9話 ~ガールズサイド3~
修一と彩花が異世界に来て6カ月。あいもかわらず、深夜に女性4人が集まり話をしていた。
「いや~、アヤカに貰った教科書の効果は凄いですね。私はこれで恋人ができました。」
メイド服を着た少女エルナがご機嫌で言う。
「まだ、告白とやらを成功させていないのだろう。早合点じゃなきゃよいがな。」
お嬢様風少女レアがツッコむ。
「おや、お嬢様、私に先を行かれて不満ですか?しかし、早い者勝ちのルールだったはずです。見事告白を成功させ、股間にゴールも決めて見せますよ。」
エルナが自信たっぷりに言う。
「おい、アヤカこんな下品な奴に先手を取られていいのか?お前もシューイチとエロイ事をしたいと狙っていると思っておったのだが。」
「お兄ちゃんがいいと言うなら私は特に言うことはないけど。でもエルナが前に話してた。変態プレイと言うのは気になるかな。あんまりお兄ちゃんを傷つけるような事は止めて欲しいと思う。」
話を振られた、彩花が答える。
「なんじゃ、その変態プレイとやらは?」
レアが興味津々と言った感じで聞く。
「モンスター討伐の時に、仲間とそういう話になったの、男とどんな〇〇〇をしたいかって」
「ほう、エルナは何と答えたのだ」
「わ~~、わ~~~、わ~~~、お嬢様、人の性癖を聞くときは、まずは自分の方から話すのが筋では?」
エルナが慌てながら割り込んでくる。
「もうアヤカは知っておるのだから、今更隠しても意味ないだろう?」
「それはそうですけど、モンスター討伐の時って変なテンションになるのです。その変なノリで話したので、それをこういう冷静な場で披露されると何だか恥ずかしいです。」
「散々、下品な事を言っておいて、趣味を晒されるのは嫌なのか?良く分からん奴だな。」
「という事で、どうしても聞きたいならまずは、お嬢様からお話しください。」
「別にそこまでして聞きたいわけではないが。」
「「「「・・・・」」」」
「ふむ、やはりエルナには趣味を話して貰おう。これは命令だ。」
暫くの沈黙の後、レアが言った。
「ちょっ、お嬢様こんなところで命令を使うのは淑女協定違反では?この場は
如何にしてシューイチ、いや男を落とすかを考える場だったはずです。」
「だからだ、先程、アヤカが言っていたが、この中でシューイ・・・、いや、男を傷つけるような趣味を持っている人間がいるかもしれん。それに、教科書とやらで、学んでいるが、我々には経験が無さすぎる。実際、夜伽になって自分では普通のつもりでも、とんでもない変態プレイを男に押し付けてしまうかもしれん。」
「なるほど、あり得なくはないですね。それに不本意ですが、エルナさんがシューイチと良い感じなのは事実です。そういう意味でも、エルナさんの性癖を把握しておく必要があります。エルナさんが失敗して、シューイチさんが心に傷を負えば、私達に番が回ってこない可能性があります。」
レアの説明に、マーシャが付け加える。
「ちょっと、皆さん私の事をどう思っているのですか?」
エルナが抗議する。
「ドスケベモンスター」
「性欲の権化」
「下半神」
エルナの抗議に3人がそれぞれ答える。
「ううう、これはいじめですよ。」
3人の答えを聞いて、エルナが俯いていじける振りをする。
「わかりました。そこまで言うなら趣味を披露します。どうせ、既に知られてますし。ですが、ここは平等にすべきです。私が性癖を晒す以上、皆さんにも、同じ様に発表して頂きます。そもそも、皆さんだって、心にどす黒い獣を飼っている可能性がありますからね。」
「「「・・・・」」」
「う~む、仕方がないか、アヤカとマーシャはどうだ?」
「はぁ、私も別にいいけど」
「まぁ、私も特に問題ないです。」
彩花とマーシャがそれぞれ首肯する。
「で、話す順番はどうするの?」
彩花が聞く。
「そうだな、少し待っておれ」
そう言うと、レアが部屋を出て行き、直ぐに戻ってきた。
「ここに番号が書いた棒がある。これを引いて、その順番通りに話す様にしよう。」
「なるほど、くじで決めるのね。」
「しかし、都合よく、番号の書いた棒など良く持っていましたね?」
エルナが聞く。
「まぁ、王様ゲームとやらがしたくてな、話題になった時に・・・・」
レアが"ゴニョゴニョ"と弁明する。
「なるほどシューイチと王様ゲームがしたくて準備だけはしておいたと、一生使わなそうですね。」
