3話 ~ガールズサイド1~
修一達が勇者の力を試した日の夜。館の3人の女性が集まり話し合いをしていた。
「シューイチさん達はようやく寝たようです。」
メイド服を着た女、エルナが報告する。
「そうか、異界の者達はずいぶん夜更かしするのだな。」
お嬢様風少女、レアが欠伸を噛み殺しながら答えた。
「こちらの世界に来て、緊張しているのもあるのでしょう。」
片眼鏡の女性、マーシャが言った。
「夜も遅い、さっさと本題に入りたいが、取り合えず、勇者の力について報告してくれ、私は残念ながら立ち会えなかったのでな。」
「分かりました。端的に説明させて頂きます。」
それを受けたマーシャが留め書きした紙を取り出す。
「簡単に説明しますと。アヤカ様とシューイチ様両方ともに勇者の力が与えられたようです。」
「ほう、本当にそんなものがあるのか疑問だったが」
レアが興味津々という感じで相槌を打つ。
「まず、アヤカ様ですが、雷、土、氷魔法に適性がありました。それに身体能力もかなり強化されているらしいです。」
「らしい?」
「元の身体能力が分かりませんからね。本人の申告を信じざるを得ません。それに向こうの世界では魔法と言うものがなかったらしいのですが、少し教えただけで、適性のあった魔法全てを放つ事が出来ました。まだ、威力自体はそれほどではないですが、才能は相当にありそうです。特筆すべきは魔力の量ですね。今日だけで色々試したのですが、枯渇する気配がありませんでした。」
「なるほど、それは、まずいな」
「次にシューイチ様ですが、こちらは癒しの力に適性がありました。身体能力については上がっていないそうです。癒しの力の強さや、魔力の量は分かりませんが、弱かったり、極端に低いという事はなさそうです。」
「ふむ、癒しの力とは、また珍しい能力だな。ますます、まずいな。」
「次に、剣術の方です。こちらはアヤカ様だけ試しました。技術は全然ですが、木刀を振るうスピードは尋常ではなかったです。身体能力のほかに、五感もかなり強化されているかも知れません。訓練すれば、恐らく私など簡単に抜かれてしまうでしょう。」
「マーシャがそこまで褒めるのは珍しいな。しかし、魔法も剣術も両方いけるとなると、まずいどころの話ではないな。」
「あのー、先程からまずいと言っていますが、何がまずいんでしょう?もしかして、2人と敵対する可能性があるのですか?」
エルナが分からないと言った感じで聞く。
「いや、そうではない。そうだな、エルナはシューイチを見てどう思う?」
「あのドスケベボディとすぐにでもまぐわいたいです。」
「「・・・・・・・」」
「「・・・・・・・」」
「おい、正直過ぎるだろう。」
若干間があって、レアが引き気味に言う。
「これでも抑えてますよ。もっと具体的にどうしたいか言ってもいいですよ?」
エルナは続けて言う。
「それにこれはまさに大チャンスです。激熱です。こないだもマーシャさんと話しましたが、私達が子供を持つには、もう"種屋"にいくしかないかと相談していたところなんですよ。しかし、偶然にもシューイチさんがこの館に来た。男とエロイ事をして子供を作る。全人類の夢じゃないですか。子供、子供かぁ・・、シューイチさんと私の子供可愛いだろうなぁ、名前何にしよう。はぁ」
「まだ会って3日も経ってないのに、もうそこまで妄想しているのか?いやまぁ、置いといて、それがまずいという理由だ。シューイチとエロイ事をする。これは我々 3人の合致した意見だろう。」
レアの言葉にマーシャも『コクリ』と頷いた。
「それが良く分かりません。シューイチさんとエロイ事をするのと、魔術と剣術がどう繋がるのですか?」
「大いに関係があるぞ」
「エロイ事をするには、信頼関係が必要だろう。」
「そうなんでしょうか?」
「おい、大丈夫か、無理やり男に乱暴を働けば、貴族でも極刑になるんだぞ」
「そんなの知ってますよ。でも、男なんて滅多に会えないじゃないですか。」
「それはそうだが」
「そもそも伯爵家の五女なのに、無駄に子供を作られると困るという理由で、辺境の代官をやっているお嬢様に男が紹介されるチャンスなんて皆無ですからね。貴族の侍女ならおこぼれを頂けると思ったのに、私はガッカリでしたよ。」
「おまっ、そんな理由で私に仕えていたのか?」
「貴族の侍女は大体それが目的ですよ。」
エルナは『シレッ』と答えた。
「はぁ、まぁいい。とにかくエロイ事をするには信頼関係が必要なのだ。そして、信頼を得られれば、心を開き、股間も開く、そうしてエロイ事が出来るのだ。」
「なるほど、エロには信頼が前提としましょう。」
「それで、最初の話だ。アヤカが剣術も魔術も出来るという事は、早い段階で館から独立してしまう可能性があるという事だ。しかし、信頼と言うのは得るのに時間がかかる。だから、まずいと言ったのだ。」
「分かりました。そういう理屈だったのですね。しかし、それなら最初から適性を試さなければ良かったのでは?」
「う、それを言われるとそうなのだが、やはり本当にそんな物があるのかは興味はあるからな。」
レアが続ける。
「ま、まぁ、終わった事をくよくよするより、これからどうするかだ、具体的には二人をどうやって取り込むかだが、何か案はあるか?」
「・・・・いっそ、雇い入れてはどうでしょう?魔物の被害が増えているのは事実ですし、アヤカさんには魔物の間引きを、シューイチさんには治癒の力で怪我の手当をお願いするというのは?」
