漁村
翌日、買取を忘れていたのでギルドへ顔を出したところ『赤頭熊女』という声が聞こえた
凄いスキルをもってそうな名前なので辺りを見回していたら、掲示板の前にいた数人がこちらを見ていた
「赤頭熊女とは、どういったことでしょう?少しОHANASHI致しましょう?」
にっこりと笑ってやったのに顔面蒼白になるとは、解せぬ
掲示板前にいたのは男3名、女4名
『赤頭熊女』と呼んだのは男のグループらしい。女のグループは男のグループを睨んでいる
しどろもどろに成りながらも説明された所、この7人は昨日の騒ぎの際ギルドの酒場にいて一部始終を見ていたそうだ
光の具合で髪が赤く見えたそうで、筋肉親父を片手で投げ飛ばす怪力を持っていたところから
『赤頭熊女』と誰となく言い始めたとのこと
なんか野犬が集団で襲ってきそう
せめて狼なら路銀になるかも
まぁ別にどう呼ばれようと問題ないのである
我はカウンターに行って、この周辺にいる魔物の情報を貰う
こちら側は森林狼は買い取り不可とのこと(なんでも肉も毛皮も売れないそうである)
ナーワルハーゼ(一角兎)・ワッサーヌー(草原牛)・オルクス(草原角牛)がおり
浜辺に近づくとクリブス(カニ)などが売れ筋らしい
そっか。草原狼は売れないであるか
そういえば昨日ギルド行ったとき獲物を魔法鞄から出すの忘れてたわ
そりゃギルドの連中も買取の話はしないわな
HAHAHA失敗失敗。てへっ♡
気を取り直して町から出る
草原をうろついてから浜辺へ行ってみようと思う
なんか後ろからついてきているのだけど・・・
気配を消していないので魔物が近寄ってこない
新しい魔物でスキルゲットが出来ないである・・・
もしかして行先が同じなのであるか?
では少し休憩して先に行かせるのである
追ってきていたのは女のグループである
「ねぇ、あなたソロでやってるの?」
「よかったらパーティに入らない?」
パーティへのお誘いである
「ごめんなさい。私の攻撃余波で周りの人もケガするからパーティには入れないの」
とっとと帰れ
「私たちは全員もうすぐCランクになれる位の力はあるわ。多少の余波なら躱せるわよ」
えらい自信である
我は黙って槍を振り下ろす
5メートル先位にあった岩が砕け散る
これには女グループ全員、驚いて声が出ないようだ
「手加減してもコレなのよね・・・・そういう訳で、ごめんなさい」
奴らが驚いているうちに、その場から離れる
森の奥深くであれば人目もないから始末できたのに・・・残念
浜辺に着いた。
まだ魔物に遭遇していない
左手に村?集落?が見えたのでそちらへ向かう
近くまで来たら漁村であった
大漁だったようで露店で魚を売っている
30センチほどの魚を炭火で焼いており食べ応えがありそうである
我は食事の必要は無いであるが、これは食べてみたいものである
金額は1本 銅貨10枚。安くはない。しかしコレは買いであろう
強火かつ近い火で焼いてあり旨味が閉じ込められている
身はふっくらとしジューシーな仕上がり。焦げ目の香ばしさも相まって美味い。
「これは美味い」
味わって食べていたら露店の店主からもう一本サービスしてもらえた
お金を払おうとしたらお礼とのことで断られた
不思議に思い後ろを見ると行列ができていた
どうやら我の食べるところを見ていた者たちが、あまりにも美味そうに食うので食べたくなったらしい
店主に挨拶をし、漁村の中をうろついてみる
人が少ない村だが決して寂れているわけではないようである
子供が駆け巡り、年寄りはのんびり道具の手入れ。若い者もちらほらと
しばらく歩き船着き場の近くまで来たら大きい建物が目に入った
この村で見た中で一番大きいであろう建物
その横の建物が騒がしい
どうやら酒場のようであるな
村の者であろう男達が飲んでいるのが見える
ほむ。
情報でも集めてみようかね
酒場に入ると一斉にこちらを見る男たち
満席ではないが、結構席は埋まっている
「おい姐ちゃん!こっち来て酌でもしてくれよ!」
酔っ払いたちが口笛付きで騒いでいる
「いいわよ?その代わり、この辺りの事を教えてほしいんだけど」
別に酌くらい構わんぞ?
「マジか!!」「あの振られ王が!!」
一瞬静まった後、騒ぎ立てる男たち
「当然、お代はそっち持ちよね?」
幾らでも飲んでくれと言いながら、また騒いでいる
我は店主に酒を瓶で注文する
「いいのか?俺から文句言ってやるぞ?」
あの男達は女性客が来ると同じようなことをして迷惑がられているそうだ
確かに飲み屋でのナンパは鬱陶しいとは思うが
「悪い奴らじゃないんだがな・・・あまり酷いようだったら声をかけてくれ」
そう言いながら酒瓶をカウンターに置く店主
瓶の中には沸々と泡が出ている飲み物。おそらくエールであるかな?
店主に礼をいい瓶をもって男たちのテーブルへ行く
男たちは本当に来ると思ってなかったのか呆けていたが
直ぐに我先にカップを差し出してきた
我はそれにエールを注ぎながら話を聞くことにする
「それで?最近、この辺りで何か変わったこととか無い?・・そうねフォーヤーの10くらいから」
「フォーヤーの10っていや、つい最近のことじゃねぇか?」
「んだな。10日もたってねぇ」
「なんかあったか・・・?」
話題を探すため必死になって思い出そうとしている男達
「些細なことでもいいんだけどね。」
別に使徒の情報がすぐに見つかるとは思っておらんしな
手酌でエールを注いで飲む。
酸っぱい気がする。発酵しすぎではなかろうか
「そういや・・・」
一人の男が話し始めた内容では、岬の向こうに東の漁村があるそうな
漁に出る前に船の点検をしていたところ岬の先で海面がうっすら光っていたそうだ
様子を見ていたら船が光っている場所へ近づいていき、しばらくしたら岬の向こうへ引き返していったとのこと
その時には、もう海は光っておらず辺りは真っ暗になっていたらしい
「俺が見たのはフォーヤーの8くらいだったっと思う。ほれ、見慣れない魚が急に取れたことがあったろう」
「おぉーおぉーあったあった、あの気味の悪い魚な」
「あったな。家のかかぁがあれ見て悲鳴を上げたわ」
「ヌメヌメしたのとか透き通ったのとかな。でも目玉もはらわたも飛び出てたよな」
ほむ。
聞いた感じであると深海魚の類であるか
「この辺りの水深はそんなに無いの?」
「おっ!姐ちゃん良く知ってんな!おうよ。こっちら辺はそこまで深くねぇな」
「こっちは?」
「岬の向こう、東の漁村側の海は相当深いと聞いたことがある」
「まぁ村の協定で魚を捕る場所を決めてっから、この村には関係ねぇけどな」
この村から岬向こうの海への漁は出来ないらしい
しかし海に光であるか・・・
ひょっとしたら当りかもしれぬな
「そう、いろいろ面白い話を有難う。その東の漁村へも行ってみるわ」
この後も引き止められたが席を立つ
「向こうの村へ行くなら気を付けた方がいいぞ。あっちの村は閉鎖的でな、特に女が行くのは進められん」
カウンターの中から店主が声をかけてくる
「そう。お気遣いありがとう」
酒場を出ると日も動いている。感覚的にすでに3時は過ぎているであろう
このまま東の漁村へ向かうと夕暮れになってしまうだろう
一旦ベレーナの町に戻って明日、東の漁村に向かうことにするである