「皆まで言うな、さっさと引け」
「レアの言葉に全員が一斉にくじを引く。
「よし、順番が決まったな、努々、適当な事を言って場を濁すような事はしないように。」
レアが続ける。
「で、一番は誰だ?」
「あ、私です。」
マーシャが手を挙げる。
「そうか、一番手はやりにくいと思うが、早速、マーシャからいってくれ」
「それでは、不肖マーシャが最初に趣味を披露させて頂きます。」
ゴホンと喉を鳴らしながら、マーシャがその場で立ち上がる。
「太腿」
ポツリとマーシャが呟く。
「「「ふともも?」」」
「そうです。私は常々考えておりました。シューイチ、いや、男の人の太腿に顔を挟まれたいと。」
「「「・・・・・」」」
「そして、股間にそのまま顔を埋めて香りを堪能したいと。」
「それだけか?」
「匂いフェチって事なのかな?」
レアとアヤカがそれぞれ感想を言う。
「基本的にはそうですね。香りを満喫した後は気分が盛り上がっていると思うので、恐らく身も心も溶けるような交わりが出来ると思っています。ただ」
「ただ?」
「もし叶うなら、相手にも私の香りを堪能して欲しいです。なので、こうお互いの太腿で相手の顔を挟んだ後、ベッドでクルクルと上下が入れ替わるように回転したいです。勝手ですが、私はこれをラブロールと名づけました。」
「なんか必殺技っぽい。」
「・・・という事でこれが私の性癖です。」
マーシャが終わったとばかりにお辞儀をして着席する。
「ふむ?どうなんだ?」
横目で彩花とエルナを見ながら、レアが言う。
「やっぱり匂いフェチなのかな、でも太腿に挟まれたいというのは良く分からないな。」
「私は普通にいい趣味と思いましたが」
彩花とエルナがそれぞれ感想を言う。
「なるほど、ありよりという事なのか?ご苦労であったマーシャ。」
レアの言葉にマーシャが再び一礼する。
「では、次は二番だが?」
「う~ん、私の番かぁ、といっても私は特に変な性癖はないからなぁ。」
彩花が顎に手を当てながら考える。
「強いて言うなら、言葉攻めして欲しいぐらいかな?」
「言葉攻め?」
「そう、お兄ちゃん、いや、好みの声を持った男の人に耳元で命令して欲しい感じかな。」
「ほほう、アヤカは男に声で攻められるのが好きなのか?」
「うん、まぁ、『かわいい』とか『好きだよ』とか、甘めの言葉もいいんだけど、『オラッ、股をひらけ!』とか、『どこが気持ちいんだ!言ってみろ!メスブタ!』とか、『濡れすぎだろ、このド変態!』とか、結構、きつめの言葉を囁れる方がいいかな。」
「「「・・・・・」」」
「交わっている最中に耳元でそういうのを言われたら、多分、脳みそ融ける。それで、絶対従っちゃう。駄目だと分かってても、いや駄目なほど、燃え上がると言うか。」
「「「・・・・・」」」
「私の性癖は、そんな感じかな。普通すぎだと思うけど。」
「いや、普通か?逆ならアリだと思ったが?」
レアが言う。
「私も攻める方ならアリと思いました。」
エルナが言う。
「私はアヤカさんと同じですね。攻められる方が好きです。」
マーシャが言う。
「ふむ、思ったよりバラけるものなのだな。まぁ、男を傷つける感じではないから問題はないか?で、次は私か」
レアが3番のくじをテーブルに置きながら言う。
「先程、二人の話を聞いている時に考えていたのだが、どうも私は"見たり"、"見られたり"する事に、快楽を感じるみたいだ。」
「ほう、お嬢様は"視覚特化型"ですか。そういえばシューイチに際どい所を見せつけていましたね。」
「エルナうるさいぞ。」
レアが続ける。
「それを元にどういう趣味が、興奮するか考えていた。結論は"合わせ鏡"だ。」
「合わせ鏡?」
「そうだ、ベッドの左右に全身が移るぐらいの鏡を2枚立てるだろ、そうすると行為中の自分たちの姿が鏡に映し出される。」
「それで興奮するのですか?」
「説明が難しいのだが、主観性と客観性のズレがなくなり、エロさを演出するんじゃないかと考えている。具体的に言うと、ベッドでエロイ事をしている最中に横を見ると、交わる私とシューイチ、いや、男の姿が映る。」
「ふむふむ」
「そうすると、鏡を見てこう思うわけだ、『うわっ、この二人エロ過ぎ』と、でも実際その行為をしているのは自分たちなわけだ。その認識の差が埋まる事により気持が盛り上がると考えている。それに俯瞰的に自分たちを見れることにより、色んな見えない所が見えるようになるだろう。視覚で余すことなくプレイを楽しめる気がする。」
