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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
17章 真実審判剣グニーキュ
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27. 魔導の徒

「アリキソン殿、お気をつけて!」


 部下から激励を受け、アリキソンは戦闘機に乗り込む。

 駆動音を立てながらゆっくりと浮上する機体に揺られて、次第に遠くなる地を見つめていた。登山部隊と麓で援護する部隊も動き出したようだ。


 通信を起動し、アリキソンの戦闘機を追尾する四名の騎士に指令を出す。


「聞こえるか。魔磁誘導に従い、魔王城へ向かう。一番機へ追従を」


 暗雲立ち込める空を切り、闇の中を進む。風の唸り声が鳴動する。

 電子地図に狂いはない。衛星との信号も一致しており、五機ともに順調に魔王城へ接近中。そして数分進むと、黒曜を思わせる暗黒の城が見えてきた。


「目標着地地点を捕捉。敵影なし、異常なし。着陸する」


 ──やはり奇妙だ。アルスの言っていた通り、静かすぎる。

 相手は既にアリキソンたちの動きに気が付き、敢えて城に誘い込もうという魂胆か。いっそ高出力レーザー砲を打ち込んでやろうか……とも思った彼だが、流石に魔結界が張られている。


 問題なくサイレンサーを起動しつつ着陸する。

 機体から降りて地へ足をつけた時、形容できぬ悪寒がアリキソンの背筋に走った。


「隊長、やはり敵影が見せませんね。突入しますか?」


 正面に聳える巨大な門扉を見上げる。気味の悪い装飾だ。


「いや、四名はここで待機。俺が単身で様子を見てくる」


「い、いえ! それは危険です! 隊長ではなく私が最初に……」


「……いや。問題ない」


 部下の進言は正しい。アリキソンは作戦上重要な戦力。

 最初に罠にかかって命を失えば、敗戦が濃厚になる。合理的な判断を下すならば、部下の一命に先陣を切らせた方がいい。

 しかしそんな非道な手段は、彼の良心が許さない。良心ではなく傲慢か……と彼は自嘲する。


「ひとまず開門する。下がっていろ」


 見上げるほど巨大な門扉は、魔力を注ぐことによって作動する。外形から内部構造と使われている建築技術も分析済みだ。

 魔道具の放出砲を起動し、外縁部に注力する。アリキソンの持ち前の魔力は少ないので、こういった場面では使用すべきではない。


 巨門が鈍い音を立てて開いてゆく。同時に身体の内側から魔力を引き出し、神経と身体能力を強化。どのような攻撃が飛んで来てもいいように雷速で動けるようにしておく。


 ──そして、扉の奥に待ち受けていたのは……


 ~・~・~


「報告します! 山岳の洞窟より、無数の魔物が出現! 地上へと向かっています!」


「総員、迎撃準備! 地上の援護部隊に通信を送れ!」


 同刻、アリキソンが扉を開いたタイミングで登山部隊に襲撃があった。

 山々の洞窟に潜んでいた影魔族や魔物が一斉に飛び出し、攻勢に出た。しかし魔力源・邪気源の感知には引っ掛からなかったため、なんらかの手段によって探知を防いだものと思われる。


「…………」


 アルスは冷静に状況を探り、自らが向かうべき場所を判断する。一斉に開示された魔王軍の戦力。

 本丸にしては規模の小さい軍勢だ。西側に魔力人形と思わしき魔力、北側に魔物と思われる邪気、東側に魔族と思われる魔力反応。彼は瞬時に無数の気配を読み取り、即座に麓へ向かって逆戻りした。


 南、麓の付近に爆発的な邪気が迸っている。

 先日ルフィアを襲撃したカラクバラの複製体に近い魔力が、数えきれないほど観測できる。魔王の反応は──ない。


 おそらく魔王城の扉が開け放たれたことにより魔力を感知できるようになったのだろうが、あの城はもぬけの殻だ。この戦場のどこにも、少なくとも百里以内に魔王は存在しない。


「おそらく魔王軍はカラクバラの複製体を無数に投入し、麓から山を登った軍を掃討するつもりだったのだろう。何のセンサーにも邪気が感知されなかったのは……特異な術を以てして感知を防いだか、そうでなければ転移でもしてきたか。この数の複製体を潜ませるにはかなりの空間を要することを考えると、転移説が妥当か?」


 転移。それは現代の人類の科学力では不可能とされている。

 しかし神族の持つ特質の降臨(ガルアード)も、ある種の転移と言える。神気を媒介とすれば不可能な技術ではない。或いは無限の可能性を秘めた異能によるものか。


「麓にはソレイユ軍が駐屯していたな。彼の国の技術力は不明瞭だが、はたして防ぎ切れるかどうか……」


 ~・~・~


「星冠導師、邪気反応です。数……百。単体規模……高度魔族級。目視による確認によると、先日ルフィアレムを襲った妖狐個体と同一のものであります」


 観測員から報告を受けたソレイユ王国の魔導星冠、リリス・アルマは冷静に分析する。


「ふむ、古の魔王の複製体ですか。分析によれば複製体はカラクバラの本体の十分の一にも満たない力量だそうで。やはり毛から生命体を複製する程度では、十分な再生はできないようですね。わが国の魔術を以てすれば可能ですが」


 遠方より、数多の黒き影が迫っている。あの一つ一つが邪竜に匹敵する力を持ち、その数が百。

 一国すら容易に滅ぼす戦力であろう。これが魔王軍の最強戦力という訳だ。


 しかしリリスは戦慄すべき戦況を見ても、眉一つ動かさず。


「対災厄防御術式を……いえ、それは使う必要はありませんね。対厄滅防御術式を展開しなさい。我らが魔導は不滅。いかなる秩序をも弾く結界を、ルフィアの文明へ見せてあげなさい。バランスブレイカーで蹂躙するのはあまりよろしくないかと思いますが、流石に出し惜しみはできません」


 彼女の号令に従って、天と地を複雑怪奇な紋様が覆い尽くす。

 ソレイユの正規魔導士たちは一様に魔力を展開し、ひたすらに術式を編み続けた。迫り来る妖狐の群れに恐れをなしていたルフィア軍は、怯むことなく術式構築を続けるソレイユ軍に圧倒される。


 間も無く、妖狐の軍勢と連合軍が衝突する。

 妖狐たちは全てを焼き尽くす邪悪の炎を尾から迸らせ、眼前の敵軍を粉砕せんと接近。


「今です、発動しなさい!」


 刹那、世界を遮断するかのように光の壁が天へ立ち昇る。

 瞬時に形成された結界は、百の妖狐の炎を受けても罅割れることすらない。


 無敵。その単語が呆然と様子を眺めていたルフィア騎士の頭に浮かんだ。


「これこそ、魔導王が壊世による滅びの魔手から国を救う為に作り上げた術式。その名を対厄滅防御術式。あの狛犬どもなど恐るるに足らず。さて……次は私の魔導をお見せしましょうか」


 リリスはくるくると白い髪の毛先を巻きながら、もう片方の腕で魔力を練った。

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