44 闘技大会決勝トーナメント・開催
闘技大会決勝戦当日は今年一番の盛り上がりを見せていた。
決勝に進んだ16名の選手がトーナメント方式で闘うのだが、観客席では優勝者予想のトトカルチョが開かれている。
また、決勝の日はVIP席が設けられており、名のある貴族や富豪が招かれている。
過去には偶然観客席で観戦していて見初められ玉の輿に乗った女性や、闘う姿勢が認められ従者にヘッドハントされた騎士もいる。
そのため、この日は闘技大会全体がある意味で戦場といっても過言ではない。
そんな様々な思いが交錯する闘技場の待合室でヴィレは憂鬱そうに昨夜のことを思い出していた。
昨夜ルワン達と話をまとめた後、ドルフに【通信輪】で状況報告を行った時だ。
『おお、闘技大会とは面白そうなことやってんな。
よし、カノンかヴィレ、お前らのうちどっちか優勝してこい。
今後の調査の際にもその肩書があると何かと便利になるはずだからな。』
『いや、ドルフ様。簡単に言いますけど無理ですって。
実力者が集う大会ですよ。今回は予選が特殊だったんで運よく勝てましたけど直接対決では手も足も出ませんよ。』
上機嫌に笑うドルフにハードルを挙げられてはたまらないとヴィレはいかに無謀なことかと説得を試みる。
『そうなのかルワン?』
『いえいえ、そんなことはありませんよ。
ヴィレ君もカノン君もかなり上達しています。
戦略と相性にもよりますが、2人が決勝で闘うなんてこともありえます。』
非常に楽しそうな笑みを浮かべているルワンを見てヴィレは諦めた。
まだまだ日の浅い付き合いだが、ドルフはルワンに絶大な信頼を置いていることは理解している。
だから、ルワンができると言ったことは実現できるものとして計算されてしまう。
つまり、俺かカノンが優勝しなくちゃいけないのだ。
闘技場では観客の歓声がひと際大きくなった。
どうやら第1試合が終わったようだ。
抽選の結果、マッケインは第4試合、カノンは第8試合に登場する。
そして、ヴィレはこの後の第2試合で闘うことになっている。
ヴィレは気合を入れなおして、闘技場に向かっていった。
* * *
ヴィレの相手はやたらと口上好きなキザでナルシストな男だった。
観客席には親衛隊もおり、VIP席からも黄色い声援が飛んでいた。
「君は運のいいほうなのかな。誇っていいよ。
相手が僕なので、敗北は仕方ないが、僕と戦えただけで光栄なことさ。
僕とこの剣の糧にになるがいい。」
ウェーブがかった金髪のセミロングの髪をかき上げながら、上から目線で言ってくる。
中性的な美男子といった容姿ではあるが、ナルシスト気味なところがある。
武器は細長い剣で防具も軽装だ。おそらくスピード重視の剣士のようだ。
「運がいいってんなら、勝利もくれれば助かるんだがな。」
「それはできない相談だな。」
「2人とも私語は慎みな。
これより、第2試合を始めるせ。
勝利条件はどちらかが負けを認めるか試合続行不可能になった時だ。
万が一、試合時間が長時間に及ぶ場合は、審判の判定によって勝者を決定する。
理解したら両者開始位置につきな。」
筋肉隆々でスキンヘッドの審判からの注意を受け、ヴィレ達は開始位置でお互い向き合う。
「それでは、はじめ」
審判の合図にフライングすれすれで、ナルシスト君がものすごい勢いで直進しながら、剣で突いてきた。
ヴィレはまだ、剣の間合いの外に居たが、無意識に避けていた。
そこには届くはずのない剣が伸びて、ヴィレの肩をかすめていた。
その直後、ヴィレの視界からナルシスト君が消え、ヴィレの足に痛みが走った。
足元を見ると、ナルシスト君が悶えていた。
どうやら、攻撃を避けた拍子にヴィレの足がナルシスト君の進路をふさいでしまい、足に躓いてしまったようだ。
剣をナルシスト君の首元に突きつけたところで負けを認めたため、試合は即終了した。
「こんなものなのか?」
ヴィレは余力をかなり残して本選第2試合を勝利したが何か釈然としないものがあった。




