45 闘技大会決勝トーナメント・テンプレから外れた展開
「君、なかなかやるじゃないか。
今日は調子が悪かったとはいえ、僕の伸剣術が避けられたのなんて久しぶりだよ。
名前はなんていうんだい?」
試合後、ヴィレはナルシスト君に話しかけられて呆気にとられた。
あんな負け方をした後に、対戦相手に話しかけるメンタルの強さがすごかった。
「…。ヴィレだ。」
「ヴィレか、覚えたよ。
僕はレイン=ガードナーというんだ。よろしく。
君はなかなか面白そうだね。
実に興味深いよ。」
その後、ヴィレはレインからの質問攻めにあった。
「君に紙を渡しておくよ。
これを持っておくと後でいいことがあるはずさ。
それじゃ、また会おう。」
一通り質問が終わると、一枚の紙と気になる言葉を残してレインは去っていった。
嵐が去った後、ヴィレはドッと疲れが襲ってきたようだった。
「はぁ、とりあえず、他の試合を見るか。」
* * *
試合は順調に進み、現在マッケインの試合が行われている。
マッケインの対戦相手は同年代の女性で、かなりの苦戦を強いられていた。
マニーと呼ばれているらしく、観客席からは彼女を応援する声が多い。
一方、マッケインに対しては野次が飛んでいる。
ブロンドで髪をポニーテールにした、美しい女性剣士だ。
通常より短い剣二本による二刀流だ。
一方、マッケインは通常の剣ではなく刀を用意していた。
マニーは二本の剣で踊るように攻撃をしてくる。
刀一本で受けるマッケインはタイミングが取りづらいようで防戦一方になっている。
「どうしたの?
防ぐだけじゃ勝てないわよ。」
マニーは怪しい笑みを浮かべている。目は完全にあれな感じだ。いわゆる戦闘狂ってやつだ。
美人なのに台無しだなと思いながら、マッケインは剣撃の隙を探すがなかなか見つからない。
マッケインはたまらず、防御魔法を前面に展開し後退する。
しかし、向こうもそれを察知していたのか、マッケインのさらに後方から氷の矢が襲ってきた。
マッケインは左腕に付けている腕輪に魔力を込めると、腕輪の形状が変化しマッケインの全身を薄い膜が覆った。
氷の矢はマッケインの背中に当たったものの、マッケインを覆った薄い膜がクッションの役割を果たしたおかげでダメージが通ることはなかった。
だが、マッケインは苦々しい顔をしていた。
防御に特化したマジックアイテムだが、難点がある。
これは術者の魔力を供給している間だけ、防御ができるものであり、一回だけしか使えない。
「出来れば、無難に終わらせたかったが仕方ない。
マジックアイテムを使った以上、さっさと終わらせるか。」
「面白いこというじゃない。
それは、私を楽しませてくれるってこ…。」
マニーは話ている途中で横に飛んだ。直後、彼女の元居た場所の地面に亀裂が走っていた。
「危ないじゃない。女性が話してる時は聞くのが男ってもんじゃない、のっと。」
そう言いながら、マニーは風魔法を仕掛けてくる。
だが、マッケインは構わずまっすぐにマニーに突っ込んでいく。
マジックアイテムのおかげでマニーの攻撃はあまりマッケインに通っていない。
接近したところで、マッケインは上段の構えから刀を振り下ろす。
その刀をマニーは二本の剣で受けるが、マッケインの膂力に押し負け二本の剣が折れた。
「負けを認めろ。」
マッケインは肩で息をしながら、マニーの首筋に刃先を置いたまま棄権するよう促した。
「剣が折れちゃったから仕方ないわね。」
しばし、マニーはマッケインを睨んでいたが、視線を外すとあきらめに似た顔をして答えた。
それを聞いたマッケインは表情を緩め刀を離した。
その直後、マッケインはバランスを崩して倒れた。身体の自由が効かないようだ。
「ふふ、あなたが甘ちゃんで助かったわ。
勝ちを譲ってくれてありがとう。」
マッケインは何もできないまま、意識が薄れていき、やがて気を失った。




