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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
第3部 12章 天の守り人
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14. エスカルゴの混迷

 帰還したルカたちから、ナバ高地での一件を聞かされたイージア。

 島でのATとの遭遇といい、リフォル教の活動が気掛かりだ。


「なるほど……やはりギリーマを逃がしたのは間違いだったか。しかし、皆が無事でよかったな」


「フッ……我がいなければどうなっていた事か……」


「いや、ルカ師匠寝てましたよね」


 サーラが何気なく聞き捨てならないことを言った。

 まさか戦場で寝ていたのだろうか。ルカのことだからあり得る。彼に対するイージアの信頼がまた一つ下がった。


「それでイージアよ。この島に何も異変はなかったか?」


「……ああ。問題ない」


 ATとの邂逅は伏せておく。

 これはイージアだけが背負うべき問題だ。正直言えば、今こうして島に留まっている時間すら惜しい。

 一刻も早くリフォル教に関する情報を集め、ラウンアクロードの居場所を突き止めなければならない。しかし、ATが秘匿する存在をそう容易に発見できるものか……彼は訝しんでいた。


 もはやラウンアクロードの傷は癒えただろう。

 百年の時を経て、彼の焦燥は昂っていた。


 ~・~・~


 今日も私はフェルンネ師匠の厳しいような、ムズムズするような試練を耐え切った。

 師匠曰く、魂があーだこーだ。そんなに難しいことを言われても分からないんだけど、今は無心で訓練してれば良いらしい。

 アパートの外へ出ると、イージアがいた。


「あえ? イージア、どっか行くの?」


「ああ。リフォル教に関する文献を集めに、楽園の図書館へ」


「アタシも今日の訓練終わったから行くよ。新しい本読みたいし」


「別に構わないが……ゼロみたいに一日中訓練しなくて良いのか?」


「アタシはあくまでゼロに巻き込まれて修行することになっただけ。そこまで根詰めて訓練しないよ。何事も休暇はだーいじ」


 もちろん、私にだって強くなりたい気持ちはあるけど……焦り過ぎてもダメだと思う。

 神能だって開花していない。もしかしたらゼロと半分に分けたから開花が遅いのかな。

 分かってるんだ、他の六花の将よりも活躍できてないっていうのは。たぶんゼロはその事実に焦っている。でも、一朝一夕じゃ力は身につかない。


「では行こうか」


 あれ、でもどうやって行くんだろう。

 流石に水流を操って楽園まで飛んで行くのは難しい。ゼロを連れて行くわけにもいかないし……


「……そうか。君は一人だと長距離は飛べないな。私が背負って行こうか?」


「えー……それは恥ずかしい」


「なら、私が君を楽園まで吹き飛ばそう」


「え、それはもっと嫌」


 というか、世界の端にある楽園まで吹き飛ばすって何?

 私ミンチになりそう。


「……受贈(リンヴル)──ゼニア。神剣ライルハウト」


 イージアは困った様に悩んでから、一本の剣を生み出した。

 光に包まれた神々しい剣だ。眩しくて思わず目を逸らしてしまう。

 彼が剣を天へ振りかざすと……


「わわっ!? 浮いたあ!」


「いつものように飛ぶ感覚で身体を操ってみるんだ。勇気を出して」


「翼もないのに飛ぶわけな……飛んだあああ!」


 一体何が起こってるのか。

 多分あの剣の力なんだろうけど……相変わらずイージアには謎が多い。


 ~・~・~


「ほら、リフォル教を調べられそうな文献だ。まあアイツらを調べたところで意味があるのか分からねえが……」


 ウジンは本の山を長机に置く。

 イージアはそれらをひとつひとつ調べる腹積もりだ。サーラも手伝おうとしたのだが、彼女はイージアが何を探そうとしているのかよく分かっていない。


「……サーラは好きな本を探していてくれ」


「うわ、なんか厄介払いされてるみたいな言い方じゃない?」


「みたい、じゃなくて厄介払いされてんだよ。ガキはあっち行っとけ」


 ウジンの言葉にカッとなりそうなサーラだったが必死に怒りを抑える。

 この男はこういう性格なのだと自分に言い聞かせて。


「……ふん。じゃ、アタシは哲学書でも見てくるから」


「哲学書ねえ……何が良いんだかおっちゃんには分かんねえや」


 サーラは哲学好きで、イージアは歴史好きである。ウジンとしてはまだ歴史好きの方が理解できた。

 哲学の良さが分からないのは神族ゆえの性なのだろうか。

 それはさておき。


「教皇のATはラウンアクロードを擁していると語った。彼らの狙いを突き止めることで、ラウンアクロードを用いて何をしようとしているのか分かるかもしれない」


「ほう。やはりリフォル教が……となると、調査するのはリフォル教の発端とか起源だな。さ、漁ってみようや」


 そして二人は書物の山を読み始めた。



 陽が傾きかけた頃。


「……イージア、そっちはどうだ」


「駄目だ。芳しい情報は見つからない。古代においてはリフォル教が害悪な宗教だと認識はされていなかったようだが……目的は不明だ。何時から魔神崇拝を目的とする宗教に成り果てたのかも分からない」


「俺がずっと昔……虚神として過ごしていた頃も、リフォル教なんて目もくれなかった組織だ。奴らの悪行が目立つようになったのは虚神の死後だしな」


 二人は頭を抱える。

 誰かリフォル教を昔から知る者が居れば良いのだが……


「ねーえー。まだ終わらないの?」


 サーラも集中力が切れたのか駄々をこね始めた。


「……そろそろ龍島に戻ろうか。ウジン、後は頼む」


「おう。おっちゃんの方でも色々と調べとくわ。何かあれば連絡する」


 イージアは調査をウジンへ託し、サーラと共に楽園を出る。

 飛翔する最中も、彼は思考を続けていた。

 彼の思考の糸を断ち切って、サーラが肩を叩く。


「イージア、エスカルゴの混迷?」


「……ん。その諺は……困難にぶつかった時に、人の感情は自分自身でも分からなくなるという意味だったか? たしかに、私は今どうすべきか分からずに途方に暮れている。どうすれば良いのか分からないよ」


「正しくは、その混迷を乗り越えてこそ成果が実るって意味だね。つまりイージアの悩みもいずれ解決するってこと」


「そうか。ならば君の言葉を信じよう」


 彼らは夕闇を飛翔しながら、他愛もない話に花を咲かせた。

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