エルナが提案する。
「ふむ、しかし、雇うとなると賃金を渡すという事だ、逆に自立を早める事にならないか?」
「そう考えると難しいですね。枷を嵌めるわけにもいかないですし。枷をはめる・・・・?ぐふふ」
エルナが顎に手を添えながら相槌を打つ。
「結局、ここに居た方が利がある。と思えば簡単には出て行かないのではないでしょうか?」
マーシャがモノクルを『クイッ』と直しながら言う。
「利か」
「そうです。館に滞在中は衣食住は困りませんし、安全でもあります。利の方は十分だと思いますので、それを強調できれば」
「なるほどなぁ、取りあえずはそういう方向でいくしかないのか?」
「いい案だと思いますが。」
エルナがマーシャに同意する。
「うむ、やはり雇うのも前提で考えてみるか、賃金も利の一つだろうしな。ところで話は変わるが、あの2人兄妹だったな?」
「そう聞いています。」
「女男の仲では無いのだな?」
「その辺りは何とも、昨日は一緒の部屋で寝たみたいですが、エロい雰囲気は感じませんでした。」
「ほう、随分詳しいな。」
「ええ、隙あらば夜這いをしようと思って聞き耳を立ててましたので。」
「アホかっ!」
レアがツッコむ。
「でも、私が触ったモノの正体を知りたくて、つい」
「"つい"じゃないわ。お前はシューイチに近づくのを禁止するぞ。」
「そんな~、では、お嬢様はシューイチさんの股間に興味がないのですか?」
「・・・・・・」
「それに、シューイチさんが本当に男かどうかを確認する為にも、股間を見る必要はあると思いますが?」
「・・・・・・それはそうか?」
「何でも、殿方の股間には棒1本と玉2個がついているらしいですよ。」
「なんと、欲張りセットではないか、ううむ。」
「見たくないですか?」
「駄目だろう、さっき信用が大事だといったばっかりだ。」
「つまり、バレなきゃいいのですよね?私に策があります。」
「む、どうやるのだ?」
「裸になる場所といえば、湯浴び場ですよね?」
「覗くと言うのか?」
「いえ、湯浴び場は狭くて暗い上、石造りです。覗くような穴も、場所もつくれないでしょう。」
「なんだ、無理ではないか。」
「ところが、そうでもないのです。今日、勇者の力を試す時に、アヤカさんが頻繁に風呂に入りたいと呟やいていたのです。」
「風呂?」
「そうです。気になって風呂とは何か聞いたら、どうやら、大き目の桶にお湯をいれて、その中に体を入れて浸かるものらしいです。アヤカさんの元居た場所では、一般的な事だといってました。」
「湯浴びでは駄目なのか?」
「体の汚れを落とすという意味では同じらしいですが、お湯の中に入ると言う事に特別な拘りがあるようでした。」
「それで?」
「アヤカさんやシューイチさんを慰労する目的で、この館に風呂を作ってはどうでしょうか?新しく作るなら覗く場所も穴も作り放題です。」
「おおっ、なるほど素晴らしい考えじゃないか、風呂とやらを作る事で、シューイチ達の好感を得ることが出来る。私たちは、股間をみる事が出来る。一棒二玉、いや、一石二鳥と言うわけだ。」
「どうでしょうか?」
エルナが風呂を作っていいか?と許可を求める。
「いいぞ、まずはアヤカに風呂とやらの詳細を聞いてくれ。」
レアがそう言うと、エルナとマーシャが一礼した。
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まさか、本当に異世界に飛ばされるとは思わなかった。しかも、お兄ちゃんと一緒に・・・
。思わず顔がにやけそうになる。あの日、試していた召喚術は異世界から魔物を召喚するものだった、但し、魔法陣は裏返しに、そして、呪文は逆から詠唱していた。それにレア達もこちらで勇者召喚の儀とかをやってたようで、ひょっとしたそれも異世界に飛ばされたことに何か関係しているのかもしれない。
いや、考えるのはよそう。紛れもなくこれは幸運なのだ。物心ついた頃からお兄ちゃんが好きだった。それも、兄妹としてではなく、異姓として、でも、日本の法律は私とお兄ちゃんが結ばれることを許さなかった。忌まわしき民法第734条 『直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。』こんなくだらない一文が、私とお兄ちゃんを引き裂いているなんて認められない。憎すぎて条文をまるまる暗記してしまったほどだ。いっその事、兄妹婚に甘いドイツにでも移住するしかないと考えていたが、運よく異世界に飛ばされた。
異世界なら兄妹であろうが関係ないもんね。イエーイ、日本の法律見てる~?異世界召喚に巻き込まれたお兄ちゃんには申し訳ないけど、私はこの世界でお兄ちゃんと幸せになるんだ。幸いにも、勇者の儀とやらで、申し分無い力が手に入った。早めにこの館を出てお兄ちゃんと2人で暮らしたい。めくるめくお兄ちゃんとの甘々ライフ、想像しただけでも、はぁはぁ。
それにしても、レアとか、エルナとか、マーシャとかいう名前だっけ、あの3人がお兄ちゃんを見る目は尋常じゃなかった。私の女としての勘が危険だとささやく、お兄ちゃんは今までは、部活動と勉強で忙しかったから彼女を作らなかったけど、相当モテるのだ。私も友人や同級生にお兄ちゃんを紹介してほしいと頼まれた事が何度もある。まぁ、そんなのは全て握りつぶしたけど。それはともかくとして、お兄ちゃんが、あの3人の毒牙にかかる可能性がある。そういう意味でも早くここから独立する必要があるのだ。