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1話

「おおっ、本当に成功したぞ!」


 白い光が収まると同時にそんな声が聞こえてきた。


「は、どこここ?」

雌鶏(めんどり)みたいな声が出たが、驚いたのは本当だ。周りを見渡すと全く知らない場所に居た。どう見ても自宅ではない。今いる場所は石造りの薄暗い部屋で、床には変な模様が掛かれている。彩花が持っていた魔法陣に似ている。


 目の前には3人の知らない女性が居た。俺と同じように驚いているように見える。外国人っぽい。隣を見たら妹の彩花(あやか)唖然(あぜん)としていた。ただ、怪我はしていないようで少し安心する。


「えっと」

理由(わけ)もわからず、取り合えず口を開こうとした瞬間。3人いた女性の1人が1歩前に出てきて対峙(たいじ)した。メイドのような服を着ている。


「お下がりください。お嬢様。」

剣を抜くような恰好をしながら言う。いや、実際に抜こうとしているのか。左の腰にある柄のようなものに右手をかけている。剣をもっている?


「やめろ、エルナ(・・・)。」

お嬢様と呼ばれた少女がそれを止める。


「ですが」


「2度は言わん。」


「分かりました。ですが検身(けんしん)はさせて貰います。暗器をもっている可能性もあります。」

てか、さっきから普通に言葉が分かるのも不思議だ、外国ではないのか?目の前の外国人が流暢(りゅうちょう)な日本語を喋っていることに違和感を感じる。


「仕方ないか。お前たち済まないが、少し調べさせてもらうぞ。私の言っていることが分かるか?」

お嬢様風少女が俺達の方を向いて言った。


 彩花の方を『チラリ』と見ると目があって「うん」と頷いた。彩花も取り合えず従う事にしたらしい。それを見て俺は頷いた。


「どうぞ、調べて下さい。」

両手を挙げながら逆らう意志がない事を示す。武器を持っている相手に抵抗しても無駄だろう。こちらに害をなす気がない事を祈るだけだ。彩花も俺に(なら)って両手を挙げた。


 俺がそう言うとさっき剣を抜こうとしたメイド服を着た女が近づいてきた。エルナと呼ばれていたはずだ。近くに来て分かったがかなり若い。俺と同じような年齢にみえる。恐らく高校生ぐらいだ。結構、いやかなり美人だ。それにしてもこの状況は何なんだろう。彩花の儀式が成功した?そんな事あるのだろうか?そもそもあれは召喚の儀式ではなかったのか?これでは被召喚(・・・)だろう。


 「失礼。」と短く言うと、エルナはまず彩花の身体をまさぐり始めた。結構 際どいところも障っている。まぁ、そうじゃないと意味がないのだろうが、見てはいけない気がして反対側を向く。彩花本人を調べ終わると、次は彩花のカバンを調べだした。学校指定のカバンだ。魔法陣が捲れないように(おもり)に使っていたものだ。珍しいものもあるのか、随分時間をかけている。よく見るとソファーの切れ端も落ちていた。(ふち)は円形に綺麗に切り取られている。魔法陣との境目付近にあったからということなのか?その事実に『ゾッ』とする。


 やがて、納得したのか今度は俺の方を向く、とは言え俺が持っているものと言えば腕時計とスマホだけだ、格好については部屋着で上下トレーナーなのでポケットもない。スマホと腕時計についてはさっき彩花の方を調べたときにも見たのか、少しだけ触った後、すぐに返してくれた。それを見終わると次は俺の身体を触り始めた。彩花と同じ様に上からペタペタと調べる。反対の立場だったら完全にセクハラだなと思いつつ。受け入れる。


 エルナを見ると何か納得いかないのか時々不思議そうな顔をする。武器になるようなものは持ってないぞ。と思ったら、俺の股間にエルナの手が伸びてきた。そこはやばいと思い。腰を引こうとしたら『ガシッ』と反対の手で抑えられた。見かけによらず凄い力だ。そのまま、なすすべもなく大事な部分を触られる。(やぶ)から棒に、玉から棒を触られた・・・・30秒ぐらいたっぷりと・・・そうすると、悲しいかな男の(さが)で、当然反応してしまうわけで・・・・


「貴様、何か隠し持ってるな!」

エルナが叫びながら後ろに飛び跳ねて距離を取り、剣の柄に手をかける。エルナの発言を聞いて、残りの二人も臨戦態勢になる。


「その股間に隠している物を出せ!」

エルナが俺に命令する。いや、出せって、出したら大惨事だよ。俺は露出なんて低俗(こうしょう)な趣味は持ち合わせていない。隣を見ると、彩花がなんだか怒っているように見えた。何この状況で膨らませてるのよ、そんな感じなのかな。生理現象だから仕方ないとすごく言い訳したい。再び前を見るとエルナが今にも抜剣しそうな感じでこちらを凝視していた。


「・・・・チンチンです。」

見せるよりましだろうと、エルナに指摘されたものの正体を言う。


「は?何を言っている?」

エルナが心底分からないという顔をする。


「いや、チンチンです。チンチン。」

分かるでしょ。チンチンだよ。チンチン。男の股間についているモノですよ。自分で言ってて頭がおかしくなりそうだが、斬られるよりはましだと思い必死に弁明する。何なんだこの状況。妹を含む4人の女性の前で、卑猥(ひわい)な言葉を連呼する兄。死にたい。いや、死にたくない。


「もうよい、見せる気がないなら、力づくでひん()いてやる。手を挙げたまま動くなよ。」

エルナが俺のズボンを脱がそうと再び近づいてくる。


「待ってください。」

もう、見せるしかないかと考えていたら、別の方向から助け船が来た。さっきまでずっと黙っていた3人の女性の残り一人がエルナを制止する。


「どうした、マーシャ?」

お嬢様風少女がエルナを止めた女性の方を見る。マーシャというらしい。20代前半ぐらいの女の人で片眼鏡をしている。


「あの、私の勘違いかも知れませんが、その人 男ではないでしょうか?

マーシャが俺の方を見ながら言う。


「なにっ!?」

それを聞いたお嬢様風少女がもの凄い勢いでこちらに近づいてきた。遠くに居た時も小さいと思っていたがやはり小さい。年齢的は彩花と同じぐらいだろう。エルナもマーシャもそうだがこの娘も凄い美人だ。


「そなた、男か?」

少女は首を上下し俺を()め回すように見た。


「はい、男です。」

一応敬語で答える。えっ?ひょっとして女と間違えられていた?確かに声は高めのハスキーボイスだし。顔も中性的だとよく言われる。だけど、高校に入ってからはほぼ女に間違えられることはなくなった。初対面で3割ぐらいだ。あれ、結構多くね?


「ほ、本当に?」

お嬢様風少女が念を押してくる。


「ええ、正真正銘 男です。」

そこまで、疑う事はないだろうと思っていたら、少女は元の場所に戻り、何やら他の女性2人と『ゴニョゴニョ』と相談し始めた。俺が男だったら何かまずいのだろうか、ここが何処か分からないが男子禁制の場所とか。


 隣を見ると彩花も不安そうな顔をしていた。声をかけようと思ったが止めた。混乱しすぎでまともな話を出来そうにない。向こうも何を話したらいいか分からないだろう。


 やがて会話が終わったのか、お嬢様風少女がこちらに向かって、ニッコリと笑いながら言った。

「ようこそ、グランタリアへ、異界の勇者達よ。」


 どうやら、俺と(あやか)は異世界に転移したらしい。

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