表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

不死身のお母さん

掲載日:2009/04/30

 『お母さんは不死身なのよ』


 (それが、お母さんの口癖でした)


 ある日の事です。お母さんが交通事故に遭って帰ってきました。とても青白い顔をしていて、私と妹はだからとても心配をして、「お母さん、病院に行かなくていいの?」と何度も言ったのです。ところが、お母さんは笑いながら、「何を言ってるの。いっつも言ってるでしょう?お母さんは不死身なのよ。こんな事くらい全然大丈夫に決まってるじゃない」とそんな事を言って、全然私達の言う事なんて聞いてくれないのです。でも、私達にはお母さんの様子がとてもじゃないけど、大丈夫そうには見えませんでした。

 そして、

 私達の心配した通り、お母さんは翌朝になるとベッドの上で死んでいたのです。

 どうしよう?

 私と妹は当然、困りました。

 私達の家族は、母子家庭なのです。お母さんを失ってしまって、これから一体どうやって、私と妹は生きていけば良いのでしょう?

 ところがです。

 『お母さんは不死身なのよ』

 その時、声が聞こえたのです。

 「お母さん?」

 私と妹は当然、その声に驚きました。

 でも、直ぐに納得をしました。

 そうです。

 お母さんは不死身だったのです。こんな事くらいで死んだりする訳はなかったのです。だから、生きているんです。お母さんは。どんなに死んでいるように思えても。

 私と妹は、それからもお母さんの助けを借りて、そのままに暮らしていきました。それまでと同じ様に。

 もちろん、お母さんは動けない訳ですけども、それでも、私達にお金の場所やら、銀行への振り込み方やら、料理の作り方なんかを教えてくれます。暮らしていくのに、何も困る事はありませんでした。

 ところがです。

 ある日、私達家族の事を不審に思った隣家の方が、何を勘違いしたのでしょう?腐臭がするだとか言って、警察に私達の家の事を連絡してしまったのです。その所為で、武骨な男の人達が、何人何人も私の家に押し入ってきました。そして、頑愚に「君達のお母さんは死んでいるじゃないか」と繰り返すのです。私は何度も説明をしました。「お母さんは不死身なんです。だから、生きてるんです。死んでなんかいません」。でも、男の人達は全然聞き入れてくれなくて、お母さんを何処かに連れて行こうとするのです。そんな事をされたら、私達は生きていく事ができなくなってしまうのに……

 私達は随分と抵抗をしたのだけど、結局、お母さんは連れて行かれて、不死身なのに、葬式が行われる事になってしまったのです。それで、そうして、とうとうお母さんは焼かれてしまいました。

 もう駄目です。

 なんて事をしてくれたのでしょう?

 これでは幾らなんでも、もう、お母さんは帰ってはきません。

 しかし、でした。その日の晩の事です。私達の耳に、こんな声が聞こえて来たのです。


 『お母さんは不死身なのよ』


 そうです。

 忘れていました。

 お母さんは不死身だったのです。例え焼かれたって……、

 窓の外では、灰がチラチラと舞っていて、そしてそれからゆっくりと戸がカラカラと開きます。

 『ただいま』

 そうして、お母さんは帰って来たのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