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エピローグ

「見慣れた天井だ」

目覚めた後、石造りの天井を眺めながら、一人で考えを巡らす。異世界に来て、丁度1年が経過した。俺は日本に帰らなかった。一番大事な人の顔を思い浮かべたときに、エルナの顔が真っ先に浮かんだ。それで答えを決めた。同年代とは思えないくらい、大人びた表情を見せるかと思えば、小学生の男子か!と思えるような言動をする。少し変わった女の子。どうしてこんなに()かれたのか、自分でも分からない。でもその明るさに救われてきたのは紛れもない事実だ。たまに俺を見る目が怖いけど、それもまた愛嬌(あいきょう)だろう。


 エルナとは正式に付き合うようになった。どっちが告白したかは内緒だ。今の所、健全な関係が続いている。と言っても、付き合うようになってからまだ一週間だ。いきなり夜這いをかまされたりして、理性が持つか不安な所はあるが、エルナは俺の意思を一応は尊重してくれるっぽい。この世界の女性って男よりも力が強いから、本気を出されたら俺にあがらうすべはない。


 夜這いされた事、本当は怒らないといけないんだけど、理由を聞いたら、"俺がどこか行かないか不安だった"って言われた。うん、それで許してしまった。何というか(すご)い。今まで、この世界の魔法ってどういう仕組み何だろう?とか考えてたけど、過去の自分にこう言いたい。"愛の前では物理法則なんて意味がないのだ"と。なんか脳みそ溶けそう。


 あの後の話を少し、帰還魔法を使う日の夜。俺達はレアに還る意思がない事を告げた。我儘(わがまま)で残るのだから、屋敷も出て行くつもりだと言ったら、一生養うから出て行かなくてよいと泣きつかれた。張り詰めていたのもあるのだろうし、残ると選択したことが余程嬉しかったらしい、でも、抱き着くついでにお尻をさすったり、胸板に頬を擦り付けるのは止めて欲しい。この国の女性って、微妙なセクハラをしてくるよね。


 還らない事は決めたが、帰還魔法自体はやってもらった。日本に居る両親にメッセージを伝えたかったからだ、帰還の魔法は時間も戻る為、新しく手紙を書いても、内容が消えてしまい。白紙の紙になってしまう。ということで、彩花がこの世界に来るときに持っていた、教科書とノートを切り取ってメッセージになる様にした。同時に俺が大切にしていた時計と彩花が大切にしていたアンクレットも一緒に送り返す。二つとも俺達の一番の宝物で、その事を知っているのは両親だけだ。きっと、あの二人なら、分かってかってくれると信じている。血の繋がっていない俺と彩花を分け(へだ)てなく愛して、育ててくれたのだから。


 治療院の方については少しだけ業種の幅を広くした。治療を受ける為にわざわざ怪我をする人が出るのは困るので、相談業(カウンセリング)をする事にした。要は悩み事や困りごとがあるなら聞きますよ。ということなのだが、実質殆どの人は俺と話すためにやってくるだけで、大した悩み事などはない。なんだかホストになった気分だ。まぁ、それでやる気を出してくれるならそれでもいいのかもしれないと最近思い始めている。


 彩花との関係は相変わらずだ、血は繋がっていないとは言え、15年間ずっと妹だったのだ、今も妹であるという認識に変化はない。と思う。エルナの事、自分ではけじめの意味もあったのだが、彩花の反応は鈍かった、好きにすれば?という感じなのだ。あの告白は夢ではなかったのかと今でも思う。いや、俺とエルナが男と女の関係になれば自分の事もそう(・・)見てくれる(はず)だとも言っていたな。まだ、諦めていないのかもしれない・・・。


 レアとマーシャさんには以前にもまして好意を向けられている気がする。俺がエルナと付き合い始めたと知っているはずなのに、何故か逆に積極的にアプローチをかけてくるのだ。エルナについてもそんなレア達を止める様子もない。この世界の女性はどうも、男の浮気に対して寛容っぽい。というより、浮気という概念すらないのかもしれない。


 エルナには普通に俺の事を好きでいて欲しいのだが、独占欲や嫉妬心やがないのか?それはそれで不安になる。満足したら、用済みとばかりに捨てられるとかないだろうな?日本では逆の事をすると最低男となるが、この世界では最低女となるのだろうか?


 まだこの世界に慣れない所は多くある。それに、この世界の男性の立ち位置は弱い。でも、それは何も出来ない事の理由にはならない。俺の傍にはエルナの他に、レアやマーシャさん、彩花だっている。彼女らが俺を大切にしてくれるのは分かるし、俺も彼女らを大切にしたいと思っている。だからきっとこの世界でも、人生を謳歌(おうか)出来るだろう。


「フヒヒ、チンチン触ってもいいんですか?」


 いつの間にかベッドの隣に潜り込み、下品な寝言を言い、ニヤニヤ笑う女の子を見ながら、俺はそう結論付けた。

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