09 ゴブリン討伐成功
セーラはゆっくりと下山して行った。
途中、鋼発勁を全身に張り、集落の中央まで、のんびりと歩いて来た。
鋼発勁により、私に触れた物は全て、発勁で吹き飛ばされるのだ。
ゴブリンの注意をこちらに向ける為、パンパンと手を叩く。
全ゴブリンがこちらを振り向く。そして……。襲い掛かって来た。
ギャーギャーギャーと煩い。
『連撃発勁斬』と『纏絲発勁斬』の組み合わせで、足に組み付こうとする者、飛びかかって来る者を、腕を回し円運動と連撃発勁で血の海にしていった。肉塊があちらこちらに転がっており、又、逃げようとする者は指弾発勁で頭を粉砕した。叫び声さえ与えない早さで倒していった。静かな戦いだ。
見えるゴブリンはいなくなったが、小屋にいるのは闘気流波で確認している。又、まだゴブリンロードが出て来ていない。
小屋に隠れている、ゴブリンを指弾発勁で小屋を貫通させ、ゴブリンを倒す。闘気流波では、残るは1体のゴブリンロードしかいない事を流波で分かっている。
もう一度、パンパンと手を叩く。
やっと、小屋からゴブリンロードが出て来た。
『闘術発勁弾』
縮地で近づき、裏拳の『闘術発勁弾』を打ち込んだ。下腹から胸まで、大きな風穴が開き、ゴブリンロードは泡を吹き、仰向けにドンと、音と共に倒れた。練習相手にもならないと思った。
山に向かって、手を振る。ギルド長と子供達が下山して、討伐依頼証明個所を小刀で切り取っていく。
ギルド長が近づき。
「怪我はないか?」
「えぇ、ありません」
「ダンスのようだったぞ」
「多分、そう見えるでしょう」
本当はかなり手加減しているのだ。耳を狙わないようにするには細心の注意が必要だった。本来なら動かなく、闘気だけで滅ぼしていたところだ。
「これだけの魔物に1割も力を使ってないだろう」
「分かりますか」
「長年、ギルド長をやっているのだ、分かる」
「これはランクSにしても可笑しくないところだな」
「まぁ、報酬が多いに越したことはないですね」
「うむ、これから贔屓にするぞ、個別依頼が来たら、セーラを検討対象にしよう」
「ありがとうございます」
子供達がせっせと汗だくになりながら働いている。女の子も頑張っている。
しかし、服も顔も血だらけだな。教育上これでいいのか。これに嵌り、人殺しにならなければいいのだが。
孤児院に寄付でもしようかと思っている。
討伐依頼証明個所を取り終えたが、まだ終わらない。肉塊を一か所に集めて、火で燃やした。もう夕焼けだ。馬車の所に戻り野宿だな、これは。
セーラと孤児達は馬車で寝て、少年少女冒険者達は見張りになった。
少女のきゃーと言う悲鳴で飛び起きた。
馬車から降りて見れば、シルバーウルフの群れがそこにいた。
「みんな、馬車に乗れ」
子供達は急いで馬車に乗り込む。
飛びかかって来るシルバーウルフに手刀で『十字発勁斬』を喰らわす。
こういう接近戦は八極拳の腕の見せ所だ。
発勁と八極拳の組み合わせの『十字発勁弾』を繰り出した。足に飛びかかる、顔に飛びかかるシルバーウルフの連続攻撃は拳の『連撃発勁弾』を喰らわした、10頭程倒し、そして、シルバーウルフ達は退散していった。
又、来るかもしれないシルバーウルフに、私は寝ずの見張りをする事になった。
馬車移動中は私は寝かせて貰い、移動中の警戒はギルド長に任せる事にした。
突然起こされた。んっ! もう冒険者ギルド前に馬車が到着していた。
私も、密かに疲れていたんだわ。
子供達がギルドの換金所に向かい、換金して貰っている。女の子は10個程、男の子は30個も取っている子もいた。女の子は可哀そうなので、こっそり私の報酬を女の子に渡した。今回の依頼は疲れるだけで、報酬はゼロだったが良い経験になった。
翌日、早速ギルド長に呼ばれた。
「ランド海、沖合で船が大蛸に襲われる事案が発生している、討伐して来てくれ」
「討伐した蛸はどうするのでしょう」
「港に引き上げてくれないか」
「蛸は討伐しましょう。引き上げるのは、誰か違う人になりませんか?」
「じゃ、上級魔法師のレミを紹介しよう」
レミとセーラの運命の出会いはここから始まる。