転生
我は滴る者、ウーズである。『名前付き』ではない。
いつ生まれたか、全く覚えておらぬ。
たしか薄暗いジメジメしたところで透明な筒の中にいた覚えがある。
だって我、魔法生物だし?
自然な営みで生まれることなど在りえないのである。
そもそもウーズという種は魔法で作られた液体生物であり、
ぷっちんぷるるんな我がボディはほぼ水分で構成されている。
なのに物理攻撃が効くのは解せぬ。
まぁ水分と栄養があれば再生・増殖できるのではあるのだが・・・・
本来、我のような種は洞窟や迷宮などの奥で餌が近寄るのを待ち構えているのだが
いま森の中にいる。
なに?目もないのに判るのかだと?
ほむ。それは我も不思議なのだが、どうも波動のようなものを検知しているようで
廻りに何があるかわかるのである。
蝙蝠のエコーロケーションみたいな?
まぁそんな感じで、周りの様子はわかるのである。
し・か・も、我には前世の人間だった記憶があるのだ!
わはは・・・雑魚とは違うのだよ雑魚とは!!
そのため、ウーズの生態も周りの状況も理解できるのである。
記憶と言っても、何処の誰であったかなど覚えておらぬが、
雑多な人ごみの中で生活していたことを覚えている。
何の特徴も、特別優れた技能もなく極々平凡な男であった。
いや、ちっとオタクっぽかったかもしれんが・・・
他のものと同じように学び、働き、車にひかれて死んだ
ほむ。
誰であったかもわからないので、一人の男の一生を動画で見たようなものである
それゆえに前世の記憶といっても知識として使えるだけであるな。
ただ、平凡な人生なので知識も平凡であろうがな
とりま。
今の状況は森のなかである。
まぁ、原因が周りを飛び回っているクリオネ擬きなのであるが。
記憶が戻ったと同時にクリオネ擬きが現れ、あっという間に洞窟の外に放り出されたのである。
文句の一つも言いたいが我、喋れなかった。
魔物語なんてあるのかないのか知らんが、もし喋れても一人でしゃべっていたら変な人、いや魔物であろ?
いやいや、ボッチではないぞ?
普通のウーズなんか『あ”-』とか『うー』しか言わんのだから会話にならないのである
・・・あれ?・・・結局・・われって、ぼt・・・・
やめやめ。
それよりもこのクリオネである。
30センチくらいの大きさで、ふよふよと辺りを彷徨っていてる
ハエのようで鬱陶しいのだが?
『まったく、これだから下等生物は・・・なぜ主がこの様なものを想像されたのか・・・早く主の使命を果たしなさい!!』
傲慢な物言いで文句を言っておる
はて?使命とはなんぞや?
我なんも使命など聞いておらぬぞ?
『よりにもよって<ウーズ>など、何の役にも立たないでしょうに。まぁ、さっさと他の者と戦わせ始末してしましましょう。
そうすれば私も主のもとへもどれるのですから。』
勝手なことをほざいておる。
ほむ。
どうやら我を戦わせたいようであるな。
武器は無いのか武器は!!
『本当にトロくさい生物だ事。地面に這いつくばってノロノロと!どうせ潰されるのだからさっさと倒されれれば良いのに』
こやつも随分イライラしておるな。
しばらく罵詈雑言をあびせて、落ち着いたのか急に黙って我の目の前に降りてきた
『あなた如きでは主の使命を果たせるとは思えません。私が始末いたしましょうか』
ほむ。奴も武器の類は持っておらぬようだ。
ステゴロで戦う気か?
しかし我も簡単にはやられはせん!やられはせんぞ!!
『しかし私が受けた使命は、転生生物の監視ですし・・・』
ブツブツ言いながら考えに浸っておる
高度が下がってきているのに気がついておらぬのか?
いまや、高度は我と同じくらいまで・・つまり地面から30センチ程度の高さである。
これって、チャンスじゃね?
”戦いとは、常に二手三手先を読んで行うものだ”って誰かが言っておったし。
思い立ったが即実行!
撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ!
ブツブツ言いながら、いまや完全に地面についているクリオネ擬きを一飲みにする。
我の腹の中で暴れているが、体内の消化成分を促進して取り込む
むう。じたばたと暴れておるな
中を潰すように体を上下に動かす
ほほーん
おとなしく喰われるがいい。
貴様は良く分らんクリオネであったが、君の創造主が悪いのだよ。ハハハハ
体内で動き回り、脱出しようともがいていたが
最後の抵抗もむなしく綺麗に消化出来た
>アラタニトリコマレタモノガアリマス。
>スキルヲシヨウシマスカ
>YES/NO
あっ!なんか出た。
ニンゲンヤメマスカじゃなくて、スキル使用の選択?
なんのスキルかわからんが・・・・
もちろんYES!〇須クリニック!
やぁーってやるぜ!
んみっ!!
全身を激痛が襲う!!
筋肉はないのに筋肉痛だと!!
我が身が脈打つかのように痙攣していく。
まずい。
気が・・・とお・・・
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見たことのない空間・・・どこかの実験室っぽい処に、女がいる。
薄暗い室内には大小さまざまな円筒がありその一つの前にいる
『13』と雑にかかれた円筒には液体みたいな正体不明のものが入っている
あれは我か?
なんか、『早く人間になりたーい』って言ってた奴ににてる
『あ~めんどくさ。こんだけあれば何とかなるでしょ。おまえはコレを見張りなさい』
こちらを一瞥もせず命令する
『仰せのままに』
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何やら覚えのない記憶が・・・・・
あれはクリオネ擬きの記憶であるか?
ほむ。
だとすると、あの傲慢でいけ好かない女が諸悪の権現であるか。
で、あの女がこの世界の神の一柱だと。
むぅ。よくわからん。
奴の記憶を基に現状の把握をしよう。
まず今いる森だが、クリオネ擬きの記憶によると『女神の箱庭』といわれる空間だそうだ。
その名の通り傲慢女神が目的のために作り上げた仮想空間ということらしい。
我はその中での実験動物というわけだ。
次に傲慢女神の目的であるが、次期主神を選ぶために候補の駒同士を争わせ最後まで残った者を作った候補が主神となる。
神同士が戦えないので、駒による代理戦争というであるな。
強い駒を創るために、この箱庭で我のような者同士を戦わせ最後まで残ったものを駒とするつもりであろう。
まるでトーナメントの予選であるかな?
で。我のような生物の作り方だが、別世界の人間の中身を取り出して用意された肉体へ定着させるという
無茶苦茶な方法である。
そうやって作った駒候補の監視・煽り役があのクリオネ擬きというわけだ。
つまり、クリオネ擬きが付いているモノは駒候補者であると言える。
して、我は13番目の駒候補。
つまり、他に12人?12体いるということだ。
・・・むぅ。
我は前世の記憶はあっても感情など残っておらんが、もし残っておれば狂うやもしれんなぁ
人間のつもりが魔物だからなぁ
ん?我か?
我はなーんとも思わんのである。
誰であったかなど思い出せぬものに、いつまでも気にしてなど居れぬからの
身勝手に我を含む13人を殺したのだ。
我が思うのはアノ傲慢女神をボコりたいということかの
そのためにも、この箱庭を生き残り傲慢女神に近づかなくてはな。