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追憶

我は庁舎に戻り”蛇”に動きがないこと、遅々として進んでいないことを報告した

もちろんタイムラグを考えて向こうの森で狩りをしていたのであるがな

だって、飛べば半日で着くわけであるし


次は教会の僧兵が偵察というより監視に向かうことになる

二日かけて行き、一日観測したあと二日かけて戻ることをするらしい


庁舎にいる大司教と領主に報告した。

我の依頼人は教会であるから、たとえ領主といえど先に報告は出来ないである

一緒の部屋にいてくれれば手間が無くて良い


「場所はこの位置から動いていませんね。私は別行動をとって”亜人”を探りにペールデンテへ向かおうかと思っています」

監視から外れるので大司教から許可を貰う


「衛兵の皆様にも協力いただけるので監視は問題ないですよ。エクス殿には御自分のなさりたい様にしてください」

「あまり動かない様であれば、仮拠点を作って常駐させることも考えねばな」と領主が呟く

まぁ、元から出来る範囲での協力であったからな

「では失礼します」

我は街を出ることにする







空を飛んでいると眼下に白服を着た6人組がホロのない馬車に乗っているのが見えた

おそらくアレが蛇の観測に向かう僧兵であろう

この高度では見つからないであろうが、念のため更に上昇しておく


右手に相変わらず動きのない蛇を大回りで回り込み北北東へ進む

半日ほど経過し、昼も当に過ぎた時間である

ようやく街が見えてきたのであるが、街を囲う壁が高く聳え周りを深く掘り下げている

その高さはケンプファーより大きい。まるで要塞である


我は人目につかぬよう森に入りテスタロッサに形を変える

装備を調えダミーの荷物を背負うと街道に出て門へ向かう


「次の者!・・・名前は?」

門番は高圧的な兵士である

「テスタロッサ」

我は名乗り、ギルド証を提示する

「狩人か・・・・通って良し!次の者!」

絡んでくるかと思ったのであるが、すんなりと通れたのである


街中に入って思ったのはケンプファーと違い、門から延びる道には露店はなく両横の店舗は道に対して斜めに作られている

上からみたら鋸の歯のようになっているのではなかろうか

門のすぐ近くには広場があり有事の際に此処で集合したりするのであろう

都市防衛を優先しているのではなかろうか


「フィーダ!フィーダじゃないかい!!生きてたんだね!!」

広場に居た年配の女性が叫んでいる

久しぶりに再会した人でもいたのだろうか


我は宿を探しに道を行こうとしたら腕をつかまれた

「フィーダ!どうして無視するんだい!いままで何処に居たんだい?!」

フィーダ?我のことであるか?


