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6話 ~ガールズサイド2~

 修一と彩花が働き出してから3カ月が過ぎた頃、深夜に女性3人が集まり密談をしていた。


「お嬢様、私もう我慢できません。」

メイド服を着た女、エルナが言う。


「何がだ?」

お嬢様風少女、レアが尋ねる。


「シューイチの事ですよ。もう(おそ)ってもいいですよね?」


「何を言っているんだ、良いわけないだろう。」

レアが人差し指で蟀谷(こめかみ)を抑えながら言う。


「でも、我慢できないのです。シューイチを見るたびに唇に吸い付きたい、何なら、抱きしめてそのまま押し倒したい衝動(しょうどう)にかられるのです。こんなの蛇の生殺しですよ。」


「そんなことしたら、明日にでも、お前の頭と胴体が離れるぞ。」


「そんなぁ、私はどうしたらいいのですか?」


「どうもせん、折角良い関係を保てているのだ、今のままでいいだろう。」


「そうは言いますけど、私、知ってますよ。」

エルナが続ける。

「怪我をしたといっては、シューイチに治療して貰ってますけど、あれ、ワザとですよね?こないだなんか太腿(ふともも)を治癒して貰ってたじゃないですか?あんなところどうやったら怪我をするんですか?シューイチに太腿触られて気持ちよかったですか?エロエロですね。」


「ぐっ、それをいうなら、エルナだって、家事を教えるという名目でさんざん、シューイチの際どい所を触っているじゃないか、私が気が付いていないとでも思ったのか?」


「二人とも落ち着いてください。」

片眼鏡の女、マーシャが仲裁に入る。


「マーシャ」

「マーシャさん」

レアとエルナの声が重なる。


「マーシャさん、こないだシューイチの下着盗んでましたよね。」

「あれ、何に使ったのだ?」

前半はエルナ、後半はレアが言った。その目は冷ややかだ。


「うっ」

マーシャが言葉に詰まる。


「お前、それは流石に犯罪だぞ。」

レアの言葉にマーシャが項垂(うなだ)れる。


「ですが、マーシャさんの気持も分かります。私達3人はもう限界なのです。」


「だからといって、襲っていい理由にはならんだろう。もうすぐ風呂も完成予定だ。そうなれば、(のぞ)き放題だ、それで我慢するんだな。」


「お嬢様、今の状態でシューイチの下半身を見たら、私、食いちぎってしまいそうです。」


「お前、『サラッ』と恐ろしい事を言うな。」


「それくらい、限界が来ているという事です。私もたぶんマーシャさんも・・・」

チラリと横目でマーシャを見ながらエルナが言う。

「それに、このまま今の関係を続けても、シューイチとエロイ事が出来るようなるとは思えません。」


「うっ、それはだな」

レアも同じ事を思っていたのか眼を()らす。


「今こそ必要なのではないですか?私達のスケベ革命が」

エルナが熱く拳を握りながら言う。


そこまで話したところで会話を(さえぎ)るように、別の方向から声が聞こえた。

「自分でスケベとか言うの?」


「誰かと思えば、アヤカではないか、寝た(はず)ではなかったのか?」

レアが少し『ホッ』とした様子で言う。


「寝ようと思ったけど、()()変な会合を女子だけで開いているのは知っていたから、たまには参加しようかと」

彩花が悪びれずに言う。


「しかしだな・・・」

レアが言葉を詰まらせる。話していた内容は兄シューイチの事である。妹に聞かす話ではない。

「今更、隠しても無駄だよ。全部聞いていたから。」

彩花が自分の耳を指しながら言う。


「五感が強化されていると言っていたが、なるほどな」


「そう、他にもこんな事も出来るよ。」

彩花が何かつぶやくと、気配が薄くなる。


「なんじゃ、それは?」

レアが聞く。


「これは『隠密』って魔法だね。私が勝手に名付けたんだけど。」

彩花が自慢気に答える。


「それも、勇者の力か、自分で召喚しといてなんだが、底がしれんな。」


「まぁ、私も良く分かっていないんだけどね。」


「ふむ・・・・」


レアが少し考えるが、流すことに決めたらしい。

「それで、たまには参加しようと考えたと言っておったが、本当は話があるんだろう。」

レアがアヤカに尋ねる。


「ああうん、一応言いたい事はあるよ。最近お兄ちゃんへのセクハラが酷すぎるので少し注意しようかと。あんまりやり過ぎると逆効果だよ。」


「セクハラ?」

単語の意味が分からないのかレアが聞き返す。


「簡単に言うと、体を『ペタペタ』触ったり、ワザと際どい所を見せつけたり、下着を盗んだりする事かな。」

彩花が続けて言う。

「それにお風呂を(のぞ)くのも止めて欲しい。」


彩花の指摘に、3人がバツが悪そうに顔を見合わせる。


「やっぱり、犯罪行為は妹として見過ごせないというか、このタイミングでお風呂を作るのって如何(いか)にも怪しいし、どうしてもやるって言うなら、お兄ちゃんに言わざるを得ないよ?」


「ううう、そんなぁ・・・」

エルナが絶望したような表情で呟く。


「分かってる。我慢できないって話ですよね。私も分かります。お兄ちゃんいい体してるもんね。」

うんうん、と(うなづ)きながら彩花がいう。


「そこで、教科書を持ってきました。」

『ジャーン』と彩花が背中に隠し持っていたものを出す。


「ふむ、これは随分美しい絵だな。」

「この紙ツルツルですよ。」


「いや、そうじゃなくて、中身、中身が重要なの」

彩花が出したのは、単なるティーン向けのファッション誌である。鞄の底板の下においていた為、エルナの持ち物検査の時は発見されなかった。彩花はその雑誌の中ほどにある、パンツ一枚で上半身裸の男のモデルが、明後日(あさって)の方向を向いて、肉体美を披露している写真を開いて見せる。


