・・・それ見た人がいるのよね?なら捕まえればいいじゃない」
「いる・・・らしいんだが、詳細がわからないんだ」
夜中に人が出歩かないのであれば探しやすいであるか?
「ふーん、まあいいわ。それとテスタロッサからの伝言よ。『腑抜けたギルドに価値はない』だってさ」
黙り込むイグノランテ
「それじゃあね!伝えたから後は御勝手に」
我はさっさとギルドから出て飛び上がる
”亜人”の目的は何であるかな?
何で袋詰めにして連れ去るのであろうか
うーむ考えても分らんである
今日は一先ずケンプファーへ戻るとするである




