07 帝都
「面白い。買うのか? ハハハッ!」
「転移の指輪が欲しいですね。いくらで売ってくれますか」
「奪いに来る者はいるが、買いたいと言う者は初めてじゃ」
「そうだのう。大白金貨10枚で売ろう」
「では、ここに」
「ほう、金持ちだな」
「私を楽しませてくれた礼に、ただじゃ」
「魔界ではおもちゃみたいな物だからな」
「では、たまには遊びに来ますので。ここに魔法陣を付けて行きます」
「面白い、わらわも、そちの元に遊びに行かせてもらおう」
女性だったんだ! そりゃ卵を産んでいるからそうか。
「では、失礼しますわ」
「うむ」
洞窟を出た。あぁ~、転移って魔法陣が書いてない場所には、行けないのかい。
セーラは仙術の重力盤に乗り、帝都を目指す。はっきり言いますが、私は方向音痴ですので、あちこちと迷い地図も読めないのです、あるはずの都市がなかったりして大変です。よって人がいれば聞きます。
商人の御者、衛兵の人がいれば聞くのが1番だ。
「ランド帝都って、こっちでいいんですか?」
「あぁ、そうだよ」
迷いながら、やっとランド帝都に着きました。
さすが帝都、城壁が100メートルはあります。
城門前の列の並びも、凄いです。300名はいますかね。殆どが馬車で来ていて、道沿い迄続いている。
私も最後尾に並び、今迄の旅を整理する。
旅に出る事になった私は、師匠から、あかねさんを紹介された。冒険者になり、冒険者パーティーからクビにされ、森で盗賊、山賊を討伐して、金銀財宝をかき集め、エンシェントドラゴンロードに会い、3つの指輪を貰った。そして、今、ランド帝都で冒険者生活する為、ランド帝都の城門前で列に並んでいる。
う~ん、いい旅なのだろうか?
分かった事は、目的を持った方がいいと言う事だわ。
今の目的とは……。ない。最初の頃はお金を稼ぐのが目的だったが、それもなくなった。冒険者のランクSSSを目指してみれば? はないな。ランクSSSは英雄クラスだと聞いたことがある。そんな物になりたい訳ではない。道場を開くのはどうだろうか? まだ10歳だからな~。先の話だわ。
私は、このまま流されて生きて行くのね。
と、考えている間に衛兵の前迄、来ていた。
冒険者ギルドカードを見せ、門を通過する。
前の町の倍の大通りがそこにあった。左右に店が立ち並び、そして、真ん中あたりに噴水があり、地平線の向こうには屋敷があり、その向こうの丘に城がある。
大通りを歩きながら、剣と盾の看板を探す。多分、大通り沿いにあるはずだわ、裏手通りにあるほど、冒険者ギルドは落ちぶれてないはずだわ。
大通りの突当りに来てしまった。無かったのだ。
通り沿いの人に聞いた。裏手の通りにあると……。
裏手に行ってみた。あった……。
中には大勢の人で賑わっているはず。中に入ると、静寂さが漂っている。誰もいない、帝都の冒険者ギルドは潰れているの?
依頼掲示板には、何も張られていない。こ、これは本当か。
受付には誰も立っていない。
「すみませ~ん、すみませ~ん」
大声で呼んでみた。
誰かが。『はい』と言っている。人はいるんだ。
「すみません、本日は休館日です」
「冒険者ギルドが休日ですか?」
「はい、コンプライアンスに引っかかるので週1は休みです」
帝都、恐るべし。
「神殿の方から、休日を取るように言われていますので」
「わ、分かりました、明日にまた来ます。では、お薦めの宿屋はありますか?」
「このから出て左の通り沿いに『トン汁』と言う宿屋がお勧めです」
「わかりました。休みのところ、ありがとうございます」
『トン汁』はすぐ分かった。ブタの看板だ。中にはいると、猫族が受付をしていた。そして、いかにも、宿屋って感じだ、左側は食事をする丸テーブルが並んでいる。受付の横は階段になっており、宿泊の部屋があるのだろう。
「泊まるかにゃ」
「泊まりますにゃ」
「馬鹿にするにゃ」
「2泊するにゃ」
「金貨2枚だにゃ」
「嘘つくにゃ」
「大銅貨2枚にゃ。306だにゃ」
大銅貨2枚を払い、鍵を貰った。
「食事がしたいにゃ」
「そこのテーブルに座るにゃ」
テーブルに座ると、先程の猫族がメニューを持って来た。
「決まったら、そこのベルを鳴らすにゃ」
「お薦めは何だにゃ」
「オークのステーキ定食だにゃ」
「それでいいにゃ」
食事を済ませ。大銅貨1枚を払い、受付横の階段を上がる。
部屋はベッドと小さい椅子とテーブルがあるだけだ。大銅貨1枚は格安だからしょうがないか。