02 師匠の手紙
セーラはいろいろな物を見たい衝動に囚われただけで、これと言った行く場所がない。ただ、地図を見て海を見て見たいと決めていた。
取り合えず、師匠の手紙を思い出し読んでみた。
師匠の知人の場所が書いてあり、行く場所がはっきりと決まった。偶然に海側の町のようだ。
地図を見ながら、歩く。歩く? ここでも『縮地』の練習が出来るじゃないの?
「『縮地』」
何度も『縮地』を使い、何回で目的地に着くのか数える。
398回目で目的地に着いた。
城壁は30メートルはあり、大きな城門が2つあり、1つには誰も並んでいない。列は100名程が並んでおり、子供連れもいる。
城壁が高いわ!! ホゲーと上を見ながら、列に並ぶ。
だんだんと自分の番になるに連れて、緊張してきたぞ! 何て話せばいいんだろう。もしかして、捕まったりする? お金がいる?
自分の番になった。
「あっあの! 入れますか? タカセ町から来ました」
「身分証明書はあるかな? お嬢ちゃん」
「ないです」
こんな、おどおどした。しかも子供が1人で旅をしているのだ。ビックリされているのが分かる。10歳なのだからしょうがない。
「銅貨3枚だけど、あるかな?」
「ないです。あの、食堂をやっている、アカネさんに会いに来たんです」
「あぁ、そうなんだ。じゃ、後でアカネさんに貰って来てね」
なっ! なんとかは入れたぞ……。知らない人との会話は緊張するな~。
都市に入ると、目の前に大きな通りがあり、地平線が見える。左右には店が立ち並び、地平線の向こう側に、白い城が建っているのが見える。あれがこの町の領主の城だと分かる。
食堂って、どこにあるんだ? フォークとスプーンの看板だよね。
衛兵さんに聞いとけばよかったよ。
左右を確認しながら、大通りを歩く。フォークとスプーンの看板はあったが、アカネさんの食堂か分からない。取り合えず入って、いなければ聞けばいいか。
食堂に入ると、丸テーブルが沢山あり、カウンターの向こうにシェフが料理を作っているようだ。客は半分しか入っていないのが分かる。
メイド服を着た、私と同じ位の年の、女の子に聞いてみた。
「あの、アカネさんっていますか?」
「アカネさん? アカネさんなら、ここ出て、右に100メートル程の食堂屋にいるよ」
「ありがとうございます」
えっと、ここから、100メートル程ね。あったわぁ! フォークとスプーンの看板。
中に入ると、先程の食堂屋より、こじんまりとしている。四角テーブルが5つに、カウンターがあり、シェフがシェフ帽子を被り、働いている。席は満席だ。
シェフに聞いた。
「あの、アカネさんはいますか?」
「あぁ、いるよ、そこの暖簾の向こう奥に座っているのがアカネだよ」
暖簾を潜り、奥に座っている人に話しかけた。
「あの、アカネさんですか?」
「そうだけど、誰?」
アカネさんは40後半あたりの人で、エプロンをしている。髪は茶色でパーマが掛かっている。目も茶色で、少し警戒している目だ。
「あの、師匠から、手紙で行く場所が無いなら、ここに行けと書いているんです」
「師匠って、タカセ町で道場をやっているじいさん?」
「そうです」
「あれは、私の父だよ」
「あんたはセーラだね、父からの手紙で知ってるよ」
「私、旅に出たのはいいのですが、どこに行けばいいのか分からなくて」
常識がない子と思われようが仕方がないのだ、だけど、この衝動は止められなかった、あの狭い道場から世界をどれだけ憧れていた事か。
「あんた、目的もなく旅に出る人なんて、いないよ」
「あっ! そうだ、衛兵さんに銅貨3枚いるんです。貸してくれませんか?」
「あんた。お金もなく出て来たのかい? 呆れたね」
「はい、思い立ったら、突っ走るタイプなんです」
「あんた、職はどうするんだね」
お金はやっぱりいるよね。私に何が出来るだろう。知り合いはアカネさんしかいないからここで、雇われたい。
「ここで雇って貰う事は出来ませんか?」
「雇う余裕はないね」
「あんた、道場にいたんだったら、冒険者になりなよ」
「冒険者ですか? あの……野蛮な」
私にとって冒険者のイメージは最悪だ。タカセ町で人を上から目線で見ていて、通りを邪魔だと言って、人を突き飛ばしながら歩くのを見ているからだ。
「冒険者って変な奴もいるが、良い奴の方が多いよ」
「それで働けば、お金が貰えるんですね」
ここは借金もあり、背にも代えられないのだ。
「あぁ、ここに泊ったら宿代は払わなくていいし、私もお金が戻るって事だね」
「今日は遅いから、泊まって、明日から冒険者ギルドで働けばいいよ」
「はい、ありがとうございます。では、泊まらせて頂きます」
疲れはあったが、やる事が見つかって良かったと共に、安心からか眠気が襲って来た。