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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
20章 因果消滅世界アテルトキア
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132. 対『輝天』

 戦場に舞い降りた光の徒、ユリーチ・ナージェント。

 ああ……ついにこの時が来てしまったか。私は、スターチは裏切り者として彼女と対峙する。ついぞ超えることのできなかった高い壁に直面する。


 彼女の登場を視認したアリキソンは納刀。


「ユリーチ。この場は任せる」


「分かった。アリキソンはどこへ?」


「……『天魔』を討ちに」


 彼はそれだけを言い残し、大森林の彼方へ駆けて行った。

 『天魔』とは私のことだ。ついに気でも狂ったか。ユリーチも唖然として彼の背を見つめていた。


 ……まあ良い。異空のアリキソンが干渉空谷を使いこなしたのは驚いたが、今の私が見据えるべきは『輝天』。世界を守る光の盾である。


「……ユリーチ。君は私を救うと言ったね」


「はい。お救いします。私が闇からお兄様を引き摺り出す」


 彼女は私を哀れんでいる。そして私もまた、彼女を哀れんでいる。


「ク……ハハハッ! アハハハハッ! そうか、君は私を救おうとしているのか。ならば……」


 術式発動。敵影捕捉。

 干渉空谷──黒闇。


「ならば、私を放っておいてくれよ」


 なぜなら、私は闇が心地よいのだから。わざわざ苦悶溢れる光の世界へ引き戻されるのは御免だ。

 魔力が彼女の首元を捕捉し、闇の刃が飛来する。


「光よ、ツイルーン!」


 光魔術の障壁によって弾き返される。想定済みだ。

 嗚呼……しかし光は強いな。我が子のように一体化した闇がこうも容易く弾かれるとは。


 右手が痺れる。ツイルーンは一定の拘束力を持つ光魔術。ただちに邪気で身体を再生し、次なる一手を。


「ファローリィ!」


闇炎(ガンドジマノフ)


 真正面から放射状に迫った光子線。闇の炎を纏って相殺。

 ……熱い、なんという熱さだ。全身が焼き焦がされるように光が沁みる。魔物側の気分を味わうのもたまには悪くない。


「お兄様、もうやめましょう。争っても意味はない」


「ああ、そうだ。争う意味はない。君が退いてくれれば全て終わるのだよ」


「拒否します。間違っているのはきっとお兄様だから」


 知っているさ。世界の大部分から見れば私は大逆の徒。まさしく英雄たる彼女が退く訳もなし。

 光と闇は互いに進み、鬩ぎ合い……やがてどちらかが消滅するのだ。

 さて、消えるべきは……


「もういい。君といつまでも争っている暇はない。故に終わらせようか。干渉空谷──『天覆魔業』」


 魔力を極限まで高め、最大の闇を。我が暗黒でソレイユを覆い尽くす。

 全身全霊、魂を賭して……天魔の全てを地へ降ろそう。両腕より逆巻く黒き波動が再び地を染め、天へと舞い上がる。赤黒い空すらも真っ黒に染め上げ、視界が機能しないほどに暗黒が満ちた。

 心地よい。きっとユリーチにとっては息苦しいのだろう。


「……!」


 ユリーチは咄嗟に身構え、彼女もまた全霊の魔力を駆動して術式を用意。

 これほどの闇を展開すれば無理もない反応だろう。全ての闇を払い穿たんと、鋭利な光の波動が彼女を中心として広がる。


 ──そうだ、私が求めていたものだ。

 君の光はきっと……


 ~・~・~


『ユリーチの光はひどく忌まわしい』

  ユリーチの光を愛していた。


『小さい頃からずっと疎ましく思っていて、決して近寄れず、いくら手を伸ばしても届かない劣等の象徴』

 小さい頃からずっと羨ましく思っていて、きっと自分も彼女のような魔導士になれるのだと勘違いしていた。


『「ああ、消えてしまえばいいのに。私を取り巻く光など全て消えれば良い。どうして……どう足掻いても手の届かない美しいモノを見せ続けるのだ」』


『いつの日か。私はあの眩い景色を越えようと誓った。炎と水の魔術しか使えない愚才であろうとも、天に選ばれた彼女を越えてみせる。──などと、哀れな願いを抱いていたが』

  彼女は天才だ。私とは大きく異なり、人々に愛される運命を持つ。見よ、彼女の周囲はみな笑顔で……私の周囲には誰も居ない。彼女はきっとこれからも世界を守る希望となるだろう。


『見よ、この崇高なる力を。天より授かりし魔の力を。偉大なる破壊の神より、私は闇を授かった。この力を以て世界に復讐しよう。私を無能と蔑み、不要と断じた世界に対して』

  見よ、この悍ましい力を。宿業に縛られし魔の力を。忌避すべき破壊の神より、私は闇を植え付けられてしまった。この力を振るってはならない。私はせめて、最後まで誇り高きナージェントの一員でありたい。世界の希望となるユリーチの障害にはなりたくない。



『私とユリーチは血すら繋がっていない赤の他人。何を躊躇う必要があるのか。殺せ、殺せ、闇へ沈めてしまえ。この力さえ在れば彼女を屠り、世界を闇へ沈められる……!』

  私とユリーチは血が繋がっていないが、たしかに家族として過ごしてきた。断じて他人などではない。呑まれろ、呑まれろ、光へと消えてしまえ。この力ですら到底彼女を越えられるとは思っていない。世界は彼女が守るのだ。




『闇よ、ああ闇よ。英雄を屠れ。闇は全ての光明を呑み込もう』

 光よ、ああ光よ。彼女を英雄としてくれ。闇は光明にて焼き焦がされるが摂理。



『「だから……私の愛おしき妹よ、君が英雄となるために。私という汚物を歴史から抹消し、明るい未来へ君が飛び立つために……」』




『「私を殺せッ! ユリーチ・ナージェントッ!」』

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