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43 予選後の夜の裏側

ヴィレ達が予選の祝勝会を行っている時、とある地下室の一室で会合が行われていた。

参加者はウルの街の有力商人達やガウス協会、闘技大会運営達だ


「皆さま、本日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。

 早速ですが、闘技大会の状況について報告いたします。

 ありがたいことに闘技大会の参加者は年々増えており、今年もに去年から収入が大幅に伸びています。

 特にガウス協会から提供された技術を応用した商品等の売れ行きが好調です。

 今年も引き続きよろしくお願いします。」

運営役員は状況を説明すると、カルラ司祭に会釈を行う。カルラ司祭も小さな頷きで応答した。


「またシード選手の件についてですが、以前から打診のありました、ルーラ商会、ドン商会の推薦者を盛り込んでいます。

 お手元の資料に本戦出場者をまとめましたのでご確認ください。」

大会の出資者である商人や協力関係にあるガウス教会に現状の報告がなされていく。

闘技大会は商業面でも重要な大会になっており、商人達にとっても利権の絡む案件だ。

それは貴族と付き合いの深い商人ほど影響力が大きい。その一例がシード選手だ。


箔をつけたい貴族の子弟やお抱えの騎士などの要望が上がってくることがある。

本来実力ありきの大会であるが、参加者が増えており、予選が開催されるようになっている。

そのため、地方大会の本選出場を果たしたというだけでも価値があるのである。


大会の品位を落とさないため優勝者を八百長で決めることはできないが、本選出場だけであれば大会側が特別枠を用意しておくことはできる。

貴族は大きな影響力を持っているために配慮した結果、現在のような形に収まった。

この配慮により、ウルの街は商業面と権力面で発展してきた。


粛々と報告がなされていく中、出席者から疑問の声が上がる。

「今回の予選は今までに無い趣向であったがあれは何だ?」

「うちの商会でも話題になっていたよ。

 勝敗がわかりやすいのはいいが、ダサいのはいただけなかった。」

「そう?お得意様からは面白い見世物として好評でしたよ。」


「それについては、私から説明させてもらいましょう。」

その科白に、口ぐちに話はじめていた商人たちが、話をやめ一人の人物に注目した。

そこには、カルラ司祭とともに同席しているサイ=アーガネットがいた。


「皆さま、お久しぶりでございます。

 初めてお会いする方ははじめましてですね。

 少し自己紹介をさせて頂きます。

 私はガウス教会にて様々な研究をしていますサイと申します。

 私自身も転生者ですが、ウルの街の発展のために微力ながら皆さまのお手伝いさせて頂いております。

 さて、予選の趣向ですが、これは商人の皆さまへのデモンストレーションの意味合いもあります。」


「おお、サイ殿であったか。デモンストレーションとはどういうことかな?」

サイの科白に商人たちは興味を持ったようで、目の色が変わった。金の匂いを嗅ぎ付けたのだろう。


「では、申し上げます。

 予選の時に使用した竹箒とボールをここに用意しました。」

サイは予選の時の竹箒とボールを取りだし、商人たちに説明を行っていく。


「今回提示したいのは、キーロックシステムというものです。

 これは、特定の条件下でのみロック解除できるというものです。

 予選の時は、ボールが竹箒でしか割れないように設定していました。」


「錠前と鍵の役割を果たすものだと考えればいいのかね?」


「それもありますが、それだけではありません。

 様々な制限を掛けることが可能になります。

 予選で竹箒という耐久性の低いものを使用した理由はそこにあります。」


次第に会議室がざわつき始めた。

サイの言うことの真意を商人達が理解し始めたのだ。


商品が継続的に購入されるためには、一定の需要がいるのだ。

定期的に買い替えが必要なものであれば常に一定の需要がある。

錠前と鍵の関係、その鍵を消耗品にすれば定期的な需要が望めるため、商人達にとっては魅力的なシステムだと言える。


「それは今後どのように使っていく予定だね?

 場合によっては、教会への出資を増やしても構わん。」


「それについては、既に検討を始めていますが、皆さまのご意見を取り入れながら進めていきたいと思います。」

カルラ司祭は笑みを浮かべ頷きながら問いに答える。


 *  *  *


会議を終え、カルラ司祭は上機嫌で商人達の相手をしている。

そんなカルラ司祭を横目にサイは教会に戻ろうとしていた時だった。


「なるほど、商人達と繋がっていたのか。」

そう言って姿を現したのはコウ=タキスだった。


「おや、知らなかったのか?

 てっきりその繋がりをもとめて教会にやってきたものと思っていたんだが。」

サイは動揺することなく、コウの言葉に返す。


「俺が教会に来たのは成り行きだよ。今となっては教会側に誘導されたんじゃないかとすら疑ってるがね。

 教会は、俺の魔術技工士としての技術と経験を必要としているんだろう?」


「そこはギブ&テイクだと思ってもらいたいね。

 転生者で魔術技工士なのは少ないからね。

 ユーイ先生には感謝しないといけないな。」


「なっ!?」

コウは驚きを隠せなかった。一方、サイはクスクスと笑っている。


「何を驚いているんだ?情報収集は基本だろ。

 安心してくれ。ユーイ先生に危害を加えたり脅したりはしていないよ。

 そうそう、それと、誤解しないでほしいんだが、俺は教会側ではないよ。

 目的のために教会を利用しているだけだ。」

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