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50 闘技大会の行方と調査

ヴィレの対戦相手は今大会で優勝候補に名高いジーク=ラドという選手だ。

予選では圧倒的な魔法による弾幕攻撃で他選手を寄せ付けず、あっという間に勝利した。


土魔法で作った石弾の連打で足止めし相手に反撃の隙を与えない。

レインのような一撃必殺の型ではなく手数で勝負するタイプだった。


ヴィレは打ち出される魔法を防御魔法で何とか防ぐが反撃ができないでいる。

魔法が打ち止み、ホッと一息をつく暇もなく、今度は剣による連撃が襲ってくる。


剣はルワンとの練習の成果で反応はできるようになっていた。

しかし、通常では身体の負荷が付いて行かず、身体強化魔法による補強をしないと対応しきれない。


そのため、ヴィレは身体強化魔法か防御魔法を常に張り何とかジークの猛攻を防いでいた。

ジークの猛攻は数分間にも及び、ヴィレはその猛攻に精神的にも追い詰められていった。


ヴィレは多くない魔力を魔法府で補給しながら戦っていた。もう幾つ費やしたのか。

ただただ、ジークが息切れするのをじっと耐えながら待った。

そして、遂にジークの攻撃に隙ができる。


ヴィレはその瞬間を逃すまいと防御魔法から一転、攻めに転じた。

ジークはヴィレの反応を見て、にやりと笑みをこぼす。

それは獲物が罠にかかったような笑いだった。


ヴィレは氷の矢を舞台上空から一斉に打ち下ろす。それと同時に自身も剣による攻撃をジークに仕掛ける。

かつてケインと闘った時のように、魔法を自分も受ける自爆覚悟の攻撃だった。


「思い切りの良さはいい。

 だが、相手を見極めきれなかったようだな。

 残念だがそれじゃあ、俺には届かない。」


ジークはその攻撃方法に一瞬驚きの表情を見せたものの、すぐにヴィレの攻撃に対応していく。

ヴィレの魔法を最小限の移動でかわし、ヴィレの剣撃を自身の剣でいなしていった。

それどころか、ジークはパチンと指を鳴らすとヴィレと同様に舞台上から石弾を打ち下ろしてきた。


ただでさえ自身の魔法攻撃でダメージを負っているヴィレに、ダメ押しのような石弾が襲ってくる。

ヴィレにはそれに対応するだけの術は残されていなかった。


「君は面白い戦い方をするね。

 闘い方と実力との乖離があるのが残念だよ。」


その言葉が耳に届いた次の瞬間、身体の自由が利かなくなりヴィレは意識を失った。


 *  *  *


『今回、ウルの街で行われた大会は結局ヴィレ君に勝ったジークという男が優勝しました。

 ヴィレ君はベスト8、カノン君はベスト16という結果です。

 ちなみにカノン君は意識を取り戻して今はすっかり回復しましたよ。

 色々ありましたが、彼らは初めての大会でよくやったと思います。』


『なんだよ。つまんねーな。

 ヴィレあたりは何か能力を隠してそうだったのにな。

 そうでもないのか、他のやり方で引き出さないと出てこないのか。』

ルワンの報告にドルフは不満そうに答えた。


『まぁまぁ。それよりも例の件で進展があったんだからいいじゃないですか。

 今夜はコウという男からの情報を確認しようと思います。』


『よろしく頼む。』

ルワンはドルフに報告を行うと【通信輪】を切った。


「さて、これからが本当のお仕事ですよ。

 ヴィレ君、カノン君。そして、コウさん。」


ルワンの言葉に皆無言で頷く。


彼らは今ガウス教会の近くまで来ている。

コウが昼の間に用意したガウス教徒ロゴの入ったローブを着用している。


目的はガウス教会の地下にあるという研究施設で瘴気に関する情報を入手すること。

コウもその研究施設の一角でマジックアイテムなどの作成を行っているが、他の人が何を研究しているかは分かっていなかった。

そこで、実際に潜入して情報を集めようということになった。


研究施設まではすんなり入ることができたが、施設内はいくつかの部屋に分かれていた。

そこで、ルワンとカノン組、そしてヴィレとコウ組の2手に分かれて各部屋を調査していく。


ヴィレ達が入った部屋には、実験道具が置いてあった。

コウが言うには、自分たちが居た世界で行っていた科学という自然現象を研究するための道具らしい。

魔法を用いないで魔法に似た効果を発揮するための仕組みを研究しているとのことだ。


「この研究って、例えば人の魔力量を増幅させることもできるのでしょうか?」

ヴィレはその科学というものに興味を持った様子でコウに聞いてくるが、コウの表情は浮かない。


「少し調査してみたが魔力というのが科学と離れた存在らしい。

 俺の知る限りでは保有する魔力量を調整するのは難しいな。

 どうにかしようと研究している所もあるらしいんだが、人体実験に近いものだから詳しい情報は知らない。

 一応、この国では人体実験は公には禁止されているからな。」


「なるほど、そうですか。

 カノンと対戦したモルブという男はそういう実験を受けたのかと思ったんですが。」


「その可能性も無いわけじゃないが…。」


「おや、君もこの施設に来てたんだ?」

ヴィレとコウは後ろからの声に振り向くと、そこにはガウス教徒のローブを着たレインが立っていた。

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