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8.揺るぎないS


 普通なら完全なるモテ期に突入しているわけだが、状況的にそんな感じではない。

 どう見ても、寄ってたかってからかわれている男子の図である。


 サナのことだ。

 その辺を感じ取っての男らしい、いや妹らしい行動を見せてくれるはず。


 何より隠れて様子を見ていたくせに、堂々とテーブルを叩いて威勢がいいのが何よりの――。


「んん? え、何? 誰……?」

「センパイってウチらのことだと思うけど、――ってことは、コウハイじゃん?」

「琴平のことをいじめてる……だって! え、ウケるんだけど」


 俺はちっとも面白くは無いのだが。

 しかしこの先の展開は、サナからとても頼りになる言葉が飛び出して来るはずだ。


 同じクラスの女子たちに告られ、詰め寄られている俺はここにいるぞ、サナよ。

 サナと一緒に昼に来ている女子が不安そうに見つめているが、サナならバシッと言ってくれる。


「後輩女子が何の用? もしかして、琴平を助けるとかって意味?」

「それなら全然、意味が――」


「そこの男の子をいじめるのは、センパイたちじゃないんですけど?」


 ――何だって。

 それじゃあ、誰が俺をいじめる。


「何言ってんの? この子、やばくない?」

 ――ヤバい。

 ――マジでヤバイと思う。


 やばいやばいと口をそろえる女子たちだが、俺を解放する気は無いようで身動きが取れない。

 それもそのはずで、周りから見ればハーレムな位置に君臨していて、右も左も女子ばかり。 


 ――とはいえ、名前を聞くほど興味の無いモブ女子たちに萌えるほど、俺は落ちぶれてもいない。


「そこのハーレム空間にいる男の子をいじめるのは、わたしの役目なんです!! センパイたちにその役目をさせたくありません! 今すぐ男の子を解放してください!!」


 やはりそうだったのか。

 サナが俺をいじめてくれるのか――いや、違うだろ。


 求めていた答えじゃないし、女子たちはもちろん、学食中がドン引いているじゃないか。

 それを計算しての発言なら、もはや手の施しようが無いぞ。


「アレ、琴平の何?」

「何と言われても……強いて言うなら、彼女のような感じかなと」


 正確には妹であって、付き合っちゃいけない禁断の関係だ。

 だが今は既成事実を作っておかないと、ただの変態野郎になってしまう。


「何だ、いるなら早く言えってば! ウチらがバカみたいじゃん?」

「えー、何か納得出来ないけど」

「琴平の彼女? ふーん? へぇぇ……年下ねぇ」


 ――などなど、にわかには信じがたいといった態度と表情を露わにしている。

 それよりも問題は、サナにいじめられる役目があるかどうかだ。


 しかしいじめるという言葉が効いたのか、女子たちは仕方なくといった感じで席から離れた。

 そしてこの場にぼっちにされた俺に対し、重大過ぎる発言をしたサナは黙々とランチを再開している。


 おいおい、放置プレイかよ。

 それとも、これが例のいじめプレイですか。


 ぼっちにされた俺の立場はどこへ行った。


「く、くそぅ……Sすぎるだろ、さすがに」

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