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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
4章 蒼と永劫
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79. 瞳の中の狂焔

「……共鳴(アンチスフィス)、解放」


 力が止め処なく溢れる。いいや、この創世主との共鳴は、もはや力ではなく概念。

 この身は今、眼前の災厄と同等の立場に在った。


「成功しましたか……!」

「使役者よ、一体これは……!?」


 視える、総てが。空間、時間、魂、因果。

 あらゆる『不確か』はこの身の前では『確か』に変わる。


「あははははっ! そうか、そうでしたか! あなたが創世主だったのですね!」


 ランフェルノは哄笑し、それから嬉しそうにこちらへと近づいた。

 違う、僕は創世主じゃない。


「まさに青天の霹靂ですよ! あなたを殺せばこの世界(アテルトキア)は滅ぶ……創世主捜しという風波に揉まれる憂いは絶えました。いやあ、鄭重な接遇に感謝します」


 僕は創世主ではないが、今はどうでも良い。勘違いを正す必要はない、この災厄はもうすぐ殺すのだから。


 ランフェルノへと神剣を一閃。空間が揺らぎ、歪曲する。

 しかし剣閃は奴が纏う焔によって相殺された。


「おや、いきなり攻撃だなんて酷いじゃあないですか。……でも、この身は永遠。僕には傷ひとつ付けることなんて出来やしませんよ」


 お返しと言わんばかりに、ランフェルノから焔の波動が迸る。

 ──熱い。奴と相対してから常に止まない感覚が一斉に噴出した。


「大いなる天よ!」


 焔の波動とゼニアの神気が衝突、直後に周囲の炎海が巻き上がり波となった。ランフェルノの操る焔は概念……触れれば間違いなく痛手となる。


 ランフェルノに肉薄し、再度剣を振るう。

 だめだ、刃が届かない。焔の壁をまずどうにかしないと……


「創世主にしては随分と人間的な立ち回りをしますね。まあ、僕としてはそちらの方が恐怖が薄れて……あはは、失敬! 恐怖なんて感情は僕にはもう存在しなかった」


 意味不明なことを喚き散らす災厄との攻防を繰り返しながら、戦況を把握する。

 ゼニアは要所要所で補助をしてくれるが、ブルーカリエンテは常に機会を窺い続けている。神族はともかく、その他の種族がこの戦いについて来る事は難しい。だが、ここについて来る選択をしたのは彼。災厄を倒せるのが共鳴者だけならば。

 この力でランフェルノを討ち取る場面を、彼に見せたい。


「さあ、僕の焔の前に平伏するがいいっ!」


                                      ----------


 氷。


 それが私の憧れだった。


「ブルー、お疲れ様です。私は明日から契約による仕事を行うことになりましたので……暫く我らが領地の留守を頼みます」


 ある日、我らが領域の支配者たるレオハート様が仰った。

 私の実力を信頼し、登用して下さった偉大なるお方だ。


「レオハート様を使役するなど……一体どこの世界の者で?」


 彼女は最上級の悪魔。そう易々と使役できるお方ではない。

 『氷結の大悪魔』として畏怖される存在であり、悪魔達の憧れの的でもある。私もまた、彼女に畏敬の念を抱く者の一人だった。


聖戦世界(ランガード)の人間です。……そういえば、ブルーも彼の世界の出身でしたか」


「はい。しかし、ランガードにそこまでの強者が居た事に驚きますね」


「ふふふ……では、暫くの間失礼しますね」


 氷結の大悪魔は、そう言って冷たく、そして暖かく笑った。


「はっ、お任せください」



 それが最後に見た、敬するレオハート様の姿だった。


                                      ----------


 目で追えない。それが率直な感想だ。

 あまりにも超常、あまりにも理外。二つの概念の衝突は、理に囚われた存在たる私には過ぎた戦いだった。我が使役者とランフェルノの戦いは続き、そこに仲間の神族が介入する。


 ……情けない、な。


 ランフェルノを滅ばす為にこの身は生きてきたといっても過言ではない。にも拘わらず、我が力は圧倒的に及ばず。ただ焔を避け続けるのみだった。


 必ず、奴を殺す。命に代えても一矢報いてみせよう。

 その為に私が為し得る事は……


「ははっ、どうしました? もはや策を弄する必要も無い……僕の圧倒的な力には創世主といえど敵わないんですよ。諦めてはいかがです?」


「……戯言を」


 辛うじて、我が使役者の攻撃が焔に弾かれているのが見えた。

 永劫の焔……あれはランフェルノの本質そのものであり、我がレオハート様を殺したものでもある。

 曰く、魂の焔。これは聖戦世界の滅亡直前に逃げ延びた同胞から聞いた話だが……奴が人間だった頃、とある研究に没頭していたと言う。


 生命が持つ魂を吸収し、己にその力を宿すという。

 奴は世界全ての魂を吸収し、果てには創世主の魂まで食らったのだ。

 ……そう、レオハート様の魂も。


 焔が揺らめく。その揺らめきは……




『我が主、私の魂を捧げます。貴方の永遠に幸あれ……』


『ああ、ありがとう……レオ。さあ、共に永遠となろう……』



 燃える業火の中、垣間見た。


 奴に傅くあのお方。


 虚ろな目。どこまでも幸せそうで冷徹さの欠片もない、されど異様な笑み。


 彼女の身体を包みゆく焔。



「レオハート、様……」



 あの焔だ。


 あの焔が、私の全てを狂わせたのだ。





「ラン、フェルノ……」


 この苛烈な戦場において、燃ゆる獄焔の中において。


 ──私が為すべきは……



 

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