「おおお、何じゃこれは、こんなものが存在するのか」

「え、エロイです。」

「あれ、この人、シューイチさんに似てないですか?」

その写真を見て、三者三様に反応する。


 ちなみに、このモデルの写真は雑誌の内容としてはかなりマイルドな方で、もっと際どいシーンがあるし、記事もある。一応、ファッション誌の(てい)をとっているが、ファッション要素は誰が見ても力を入れていないことが分かるぐらいのお情け要素である。身も蓋もない言い方をしてしまえば、ファッション誌の皮を被ったローティーン向けのエロ本とも言える。更に、この号の特集は『男をその気にさせる雰囲気作り』と言う内容で、本当に何の本か分からない。大丈夫か。日本。


「ということで、これを見て勉強してください。」

彩花が、雑誌を傍に居たマーシャに渡す。丁寧にこの国の言葉に翻訳した紙も添えた。「それから、私が見た感じでは、3人とも普通にチャンスがありそうだから、素直に気持ちを伝えたらいいと思うけど?」


「素直に気持ちを伝える?」

エルナが分からないという表情をする。


「好意を伝えて、お兄ちゃんが受け入れれば、エルナさん達がやりたいと思っていることは出来ると思うよ。段階をふむ必要はあるけど。」


「やりたい事?」


「さっき言ってた、唇を付けたり、抱きついたり、まぁ、その先も・・」


「なんと!そんな合法的な方法があるとは」

エルナが言う。


「目から鱗です。」

マーシャがモノクルを上下に動かしながら言う。


「いやいや、一番最初に思いつくことでしょ。襲うとかではなく、お兄ちゃんが受け入れるなら妹としては邪魔する気はないし、と言うかその方が都合がいいし。」

最後は(つぶや)くように言った。


「都合がいい?」


「ああ、こっちの話。」

彩花が何でもないと言った感じで、首を振った。


/////////////////////////////////妹ちゃん日記2/////////////////////////////////


 マーシャさんにこの世界の事を色々聞いているうちにとんでもない事が分かった。まずはこの世界は男より女がの数が圧倒的に多い事。それでも人口を維持できているというのは男の人が複数の女性と関係を持つのが普通と考えるのべきなのだろう。そして、男女の価値観も大きく異なるというのも分かった。どちらかというと女の方がエロに積極的だ。


 マーシャさん話の話を聞いて。作戦を少し変える事にした。そもそもこの世界の(メス)共は男に()えている上に、力も男より強い。お兄ちゃんは私と違って転移した時に得た力は癒しの力だけで、身体能力は上がっていない。つまり、ならず者共に襲われたら抵抗すべき手段はないという事だ。私達が独立した場合、お兄ちゃんを守るのは私だけしかいなくなる。


 この世界で男性がならず者の女性に連れ去られたら場合、その末路は悲惨である。散々、(もてあそ)ばれた後、最後は奴隷として売られるらしい。それに、人間の男を襲うのは人間だけでなくモンスターも襲うらしい。特にゴブリンなどの亜人型のモンスターに捕まったら悲劇だ、手足を折られ、目を潰され、棒が血まみれになるまで酷使され、それでも終わらず。文字通り(せい)(こん)も尽きたら、生きたまま食べられるのだそうだ。ゴブリンはそれを栄養として新しい生命を生む。地獄みたいな話だな。


 ということで、レアの雇い入れたいという申し出を受ける事にした。マーシャさんもこの館に居る限り、お兄ちゃんの安全は保障すると言っていた。思惑通りになるのは悔しいが、お兄ちゃんを守るためには仕方がない。それに、話してみるとレアやエルナさんやマーシャさんも意外といい人達だと分かった。少し下品だけど。どうやら、あの3人もお兄ちゃんを狙って入るっぽいが恋愛的な感情はあまりなさそうな感じがする。体だけが目当てという事なのだろう。価値観が大きく違うから、地球で言うと、ヤリたいだけの男と言う感じなのかな?


 この世界は私にとってはかなり好都合だ、男が少ないというが、そもそもお兄ちゃんにしか興味がないので全く問題はない。そして、私は愛される順番にもあまり興味がない。お兄ちゃんの傍に居れればいいし、お兄ちゃんが幸せなら文句はない。日本なら一夫多妻制みたいなのは倫理上問題になるが、この世界ではそれもない。ようはお兄ちゃんがエロくなって、複数の女性と関係を持つことに抵抗を感じなくなれさえすれば、全ての問題は解決するのだ。これには館の3人を利用させてもらおう。某エロ漫画?でも同じ様な事をしていたから問題はない。


 それで、趣向を変える事にした。そもそもお兄ちゃんは例え血が繋がっていない(・・・・・・・・・)と分かったとしても私を妹としか見ない気がする。だけど、周りに沢山女の人が居たらどうだろうか?その中に一人妹がいる。そもそも、私がこの世界で他の男と出会う事はほぼないだろう。寂しそうな私をお兄ちゃんは放っておく事ができるだろうか?うん、無理だよね。よし、お兄ちゃん改造計画をスタートしよう。

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