「それはまた、なかなか高度な性癖ですね。」
エルナが感想を言う。
「鏡に映るのが他人に見られているみたいで興奮しそう。」
「私は余り理解できませんでした。」
彩花とマーシャもそれぞれ感想を述べる。
「ま、私はそんな感じだな、最後はエルナの番か。」
レアがエルナの方を見ながら言う。
「ふむ、では私の性癖を発表させて頂きます。」
エルナが立ち上がりながら言う。
「そんな大したもんじゃないだろ。」
「まず、鉄の椅子を用意します。出来るだけ質素なもので、背もたれがあるタイプです。」
エルナがツッコミを無視して話し出す。
「ふむ」
「それを何もない真っ暗な部屋の真ん中に固定しておきます。」
「それで?」
「裸のシューイチ、いえ、裸の男の人を用意します。」
「え!?なんでだよ?」
レアがツッコむ。
「男の人を椅子に麻のロープで縛り付けて、1日放置します。」
「いや、その時点でもう駄目だろ。」
「ちなみに、放置中に与えるのは媚薬入りのスープのみです。」
「「「・・・・・」」」
「そうすると色々、限界を迎えている事でしょう。そこに颯爽と私が登場します。男の人には私が天使に見えているはずです。それで、そのまま椅子に向かい合うように座りながら、パンパンに膨らんだ"アレ"をパンパンするという感じですかね。」
「お前、意外に歪んでるなぁ」
レアが感想を言う。
「そうでしょうか?私は、身も心も自分に服従させたいのです。そうしてやる行為はきっと心を擦り付けるような快楽なはずです。それに、女なら男を支配したい、自由にしたいと思うのは当然の欲求でしょう。」
「前も思ったけど、甘えて欲しいという先にある、限界の欲望なのかな?」
「むしろ縛られる側に回りたいです。」
彩花とマーシャもそれぞれ感想を言う。
「まぁ、ともかく私達3人のはともかく、エルナの趣味は認められんな。」
「いやいや、私だってそんなプレイを実際やろうなんて考えてませんよ。あくまで妄想です。それぐらいの区別はつきますよ。」
「ほんとか?」
3人は胡散臭そうにエルナを見た。
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最近お兄ちゃんとエルナがいい感じだ、ひょっとしたら、エッチするような関係になるかも知れない。お兄ちゃんも満更ではないみたいだ。でも、エルナかぁ・・・。モンスター退治とかで一緒になるから、エルナが良い娘でだってのは分かる。スケベだけど。いや、この世界では大体、女は皆そんな感じか。
しかし、最近のエルナの浮かれ具合を見て思うのは単に体目当てだけとも思えない事だ。つまり、ラブの波動を感じる。エルナはお兄ちゃんを好きになりつつあるのだろう。けしかけたのが自分とは言え、複雑な心境だ。不思議なのはあまり嫉妬心を感じない事だ、もう少しモヤモヤすると思ったがそういう気持があまり湧いてこない。私がお兄ちゃんを嫌いになるなんて事は絶対にない。試しに甘える振りをして抱き着いた。きちんとドキドキした。うん、間違いなくお兄ちゃんが好きだ。それだけは自信をもって言える。
どちからかと言うと、この世界に来て、嫉妬心みたいなのが薄れている気がする。レアは勇者の力を"適応の力"とも呼んでいた。つまり、この世界の女性に近い感性になってるのかな?レア達を見て思うのは、独占欲が薄い事だ。レアもマーシャさんも段々とお兄ちゃんに惹かれて言っているのは分かる。でも、エルナに対しての嫉妬心みたいなのはない。例えお兄ちゃんとエルナがエッチをしても、それはそれと考えて、次は自分の番だと気合を入れるのだろう。地球の感性だとありえない。男を共有財産的なものとして見ているのかな?それとも種馬かな?
この世界の女性は生きやすい。外を歩いてても人目をあまり気にしなくていいし。女と言う理由で犯罪に巻き込まれる確率も低い。モンスター退治の時は5~6人のパーティを組んでいるが、変に派閥が出来たり、ギスる事もない。女性一人一人が自立しているからだろう。
逆にお兄ちゃんにとっては生きづらいという事なのだろうか?館から出るにも女装して、護衛を付ける必要がある。間違いなく息苦しいだろう。お兄ちゃんは元の世界に戻りたいと感じてるのかもしれない。