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55 記憶と認識のズレ

サイが去って行った後、礼拝堂に一人残ったルワンは体を椅子に預けるように背もたれにもたれかかっていた。

カネル=ウルハード公爵の失脚とはかなり大きい話を持ってこられたものだ。

ルワンは「まいった。」と一言、弱々しく言葉をはいた。


だが、そうしているわけにもいかない。

先ほどの話についてドルフの意見を聞こうと改めて通信を行う。


『さて、ルワン。あいつの話どう思う?』


『交渉事に長けているような印象を受けましたね。

 嘘を言っている雰囲気はありませんでした。信用できる相手と判断してよろしいかと。』


『ほう、そうか。』

ドルフはそう言って一瞬、間を取った。


『まあ、ルワンがそう言うなら信用のおける相手なんだろう。

 しかし、この【通信輪】は遠くと会話できるのはいいが、相手の顔が見れないのが難点だな。

 俺は会って話をするほうが向いているらしい。』


『はは、それは仕方ありません。

 こうやってやり取りができるだけでも有難いのですから。』


『まあ、そうなんだろうがな。

 ところで、ヴィレ達はどうした?

 近くに居ないのか?』


『え、ヴィレ君達ですか?

 そういえば、今は別行動中のはずです。

 何かありましたか?』


『いや、いいんだ。

 同行していたのなら意見を聞こうと思っただけだ。』


『そうですか。

 ヴィレ君達の状況については確認したのち、ご連絡いたします。』


『そうか、頼んだ。』


そういって、【通信輪】を切ったルワンは先ほど何か引っかかるものを感じた。

ちょうど、その時にヴィレから通信が入り、その違和感についての言及を止めた。


『やっと繋がった。ルワンさん、大丈夫ですか?』


『ヴィレ君か、ああ大丈夫だよ。

 どうしたんだい?』


『そうですか。

 カノンが連れ去られた時の状況を教えてください。

 こっちにカノンはいるんですが、目を覚まさないんです。』


『えっ!?ヴィレ君、ちょっと待ってください。

 カノン君は連れ去られたんですよね?』


ルワンはヴィレの言葉に驚かずにはいられなかった。

ヴィレ達と別れて行動していたことは覚えているが、途中の記憶が曖昧になっていた。


『ええ。

 ルワンさんがマッケインが連れ去ったと連絡を受けてから

 こっちにやってきたので、取り押さえたところです。

 なので、カノンはこちらで確保しているんですが、容態が安定しなくて。』


『・・・、そうですか。

 取りあえず私もそちらに向かいます。』


ルワンはヴィレから位置情報を確認したあと、現場に向かう。

その途中、ルワンは自分自身の記憶を思い出そうと試みた。


研究施設が広いため二手に別れて調査を行うことにした。

ヴィレ組と別れたルワン達が入った部屋には奇妙な魔方陣が床に描かれていた。

魔法陣を確認した直後、場面が切り替わった。

次の場面ではルワンはガウス教会の礼拝堂に一人立っていた。その人物とはサイ=アーガネットであった。

彼はルワンに向かって何か問いかけているようだったが、なぜかその言葉が理解できない。


そうこう考えていると、ヴィレ達のいる場所に到着した。

「ヴィレ君、カノン君は大丈夫ですか?」

そう言ってルワンは部屋に入る。

部屋にはヴィレとコウが立っており、カノンは椅子に腰かけた状態だ。

他には、ヴィレと一回戦で対戦した男、レイン=ガードナーの姿もある。

さらには、壁際にマッケインが両手を縛られた状態で地べたに座らされていた。

今は眠らされているのか、意識はなさそうだ。


「カノンは、寝かせてますがあまり芳しくない状況です。

 ところで、何があったんです?」

ヴィレの問いにルワンは答えられなかったため、沈黙がその場を包み込んだ。


「実は…、記憶が少し曖昧な部分があります。

 先ほどヴィレ君から聞いた事も朧気なところがあります。」


ルワンは歯痒いような悔しいような表情を見せ、言葉を紡いだ。

だが、ルワンの言葉に対する回答はルワンの予想外のものだった。


「やっぱりそうなんですね。思った通りです。

 ところで、ルワンさん、覚えてる限りで最後に会った方は覚えてますか?」


「最後…、といえばサイ=アーガネットさんですね。

 闘技大会の時に、観客席に挨拶に来てた人ですよ。」


「やっぱりあいつか。

 そういうことなら、マッケインもあいつが仕組んだ可能性があるな。」

コウはルワンの言葉に反応した。

一方のルワンは話に付いて行けず、微妙な顔でヴィレの方に視線を向けた。


「わかってますよ。端的に説明します。

 ルワンさん、あなたは精神感応魔法の影響を受けています。

 そして、マッケインも同様に精神感応魔法の影響を受けている可能性があります。」

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