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5 魔法と事故

爆発音の聞こえたほうに目を向けると土埃が舞っていて、中の様子は伺い知ることが出来ない。

次第に土埃が霧散していき、2人の人物の姿が見えてきた。

そこには、倒れているカールとカールを抱きかかえながら懸命に声をかけるワルドの姿があった。


「カール様、大丈夫ですか?聞こえますか?」

ワルドは真っ青な顔をしながらカールに呼び掛けているが、カールは一向に意識を取り戻さない。

カールは全身を火傷しているようで、意識が無いようでぐったりしている。


サンカネルら教師陣も急いでカール達のもとに駆けていく。

カールの様子を見るなり、サンカネルはホッと一息つき、ワルドに言い聞かせる。


「大丈夫。この程度の怪我なら問題ありません。

 見た目は派手に火傷を負っているが、治癒魔法で跡形も無く治せるレベルの怪我です。

 カールはすぐに元気な姿で戻ってきますよ。

 エィミー、済まないがカールを治療室まで連れて行ってくれませんか。」

サンカネルとともに駆けつけていたエィミー先生は、無言で頷き治癒魔法をかけながらカールを運んで行った。


「さて、カールのことはとりあえず任せておきなさい。

 それよりも、何が起こったか教えてくれますか?」


  *  *  *


その後、カールは治療室にて安静することとなり、ワルドは教員室にて事情を確認することなった。

この件により、授業は一時中断となり生徒はみな教室に戻ってきていた。

自然と先ほどまでの班ごとに集まり各自話をしている。


「そういえば、さっきワルド君がヴィレ君の方を見た気がしたけど、何か知ってるの?」

カノンがヴィレに尋ねてくる。

ワルドが教員室に移動するとき、一瞬ヴィレと目があったのを見ていたようだ。

大雑把だと思ってたが意外と目ざといな。

「いや、知らない。こっちを見たのも単なる偶然だと思うけどね。

 俺はワルド達とは同室だということ以外接点が無いよ。」


それにしても、さっきの魔法事故はなんだったのか。

カールが運び出されるときにカールの姿が目にしたが、全身にかなりの火傷を負っていた。

特に左手の火傷がひどいものだった。


教室に戻るなりずっと考え込んでいたアキトが口を開く。

「魔法の暴発かな?」

魔法の暴発。魔術師見習いにありがちな現象。

術師が魔力を制御しきれず魔力暴走を引き起こすことで予期しない魔法が暴発する現象である。


「でも、それは変じゃない?

 今回の基本魔法の【火烈】は詠唱失敗しても魔法行使されず消えていくだけの魔法だとサンカネル先生も言ってましたよ。

 魔法が暴発するとは思えませんけど。」

アキトの疑問にカノンが答える。


「それに、魔法の詠唱は魔力暴走も起こりにくいよう制御補助を行ってくれるはず。

 暴発するようなことは考えにくいです。」

アイリはカノンの意見に付けたして答える。


「ヴィレはどう思う?」


「他に考えられることと言ったら、他者からの妨害とか?

 カールを貶めるような意図を持った人がいるなんて発想は飛躍しすぎな推理だけどな。」

ヴィレは思いつきを言ったつもりだったが、アイリやアキトは何かを感じたようで、かすかに表情が強張った。


「周りには先生たちもいたし、何かあったらわかるような気がするけどね。」


「まあ、この話は私たちがあれこれ考えても仕方ないわ。大人に任せましょう。」

ヴィレのフォローに同調するようにアイリがこの話を切り上げた。


 *  *  *


その夜、カールはもとよりワルドも寮に戻っては来なかった。

4人部屋が2人だと妙に寂しいものがあった。

「ヴィレ。カールの件すごく気になってるでしょ。」

「ん、わかるか?」

2人は顔を見合わせにやりと笑った。


「まずは現場を調べないといけないよな。」

「だね。ちょっと寮を抜け出そうか?」


「できるのか?寮は警備員がいるだろう?」

「大丈夫。融通がきくんだよ。1人150レストになるけどね。」

そういって手を出してきた。

ちゃっかりしてやがる。そう思いながらヴィレは150レストを渡した。


「なるほど、さすがは商人だな。世渡り上手になるわけだ。」

「ふふ、ほめ言葉だと受け取っておきますね。」


そうして、警備員に融通をきいてもらった俺たちは中庭にやってきた。

現場は一部草が焼け焦げていたため目立っている。

ただ、それ以外特に痕跡らしいものは見当たらない。


そのため、中庭の周囲を手分けして探していった。

5分ほど経過した時、俺は現場の風上で光るモノを見つけた。

どうも指輪の一部のようで、リングが半分に割れている。

内側には文字が彫られているようだが、リングの半分が無いため何が書かれていたかわからない。

事件に関係しているものかどうかは分からないため、ヴィレは保留とした。


そんな中、アキトから声が上がる。

「あった。」


アキトは現場から風下の場所で焦げた紙の一部を持っていた。


「なんだこれ。」

「これはたぶん、魔法符だよ。」

「魔法符?」

「あれ?知らない?

 これは魔術師が魔法を貯めておくためのマジックアイテムだよ。

 一度使うと、効力を失ってしまうけど、安価で広く流通してるんだ。」


魔法符なんてものがあるのか。知らなかった。

「どうやって使うんだ?」

「自分の魔力を符に流し込むんだ。使うときは符から吸い出すようにするんだ。

 そうすることで、自分の魔力量以上のコストがかかる魔法でも行使できる。」


「なるほど。便利なものがあるんだな。

 でも、なんでこんなものがあるんだ。」


「おそらくだけど、何か別の魔法を試そうと思ったんじゃないかな。

 それで魔力を大量に使うために使用したけど、制御に失敗して暴発した。」


「何かの魔法実験、・・・か。」

授業の中で、魔法実験なんてものをするとは考えにくいものの、一応可能性はあるか。

そうでなくても、事件ではなく本人の魔法行使が原因の事故というのが妥当な線か。

やはり誰かの策略というのは、色々考えすぎなのかもしれないな。


「とりあえず明日、サンカネル先生に報告しておこう。」

そう言って俺たちは部屋に戻ることにした。

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