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共鳴アヴェンジホワイト  作者: 朝露ココア
第1部 序章 灰色の因果
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プロローグ

 灰色の砂漠で、一人の少年が空を見ていた。

 水平線の向こうから茜色の光が射している。


「今から話をするよ。とても長い旅をしてきたんだ。ぜひ君に聞いてほしい」


 彼はこちらを見て、生気を失った瞳を細めた。

 この笑顔が愛おしい。


 長い時間は、彼の笑顔を奪ってしまった。

 光を奪ってしまった。


 それでも、今この瞬間に……彼は光を取り戻しつつある。

 少年は起伏のない声色で話し続けた。


「君と別れてから、つらいことの連続だったよ。何度もくじけそうになったけど、その度に手を差しのべてくれる仲間がいた。だから立ち向かえた」


 ――英雄。

 一言で彼を形容するならば、こうなのだろう。


 彼は英雄に近からずとも遠からず。

 私はこの人の弱いところを、たくさん知っていた。

 その弱さも今は潰れて、完全無欠に近い人になっている。

 そう進化せざるを得なかったのだ。


 代償として人間らしい心を失った。

 私はひとつ、彼に尋ねてみる。


『幸せだった?』


 彼は少し答えにくそうにしていた。

 しばらく沈黙してから口を開く。


「……ああ。苦難の中でも、楽しい思い出はたくさんあった。いちばん苦しかったのは、君に会えないことだったね。一度は君と再会することを完全に断念したんだ。それでも、友人たちがいてくれたからなんとか耐えられた」


『ごめんね……』


「君が謝ることはない。会えない時間が愛を育むというからね。憎しみすらも乗り超えて、すべてを愛することができるようになったんだ」


 彼はふっと息を吐いて、私の手を取った。

 あたたかい。うれしい。


 もう二度と、この手を離したくない。


「それじゃあ、聴いてくれるかな。僕が歩んだ、歪でまっすぐな物語を」


 私は瞳を閉じて、英雄譚に耳を傾けた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 昔話風のひらがなで書かれたプロローグは初めて見ました。色んな手法があるんですね。一番最初の話ってかなり重要で工夫が必要だと聞きます。参考になりました。
2021/10/13 10:26 退会済み
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