「すまないが、あなたとは初対面なのだが。それに私はテスタロッタというのだが?」

腕をつかんだ女性はこちらをマジマジと見つめてきたあと、膝から崩れ落ちた

「ご婦人?如何かされたのか?」


「おい!そこで何をしている!!」

先ほどの門番がこちらへ駆けてくる


女性は跪いたまま泣いているし、仕方なく門番に説明した

その話を聞いて納得したのか門番は女性に立って隅に行くよう指示していた


「すまんな。あの女性は先の戦争で娘をなくしたようでな。遺体もなかったので何処かで生きているって信じてるんだ」

申し訳なさそうに言う門番

「フィーダというのか?その娘は。兵士だったのか?」

「俺とは部署が違うから名前までは知らんが、戦争で戻って来てない奴は他にも大勢いるさ」

雑談は終わりとでもいうように門番は仕事に戻っていった


ひょっとしたら取り込んだ死体が”フィーダ”であったのかもしれんな

確か人間種で18体取り込んだからなぁ

我はそんなことを考えながら街の中央に向かって歩く


中央寄りに『騎士の誉れ亭』という看板を見つけた

宿兼酒場であるな


我は店に入ると元気な声が聞こえる

「いらっしゃいませー!食事ですか?お泊りですか?」

「泊りで頼む」

「わっかりましたー!たいしょー!お泊りのお客さんです!!」

その声に筋肉マッチョの坊主親父が出てきた


「1泊、銀2銅50だ。飯は今なら席が空いてるが如何する」

「じゃあ2日お願い。食事もお願いするわ」

とりあえず銀貨を5枚渡す


「わかった、こっちだ。ついてこい」

我はマッチョ坊主について酒場に入っていく

連れたいかれたのはカウンター席であった


メニューが壁に書かれておたので、肉の塩焼きと薄焼きのパン。あと果実水を注文する

金を払うと、少し待てと言い残し奥へ行ってしまった


食事時には少し早いのか店内の客は少ない

「もうすぐ仕事上がりの兵士たちがやってくるから、席はすぐに埋まる」

我の考えが読まれたのかマッチョ坊主が返事してきた


カウンターに向き直るとそこには湯気が立ち上る料理があった

何の肉か分らんが美味い

薄焼きパンもナン?いやピタパンの方が近いであるな

我は早速パンを開いて袋状にし、付け合わせの野菜と肉を挟み込む

大口を開けてガブリと嚙みついた


口の中にあふれる肉汁を楽しむ

もう少しスパイシーでもいいのだろうが香辛料が無いのかもしれんな


果実水で口の中を洗い流すように飲み干した。実に美味かった

マッチョ坊主に狩人ギルドはこの辺りにあるか聞いたところ、南門の近くだと教えてもらった

中央付近ではないのであるな


我は礼をいい部屋に戻るため席を立ったのであるが、いきなり押し倒された?

腹部に衝撃があり、そのまま倒れ込んでしまったのである


腹部分を見ると、何やら女がしがみついて泣いている

バタバタと入口から足音が聞こえたので其方をみると数人の兵士が目を開き立ち止まっていた

あ・・・・いやな予感がするである


声にならない声を上げながら飛び掛かってくる兵士たち

我は女がしがみついているため身動きが取れないのである


『生きててよかった』だの『無事だった』だの言っているのである

ひょっとして門のところに居た女と同じであるか?


「まてまて!!お前たちは何者だ!!人違いをしてないか?」

人間種の形をとっているときは内臓も合わせているので、食べたものが出そうである


「いい加減にせんか!!この馬鹿者共!!!」

腹に響く、大音声でマッチョ坊主が叫んでいる


「いい加減に離れろ!!」

我はしがみついている女を無理やり外し、押しのける


「親父!こいつらは何者だ?集団痴漢か?兵士呼ぶか?」

「いや、この街の兵士たちだ・・・・」

「こいつらだった!!おいおい、この街は兵士が痴漢するのか?それって無茶苦茶ヤバくないか?」

マッチョ坊主が店の奥を指すので其方へ移動する


「てめぇら!てめぇらの所為でペールデンテの治安が悪化していると思われたじゃねぇか!!スウォート!!早く来て弁明しろ!!」

後ろから出てきたのは20代後半と思われる頬に傷がある金髪女だった


「いや大将!戦争で死んだと思っていた仲間が帰って来たんだ、これぐらいは勘弁してくれないか?」

「それが本人ならな!相手をよく確認しろ、このド阿呆!!」

マッチョ坊主の声に全員がこっちを見る

あ、こいつら女ばっかりだ


「フィーダ・・・・・じゃない?」

しがみついていた女がようやくこっちを見てから、気が付いたように言う

『馬鹿な!』とか『信じられん』とか後ろで言っている


「失礼、お嬢さん。私はペールデンテ兵士団騎兵小隊ワークルエ隊隊長スウォートという。貴女の名前をうかがっても宜しいでしょうか?」

飛び掛かってきた者を一旦下がらせてから聞いてきた


「ベレーナ狩人ギルド所属テスタロッサ。初めてペールデンテへ来たのだが?」

それを聞いて黙る面々

「フィーダじゃないの?記憶が混乱しているだけじゃないの?」

お前は錯乱しているのか?

