08 孤児達とゴブリン討伐
翌朝、早朝から冒険者ギルドに行ってみて、賑わっていたので、ほっとした。
潰れたと思ったじゃないの!!
早速、右手の依頼掲示板を見る。あるある、一杯ある。
これが一番人気ね、ゴブリン集落の討伐。パーティーで30名を募集になっている。私はソロだから、関係ないわね。
これがいいかしら。オークの3体討伐。
依頼書を引きちぎり、受付に持って行く。
「すみませんが、ゴブリン討伐の人数が足りなくて、そちらの依頼にして貰ってもいいですか?」
「私、ソロなので、パーティーは組むつもりがないのですが」
「セーラさんはランクAなので、ソロを集めて、パーティーを組んで欲しいんですが」
「しょうがないですね」
「おーい、ソロ集まれ~」
大きな声で叫んだ。道場で鍛えた声だ。
少年、少女達がゾロゾロと集まって来た。10名程か。
これは、孤児院から来たのか?
衣服がボロボロの布で、棒を持っているだけだ。
生きる為に必死なんだな、目が真剣だ。
受付のお姉さんを見ると、頷いている。何とかしてあげてと言っているようだ。
はぁ、こんな役目があるんだ。
「いいですか、よく聞きなさい、私が倒すから、討伐依頼証明個所を取ってね。右耳だから分かったわね。こう倒れていたら。こっちの耳を根元から取るのよ」
みんな頷いている。
「貴方達が倒すのは禁止よ」
分かったら、返事をしてね。
「はい、分かりました」
「深追いは禁止、私より前に出るのも禁止よ」
「はい、分かりました」
「それでは討伐隊、準備いいか?」
ギルド長らしい人が大きな声で言った。
「馬車に乗り込め」
ゾロゾロと幌馬車に乗り込む。10名程の孤児は全員同じ馬車に乗った。
私も乗り込み、みんなの様子を伺う。こんなに今から張りつめていると、持たないと思ったのだ。
「眠りたかったら眠りなさい、先は長いから」
「はい」
みんな、眠り出した。張り詰めた緊張が解かれたかのようだ。
今の私は、最後の調整に入っている。転移の指輪と発勁で転移発勁をするのだ。
発勁を転移で飛ばすのは苦労した。まず最初は相手に魔法陣を描いて発勁を飛ばすのだが、これでは、時間が掛かり過ぎるのだ。
そこで考えたのが、暗器だ。魔法陣が描かれているビー玉の暗器を相手にぶつけ、ダメージを与える。そして、発勁を転移させる。ビー玉が無くなれば、指弾発勁でゴブリンの頭を破壊する事にした。
私の最終奥義は炯眼発勁だ。これはリミッターを外す事を言う。全力の『連撃発勁斬』等を発動させる奥義だ。この奥義は人には使った事はなく、7歳の時、山に1度だけ使い消滅したのを思い出す。
現在、指弾発勁の感覚を試して、馬車から草むらに打ち込んでいるのだ。子供達を守りながら、依頼部位を消滅する事なく手加減が必要なのは、今更ながら大変だと思っている。
ゴブリンは草むらの中、死体の中、地面の中に潜んでいる者もいて、侮れないのだ。闘気流波を使い、ゴブリンの位置を確かめる必要がある。闘気流波は闘術の1つにある闘気により、相手をさがす技だ。
馬車が止まった。目的地の村に到着したようだ。
村は村人が逃げたのか人の姿が見えない。村長1人だけ残っていたようだ。家の数は30軒程あり、合掌造りになっている。
ギルド長自ら来ていて、村長と依頼達成証明書の確認を取っている。
ギルド長が先陣を切り、誘導している。
山に登り、ゴブリンの集落を確認した。結構大きい。初見では100匹はいそうだ。ゴブリンの討伐を受けたのは結局20名程だ、10名は孤児で後の10名は少年達の2つのパーティーだった。ギルド長が来るのも無理はない。
ギルド長がやって来た。
「セーラどうだ?」
ギルド長が私の名前を知っている事にビックリした。
「私が、全員倒しましょうか? 1人だと侮って、全員掛かって来るでしょう」
「私が手を振ったら、山を下りて下さい」
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「多分、人質を盾にするかもしれないが、気にせず全滅してくれ」
「分かりました」