05 お前はクビだ
セーラは現在、都市の城門の列に並んでいた。
セーラは黙っている時はいつも、頭の中で対戦相手がこういう相手だったらと、シミュレーションしているのだ。
セーラの弱点は石化、毒、麻痺、魅了等の状態異常耐性を持っていない事と、回復系のスキルを持っていない事だ。これは、アイテムで補うしかないが、アイテムは高いのだ。打撃、魔法は全身に発勁を纏う事で防げるが。状態異常耐性がないのが弱点だ。
今回の収入で買えるか、お金が心配だ。アイテムを売っているお店は知っている。タカセ村ではお店に入っては、欲しいな~といつも思って、アイテム屋を出るのだ。
衛兵にギルドカードを見せて。都市内に入る。
セーラはリーダーのパーティーに入る事になった。パーティー名は『双肩の刃』というパーティー名だ。
冒険者ギルドに入って、リーダーは馬車の中で書いていた報告書と、依頼達成証明書を一緒に提出、報酬を貰っている。
「セーラの報酬は大銀貨5枚だ、後は他にメンバーで分ける」
こちらのお金の単位は以下のようになってる。
小銅貨-------10モレ
銅貨-------100モレ
大銅貨---1000モレ
小銀貨-------1万モレ
銀貨-------10万モレ
大銀貨---100万モレ
金貨---1000万モレ
大金貨-------1億モレ
白金貨-----10億モレ
大白金貨-100億モレ
状態異常耐性のリングは大金貨1枚だ、先は長いぞ。
アカネさんと衛兵の人に借金を返し、食堂屋の家賃として、銀貨1枚をシェフに渡した。
夜は打ち上げがあるのだ。『豚の頭』と言う店で行うみたいで、道場での正装を着て行くつもりだ。道場の正装は紺色のロングジャケットで白のワイシャツ、ズボンも紺色だ、そして師範代のネックレス、これが道場の師範だけが、着る事が出来る正装なのだ。
アカネさんに『豚の頭』の場所を教えて貰い。その場所に向かう。外はすっかり夜更けになっており、ひんやりした空気で体がゾクゾクしてくる。
『豚の頭』の場所は直ぐ分かり、もはや探さなくてもいい位にメンバー達がはしゃいでいた。
「お邪魔します」
「おう、今夜の主役の登場だ」
「それでは自己紹介するぞ」
「俺がリーダーのゼロスだ。武器は大剣だ」
「私はバフ使いのシルビアよ、耐性強化は任せて」
「俺は盾のマスレだ」
「私は、ミリアよ。斥候をしているわ」
「私は、セーラです。体術が得意です」
「それでは、好きなだけ飲み食いしろ」
ミリアが話しかけて来た
「セーラの道場では、みんなセーラ位、強いの?」
「私は、道場では師範代で、師匠に育てられたんです。元は貴族です」
「貴族。やはり佇まいが、只者ではないのが分かるな」
「そうね、御淑やかと言うか」
「セーラに弱点はあるの?」
「状態異常耐性がないのです。シルビアさん、宜しくお願いします」
「任せてよ、全耐性強化しちゃうから」
「心強いです」
そんなこんなで、4時間が過ぎ、お開きとなった。
翌日、早朝、冒険者ギルドに行くと、メンバーは丸テーブルに座っていた。昨日飲み過ぎたようだ。
「あの、掲示板を見なくていいのですか?」
「あぁ、俺らは、個別依頼があるから、依頼掲示板を見る必要がないんだ」
げふっ! と、ゲップをして、げんなりしている。
「本日はどうするんですか?」
「依頼はあるが、やる気が出ない」
「依頼を見せて下さい」
「これだ。ワイバーン討伐の依頼だ。15体もいるそうだ」
「セーラなら、どう戦う?」
「そうですね。『仙術発勁斬』で戦いますね」
「それは何だ?」
「仙術の重力操作で空を飛び、ワイバーンに『仙術内発勁斬』で倒します」
酔っぱらっているのか、空を飛ぶ事に動揺しないようだ。
「剣も盾も斥候も必要ない。セーラとシルビアでやって来て貰えるか?」
「シルビアさん、どうしますか?」
「う~ん、ワイバーンの攻撃は火だけだから、セーラちゃんだけでいいと思うわ」
みんな、やる気がないようで。
「では、行って来ます」
セーラは受付に行った。
「セーラは元気いいな」
「お茶しか飲んでないからね」
「わりっ、トイレ行くわ、ゲロ吐きそうだ」
「セーラちゃん、大丈夫かしら」
「セーラだけしか戦えない、俺らは邪魔になるだけだ」
セーラは任された事が嬉しく、早く依頼を達成したかった。
セーラは全力縮地で、目的の場所に到達し、村長に依頼書を見せ、ワイバーンがいる場所を教えて貰っているところだ。
「女の子1人で大丈夫かのう」
「リーダーに任されましたので大丈夫です」
「では、気を付けて行って来て下さい」
「はい、行って来ます」
セーラは仙術の重力盤に乗り、山の方へ、空を飛んで行った
あっいた!! ワイバーンが無数いるぞ、15体? いっぱいいる!!
ワイバーンの鱗は固く、発勁の腕の見せ所だ。『浸透発勁斬』で、ワイバーンの体勢を崩し、掌底で『纏絲内発勁斬』を打ち込んだ、それを繰り返す。
「喰らえ! 『纏絲内発勁斬』」
ワイバーンがどんどんと落下していった。
手前のワイバーンで見えなかった。後ろのワイバーンの尻尾で地面に叩きつけられたのだ。
「くそっ、『全身発勁壁』」
10メートルは地面が掘られたか、そこで止まった。
地面に発勁を打ち込んで、その反動で、緩和させたのだ。
気が緩んだか、慎重に倒さないといけないな。
2時間で、67体のワイバーンを倒した。
空間収納鞄に、全部入るかどうか心配だったが、入れる事に成功。
村長に討伐依頼書に押印してもらい、冒険者ギルドに全力縮地で戻る。
5日の行程が1日で終わらせる事が出来た、リーダーに褒めて貰えそうだ。
「お前はクビだ」
はいっ! なんておっしゃいましたか? リーダー。
「お前はクビだと言ったんだ。この町から出て行け」
「なぜです?」
「俺らは俺らの戦い方がある、お前の戦い方は不要なんだ」
「そうですか、分かりました」
なんとなく思う事がある。みんなで飲んでいても、私だけお茶で、一緒に騒ぐ事も出来ず、10歳なので、気も遣うだろう。戦闘も気を遣う人がいると邪魔になるのは分かるし、私1人で魔物を全部倒せるのも、連系が必要なくなり、チームの存在も無くなるのだ。
「それでは、失礼します」
冒険者ギルドを出ると、心は沈んでいるのに空は青空だ。アカネさんに相談しよう。
67体のワイバーンを倒した事で、私はランクAになったようだ。そして、依頼料と全部のワイバーンを引き取って貰い、換金すると、金貨1枚になった。
アイテム屋に寄り、大金貨1枚で状態異常耐性のリングを買った。そして、あかねさんのいる食堂屋に行き相談しよう。
「そう、クビになったのね」
「はい、どうすればいいでしょうか? パーティーはこりごりです」
「ソロもあるわね。ランド帝国でもランクAだからソロでも仕事は出来るわ」
「分かりました、それではランド帝国に行ってみます」