06 ドラゴンとの遭遇
セーラは荷造りをする。ここには約1カ月お世話になったが、冒険者の難しさも分かって来た。パーティーとの相性、魔物との相性もあり、ソロで冒険した方が気が楽な事が分かった。これだけでも収穫と思いたい。
ランド帝国に行くには森を超えるか、回り道をするかの2択しかない。
今後の為にもお金も欲しいので、森で魔物を倒し、ギルドで換金するか、空を飛んで直にランド帝国に行くか迷う。どちらにしても、回り道する気はない。
あかねさんに聞くと、森は危険だとか。山賊、盗賊に襲われる可能性が高いと言っていた。これは森に行くしかない。山賊、盗賊から金銀財宝を奪うのだ。悪党から奪うからいいよね。
都市を出て、森に向かう。途中、馬車の御者の人から、森に近づいてはいけないと言われながらも、森に入って行く。
森の中は鬱蒼と茂った、木々で、光が届かないのだろう。暗い中を歩いて行く。
盗賊、山賊だから、殺してもいいだろう。久々に全力発勁を出そう。そして数人生かして、アジトに連れて行ってもらおう。
んっ! 早速来たか。
「おい、ガキ。持っている物、全部置いて行きな」
マイナーな言葉だな。生かしておくつもりもないでしょう。10人はいるわ。
『浸透発勁斬』
「……」
首を掌底の空圧で吹き飛ばした。後ろのめりで仰向けに倒れた。
『十字発勁斬』
「……」
剣を振りかぶる敵に、懐に入り、八極拳の肘発勁をぶち込んだ。上半身が無くなり、ゆっくりと倒れた。
『連撃発勁斬』
3人以外に全力発勁斬をかまし、胸を横殴り、全員の胸を真っ二つにした。
声も出ない一瞬の事だった。殺された事も分からなかっただろう。
「そこの3人、アジト迄、案内して」
「あぁ、いいぜ。八つ裂きにしてやる」
アジトには30人の盗賊がいるので、このガキを嬲り殺してやる。
「ここだ、入れ。おい、ガキをつれて」
ビシュ。3人の首を手刀ではねた。首から血が噴き出して、後ろに倒れた。
『乱舞発勁斬』
セーラは盗賊に近づき、回転しながら、発勁を打ち出す。何人かの盗賊は逃げ。他の盗賊は、セーラの発勁の餌食となった。肉の塊がそこら中に転がり、血の海になっていた。
セーラが発勁を習いたての頃は、手を真直ぐにして打ち込んでいたが、それが手を添えるだけで、発勁を打てるようになり、次に気だけで発勁を打てるようになった。そして最後は見ただけで発勁が出来るようになり、それを制御して生きて来たのだ。この苦労は師匠も知らない事だ。
金銀財宝は結構あり、当分暮らして行けそうだ。
ここの森は本当に盗賊、山賊が多い。又、山賊と出会った。さっき盗賊に会ったばかりだ。これはうざい!!!
衣装が血だらけになっているわ。セーラは内発勁に切り替えた。
『纏絲内発勁連弾』
刀、剣、棍棒を振りまくる山賊に円、半円で内発勁を繰り出す。今度は血飛沫を浴びなくて、2人を残し、又、アジトに連れて行った。
これを何度も繰り返し、2カ月でやっと森から出られた。本来回り道なら半年掛かるところを、2カ月で討伐した事になる。金銀財宝は有り余っている。一生遊んで暮らせる程だ。
セーラとしては、人と全力で戦える場所だと認定した。また、来よう。
森から抜けても、後1カ月は帝都まで掛かる。縮地を使ってもいいが、のんびり行こうと思っている。
んっ!!! 何か飛んでくる。あれは……。ドラゴンか。帝国のドラゴンか? そう言えば、帝国にはドラゴン飛行隊があると聞いたことがある。だが、ドラゴンの背には人は乗っていなかった。
上空のドラゴンを見ながら、ほのぼのですな~。と思いながらのんびり歩く。
優雅に飛んでいたが、突然、私の目の前にドラゴンが降り立った。
「付いて来い」
ドラゴンがしゃべった!!! 驚くよりも付いて行かなきゃ!!!
セーラは仙術の重力盤に乗り、ドラゴンを追う。
どこまで行くんだ? 山を幾つも超え、盆地が見える所まで来た。そこにドラゴンは降り立った。私も降り立つ。
ドラゴンが歩く度に地震が起きる。100メートルはある巨体なのだ。エンシェントドラゴンかな? ドラゴンロードとか。
巨大な洞窟に入って行く。洞窟と言えばひんやり寒いのだが、ここは熱いのだ。ドラゴンのせいか?
付いて行く事、10分程で、行き止まりになっている。
「わしは、お前を千里眼で、ずっと見て来た。そして確信した。お前なら出来ると」
私に何が出来るのだ? あれこれ考えたが出て来ない。
「何をするのですか?」
「そこに3つの岩がある。中には私の卵が入っている。岩だけを破壊してくれ」
「なぜ、そんな事に?」
「メデューサが魔界よりやって来て、戦った。倒したが、卵はこの有様だ」
「卵を取出してくれたならば、3つの願いを叶えてあげよう」
これは、慎重に岩を破壊しないといけないぞ。
「ところで、あなたは、ドラゴンロード?」
「わらわは、エンシェントドラゴンロードじゃ。わらわでは、卵を破壊してしまうので対応出来ない」
「では、何度も岩を削る事になりますが、いいですか?」
「いいだろう」
「いきます『爆裂発勁弾』」
『爆裂発勁弾』は物質の表面を削る発勁だ。
これ、ノミで削った方がよくありませんか?
『爆裂発勁弾』
卵が見えて来た。岩の質感が分かった。
最後の卵に『爆裂発勁弾』を繰り出し。3つとも無事、救出した。
ふ~っ。緊張した~。
「ありがとう。メデューサの石化は、気でしか削る事が出来ないのだ」
「それでは3つの願いをしよう。なにがいいのだ?」
「それでは、回復のリングを下さい」
「ほう、ではこれを上げよう」
「このリングは絶対に死なないリングだ、反対に死なせてくれないリングでもある」
「回復の効果はなんでしょう?」
「他人に対する効果はない、あくまでも嵌めている者だけに効果がある。四肢の欠損、部位欠損も治る」
「それでは、2つ目は私は状態異常耐性のリングを嵌めていますが、もっと強い状態異常耐性のリングを下さい」
「では、これを上げよう」
「今、嵌めているリングの100万倍以上は強いリングだ」
「最後はなんじゃ」
「最後は考えておきます」
「なかなか、賢いな。年に伴い。欲しい物が変わるからな」
「このリングは壊れたりしないのですか?」
「壊れる事はない。魔界で最も固い鉱物で出来ているのだ」
「リングを買う事は出来ないのですか?」