飛びついてきた女は後ろで羽交い絞めにされている


「すまない、貴女が我が小隊の者によく似ていたので勘違いをしたようだ。宜しければ少し説明させていただけないだろうか」

とりあえず話は聴こうではないか


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

事の発端はペールデンテ領主ナール・デンテ騎士爵様の御子息アルバート様がメンシン=カンプファン伯爵様御令嬢リリーナ様に懸想しまして、

婚姻を申し込んだそうです。

騎士爵家と伯爵家では家格がつり合いませんので、両家とも合意の上で申し込みを破棄されたのです

アルバート様はコレに反発し500の兵をもってカンプファン領へ攻め入るのですが、西の草原で3日にらみ合いの末に開戦しペールデンテ軍は敗北します。

その際に我が小隊も退却したのですが不意を突かれ経路を立たれてしまいました

それでも諦めず殿を一人務めてくれたのがフィーダという娘です。


「その娘に貴女が余りにも似ていたもので、私を含め全員がフィーダが帰ってきたものだとばかり・・・」

うーん

やはり我が取り込んだ内の1体であろうな

死んで時間が経過していたから記憶まで取り込めなかったであるからなー


「似ているのは解ったわ、門でも間違われたし。ところで、そのアホ息子はどうなったの?」

「元からリリーナ様に付き纏いをしていたため相当嫌われていたようですよ?私でも勘弁願いたいですからね。今は伯爵領で牢屋にでも入っているんじゃないでしょうか」

戦争はストーカーの暴発でした

碌でもない理由であるな


「行方不明者は他にも居たのでしょ?他の方は?」

「もちろんです。獣人部隊の方も被害がありましたし、100人くらいの方が遺体もなく行方不明です」

ほーん。まあケンプファーの方でも死んだの居るだろうし、そんなもんであるか


「あなたの隊はそのフィーダという娘だけだったの?」

「はい。他の者を逃がすためギリギリまで残っていたので・・・・」

しんみりしだした所でマッチョ坊主と給仕娘が料理を持ってきた

先ほどの肉塩焼きとピタパンにエールである

ん?我の前にも置かれた


「この女の奢りだ。迷惑料と思って喰ってくれ」

「この程度で申し訳ないけれどね」

苦笑いしながら了承している

ならば断わるのも失礼であろう


ピタパンを開いて野菜と肉を挟んで頬張る

うむ。肉汁が美味い

なぜか皆、こっちを見ているのであるが如何かしたのであろうか

「どうかしたの?」

隊長は首を横に振るマッチョ坊主をみている様だが?


「いや貴女、この店は初めてといったわよね」

「この店どころか、この街が初めてね」

「コレ、この店の名物なんだけど平パンに挟む食べ方はうちの隊しかしてないの」

ほーん

「さっきの話だが、この隊は店の常連でな。例の娘もそうやって食べてたのさ」

平パン自体がまかない飯に近いので、本来客には出さない者らしい

このマッチョ坊主はフィーダと錯覚して、つい平パンを出してしまったとのこと


「そうなの。私が以前に居たところでは平パン?のことを”ピタパン”と呼んで焼いた肉を挟んで食べてたのよ?」

ケバブとかな


それで一応の納得をしたのか食べ始める面々

「ところでテスタロッサさん。ベレーナから来たのなら途中で妙な物を見なかった?」

やれやれ、情報収集であるか・・・


「妙な物?・・・・例えば巨大な蛇、とか?」

それを聞いた隊員全員がこちらを見た

「蛇?急に山が出来たと聞いたけど?」

「ひっかけかしら?あれは蛇よ。頭が7つある巨大な蛇。何日か前に沼から上陸してこちらへ向かっているのではなくって?」

「そのような巨大な化け物の横を通ってきたの?」


「あれは図体はでかいけど、すごく遅いの。それにカンプファン卿と天神教が交代で監視しているわ」

「領主はわかるけど、天神教?何で教会が動いているの?」

教会から何も聞いてないのであるか?


「こちらでは火神教かしら?教会が活発に動いていない?」

「そういえば『火神教』の司祭が演説してるのが多くなったよな?」

「世界の破滅だっけ?人類の半数以上がなくなるってやつ」

後ろの隊員に覚えがあるみたいである


「そう。どういった風に聞いているか知らないけど私がつかんだ情報は『神々通しで争いが起きているらしく、力を与えられた使徒と呼ばれる者達が戦う』そうよ。カンプファン卿は天神教に話を聞いて対応策を打ち出してたわ。あぁそうそう、蛇も使徒の一つだからね』

固まる面々

「「「「ちょ、、、ちょっと爆弾発言しないで!!!!」」」

「どこまでが本当なの?」

ほう。流石に隊長は疑ってくるか


「竜、人形、蛇、亜人二人、獣二匹、人が使徒の種類よ。そのうち”亜人の水棲人”と”獣のハーピー”は討伐されたそうよ」

「それでも後6体もいるのか・・・」


「竜は天神教の”黄金竜フィエル”南西の沼の蛇”残りの人形、亜人、獣、人が一体どこに居るのやら。あなた達も死にたくなければかかわらないことね」

迷惑であるからな?

まぁ首を突っ込んで死んでも知らんであるが



我は挨拶をして部屋に戻るのである


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