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42 予選後の夜に

「あー、疲れた。」

ヴィレは観客席に戻ってくるなり、つぶやいた。


「お疲れ様。まずは予選通過おめでとう。

 君は色々な闘い方を知ってるようだね。」


ルワンはねぎらいの言葉をかける。

「私の魔力量はたかがしれてますからね。

 ウルの街に売ってる本からいろんな情報を仕入れましたからね。

 今回はその中から使えるものを実験してました。」


ルワンは呆気に取られていた。

カノンをかけての重要な大会の予選で、闘いの実験をしていたというのだ。


「実験…。

 それは、最後に2人を倒した方法ですか。」

「異世界の知識を応用することで、物を任意の場所に誘導する技術があるらしいのです。

 なので、自分の竹箒の一部を落ちている竹箒に仕込んで、風魔法と併用することでボールを割ることができました。」


「なんというか、すごいですがずるい手を思い浮かびますね。」

「そうでもしないと勝てないので仕方ありません。」

ヴィレは苦笑する。


「話し中すまない。ヴィレ=トーサ選手だね。

 予選突破おめでとう。

 俺はサイ=アーガネットという。

 うちのマッケイン君が君をライバル視してたから、どんな男か興味があってね。」


サイという男が急にヴィレに話かけてきた。

ヴィレはキョトンとしていた。マッケイン側の人間が急に話に来ましたなどと言われても疑問しかない。


「ああ、誤解しないでくれ。君の手を探ろうだとかは考えてない。

 ほら、マッケインは直情的な男だろう?

 今回の揉め事の事情を知りたくてね。」


そう告げたサイは笑顔のままだ。だが、表面的でどことなくうさん臭い笑顔だと感じていた。

だが、こちらの言い分を話すことで不利益を被ることはないと判断いたヴィレは事の経緯を話した。


話を聞いたサイはどことなく予想していたようで、苦笑していた。

「なるほど、事情は分かった。

 こちらでも手を打ってみよう。」


 *  *  *


予選は順調に行われ、本選出場枠の16名が決定した。

ヴィレ、カノンそして、マッケインも本選に残っていた。


その日の夜、ヴィレ達3人は予選突破の祝勝会を酒場で開いていた。

本選は明日、トーナメントが行われ1対1での闘いとなる。

トーナメント戦は、予選とは違い基本的に縛りはない。

そのため、ヴィレとカノンは明日の本選に備えようとしていたのだが、ルワンが強引に連れ出したのだ。


「明日のことを考えすぎると、実力が発揮できません。

 力の入れどころ、抜きどころをしっかりつけないと持ちませんよ。」


「ルワン様も闘技大会に出られた経験があるのですか?」


「ええ、皆さんと同じころですかね。

 ドルフ様のもとにいるのも、全国大会に出場したことがきっかけですよ。」


「そうなんですか。」


「ええ、だからこそ、普段の実力を発揮するということはとても大事なことなんですよ。」

そう言ってルワンは酒をぐぃっとあおる。

ヴィレは、ただ単に飲むための理由が欲しいだけなんじゃないかと思わずにはいられなかった。


「あと、この店に来たのは他にも理由があるんですよ。」

そう言って、ルワンは1人の男をテーブルに招き入れた。

そこにやってきたのは、ジョン=スミスだった。

ルワンは本来の目的である調査の報告を受けに来ていたのだ。


ガウス教会には主に3つの組織に分かれており、教会の資金集めを目的としているという。

1つは集金部隊で、布教活動や教会が作った書物やアイテムを販売をしているという。


1つは護衛部隊で、教会関係者の護衛や転生者の保護を行う。

ジョンは、護衛部隊に雇われているアーレス兄弟から、ガウス教会の情報を仕入れていた。


1つは研究部隊で、異世界の知識を持つ転生者たちを集めて書物やアイテムを研究している。

その研究内容には、瘴気に関するものも含まれており、色々ときな臭い研究もしているようだ。

ジョンによると、サイ=アーガネットという転生者が主軸となって研究をしているらしい。


ジョンの情報を聞いたヴィレ達は今後の方針を確認することにした。

偶然とはいえ、サイはマッケインに関係していることを知っている。

となれば、マッケインを経由してサイの情報を手に入れることで、詳しく知ることができるはずだ。

ヴィレ達はマッケインに勝たなければならない理由がまた一つできた。

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