13話 ~ガールズサイド4~
雷龍が去った3日後、エルナとマーシャが食堂で話をしていた。
「はぁ、シューイチは本当に困った男ですよ。」
ため息を尽きながらエルナが言う。その顔は若干赤い。
「本当ですよね。」
マーシャがそれに同意する。こちらの顔も上気している。
「それにあのボディ、思い出すだけでも、はぁ、ドスケベ、ドスケベ」
「完全に同意ですね。」
「エロいだけでなく、神々しさもあるというか、子供を助けたときのあの美しい絵のような姿。崇めたいという気持と穢したいという気持が、こう混然一体となって、ああ~~~、私は一体どうしたいんでしょう。」
「分かり過ぎます。」
「「・・・・」」
「はぁ、シューイチとエロい事したいです。」
「まぁ、結局そこですよね。」
マーシャが片眼鏡をなおしながら言う。
「いっその事、館にトラップを仕掛けて、シューイチが掛かったらエロイ事が出来るというルールにしませんか?」
「なんですかそれは?」
「私の最近のお気に入りの妄想です。罠に掛かって動けないシューイチを私が美味しく頂いちゃうという感じの奴ですね。」
「また、馬鹿な事を、レア様に怒られますよ。」
「そういえば、そのお嬢様は何をなさっているのですか?」
「今は執務室で雷龍教の幹部達と面会をしていますね。」
「あれ?マーシャさんは立ち会わなくていいんですか?」
「嫌な思いをするのは自分一人で十分だと言って、追い出されました。」
そこに、ドアが"ガチャリ"と開き、レアが入ってくる。
「そうだ、全くしつこかったぞ、あんなのが雷龍教の幹部なのだから、変な教義が広まるのだろう。」
毒づきながら椅子に座る。
「どのような話をされたのですか?」
エルナが聞く。
「例のチ・・・、土の柱の件で苦情を入れに来たのと、信者を助けてくれた礼だな。」
レアが答える。
「後は、恐らく落雷で館が損傷していないか下見に来ていたのでしょう。」
マーシャが補足する様に言った。
「それはまた、忙しい訪問ですね。」
「信者にこの館に落雷があるかどうかを見張らせていたのだろう。そして、雷が落ちたという報告があった。だが館に落雷の痕跡はない。自信満々の顔が崩れていく幹部達の顔は見ものだったな。なんなら館を案内してやれば良かった。」
レアが『フフッ』と笑う。
「館に損傷でもあれば、暴動の理由にしたかったのだろうが。」
「何故、暴動を起こしたがるのでしょうかね?」
「主な理由は2つだな。一つ目は暴動を起こせば自分たちの力を誇示できる。それにより、信者の絆を強めれるし、新しい信者の獲得にも繋がる。二つ目は単純に信者を抑えるから、お布施と賄賂を寄越せという事だな。」
「はぁ、何と言うか、あの連中こそ天罰を受けるべきですよね。」
「宗教なんてそんなものだ、あんな幹部共がのさばっている事が、天罰なぞ当てにならん証拠だな。」
「最大限の皮肉ですね。」
マーシャがため息をつく。
「まぁ、今回はこの街での暴動はないだろう。大きい被害はなかった。市井の建物で一部、倒壊や火災が起きたが小規模だ、人的被害は軽症者が数人と、重傷者は例の子供だけだ。それももう回復して、意識もあると聞いた。そうなると、怒る理由も矛先もない。雷龍が訪れて死者が出なかったなど聞いたことがない。いくら雷龍教の上層部が煽ろうが、信者がついてこないだろう。シューイチとアヤカに感謝だな。」
「そのシューイチの事も気を付けないといけませんね。」
「そうだな、連中、シューイチにも会わせろと言ってきた。直接礼を言いたいから等と言っていたが取り込みたいと考えたのだろう。」
「雷龍教の信者からシューイチの事を神の使者ではと呼ぶ声が出たと聞いています。」
「気持は分かる。シューイチの治療する姿を見て、雷龍教の信者は代わる代わる祈っていた。ヴィーナス教は祈る事を禁止しているが、あの姿を見れば思わず祈りたくなっても不思議ではない。だが、雷龍教は雷龍を崇める宗教だ。当然、神の使者などという事は認められん。」
「上層部は抑えようとしているようですが、信者の間で噂は広がる一方のようです。それで取り込みたいと考えたのでしょうね。」
「黒い噂もあるしな、そんな所にシューイチを送るわけにはいかん。」
「黒い噂?」
エルナが相槌を打つ。
「雷龍教の幹部連中はな、夜な夜な男の信者を集めて、儀式と称して、宴会を開いているそうだ、何をしているかは想像通りだろう。」
「宴会・・・、男と・・・、何と羨ましい事を。」
「それも雷龍教に心が傾く一つなのだろう。幹部にさえなれば宴会に参加できる。スケベ心は信者を獲得するのに役に立つ。男の信者を利用して、女の信者を増やしているのだ、男が居れば女は自然と集まってくる。良くある手だな。」
「確かにそんなところにシューイチはやれませんね。シューイチとエロイ事するのは私達だけで十分です。」
「本音が出ているぞ。」
レアが苦笑しながら言う。
「ところで、話は変わるのですが、雷龍が来てから『ムラムラ、ウズウズ』が止まらないのですが、あの雷の音と『ウネウネ』の動きを思い出すと、私を刺激して疼きが止まらないというか。」
「「・・・・」」
「「・・・・」」
「「・・・・」」
「ま、まぁ、気持は分かるが襲うような事はするなよ」
レアが『ゴホン』と咳払いをしながら釘を刺す。
「それとな言おうかどうか迷ったがお前たちに話しておく事がある。まじめな話だ」
レアは神妙な表情で、静かな声で話し出した。
「シューイチとアヤカだが、出来れば元の場所に帰してやりたいと思っている。」
「元の場所?召喚前の場所という事ですか?」
「そうだ」
「出来るのですか?」
「分からん、初めて会った日にシューイチは帰る方法を聞いて来た。私は探すと約束した。もちろん、帰す方法は探してきたが、片手間でやってたに過ぎん。召喚者としてもっとまじめに取り組むべきだったと考えている。」
「「・・・・」」
「ほんとはな、全く無関係の子供を必死で救おうとしているシューイチを見て、自分がやった事が酷く恥ずかしくなった。」
「お嬢様?」
「シューイチやアヤカからみれば、いきなり別の世界に連れられてきたのだ、向こうには大事にすべき人達が居たのだろう。今更ながらに、とんでもない事をしてしまったと、謝っても謝り切れん。私が出来るのは元の場所に無事帰すそれだけだろう。」
レアが続ける。
「だからな、覚悟だけはしといてくれ。いつ別れてもいいようにな。特にエルナにはすまないと思っている。」
「お嬢様見くびらないでください。シューイチ達が大事なのは私達も同じです。それに私は特に傍に居たから分かります。あまり出さないようにしていますが、シューイチは偶に酷く憂鬱そうな顔をする時があります。きっと元の世界を思い出しているのでしょう。」
「私もエルナさんと同じ気持ちです。シューイチとアカネが来た1年は本当に楽しかった。私達の世界に彩を与えてくれた。それが元に戻るだけです。二人は元々、居なかったはずの存在、そう考えるべきです。そして、それが正常な状態でしょう。」
「そうか・・・・ありがとう。きちんと元の世界にもどしてやらないとな。」
呟くような小さな声で言った。
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「でも、還る前に先っちょだけでも」
「やめい」