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4 オイオット学院の授業2

ヴィレが編入して2日目の授業は魔法がメインだった。


1時限目、魔法学(座学)

魔法学では、魔法の仕組みを理解するための授業だった。

魔術師としての力を十全に発揮するためにも魔法を理解することが重要なのだとか。


魔法に関しては現在も研究段階で、解明されてないことが多いと言われている。

そのため、下位学院では魔法の基礎の基礎しか習わない。


しかし、サンカネル先生は自身が魔術師としての経験を知識として授業で教えてくれた。

これは自分の経験からの知識と推測が多聞に含まれていると前置きしたうえでだが。


魔法とはイメージを創造することで生じる現象であるという。

ただし、魔法を使うためには対価が必要になってくる。

一般的には魔力と呼ばれているものがそれだ。


魔力は生命力に近いものと考えられている。

魔力を使いすぎると、魔力欠乏状態に陥る。

魔力欠乏状態になると、頭痛や吐き気といった疾患に陥るらしい。

サンカネル先生も何度もこの魔力欠乏状態に陥り、グロッキーになったのだとか。

途中からサンカネル先生の過去の失敗談に脱線していった。



魔法学の授業が終わると、俺は呼び止められた。

「ねえ、ヴィレ君。授業はついてこれているかい?」


そう言って話しかけてきたのは、隣の席にいるアキト。

彼はこのクラスの委員長を任されているらしい。


「どうだろう。まだまだこれからって感じかな。

 魔法に関しては全然知らないからこれから勉強しなくちゃいけないな。」


「そっか。魔法は知識があると幅が広がると言われているからね。

 この後の授業では実技もあるし、僕で良ければ色々教えようか?」


「本当か。それは助かる。でも悪いな。」


「いいって。クラス委員の役割でもあるしね。」


「あ、俺はこの後魔法適正測定があるんだった。」


「そうなんだ。てっきり入学時に測ってるもんだと思ったよ。」


みんなはすでに魔法適正測定というものをしているらしい。

アキトに聞いたところ、本人の魔力総量を測る検査だという。

少量の血液と尿をもとに成分検査を行い、魔力因子を計測するのだとか。

魔力量の目安になるらしく、この量が魔法適正のランクになってくる。


つまり、魔力総量が多ければ魔法適正ありとみなされるのだ。

俺の場合はどうなんだろう。期待をして検査に赴いた。

だが、検査の結果、俺の魔力量は100というすごく微妙な値となった。


一般人の平均魔力量は80ほどだと言われている。

学院に入学する者の平均は150ほど、その中でも魔術師を目指す者は250ほどあると言われている。

つまり、一般人よりはちょっと高いが学院の中では平均以下で、魔術師を目指すには難しいという結果なのだ。


ただ、魔力量は鍛錬で増加するともいわれているため、これから次第なのだが…。

まあ頑張るしかないか。


 *  *  *


その後、俺は魔法学(実技)の授業に参加した。

学院の中庭の真ん中にサンカネル先生とクラスの生徒がいた。

生徒達は皆4人1組に分かれている。


サンカネル先生の説明によると、グループ実習を行うため4人の組を作っている。

先生が指定したメンバーでグループを組むことになっており、アキトがいるCグループには1人少なかった。

どうも俺はそのグループらしい。サンカネル先生に促されるままに俺はCグループに合流した。


Cグループはアキトとカノン、アイリの男女混合チームだ。

アキトが中性的な容姿をしているため、はたから見れば男1女3に見えなくもない。


カノンはショートカットで、ボーイッシュ。性格は大雑把で一見くよくよしなさそうだが、本人いわくそうでもないらしい。

彼女は騎士爵の子息で、男ばかりの兄弟の中で育ってきたことも大雑把な性格に影響を与えてそうだ。


一方、アイリはセミロングで物腰もやわらかく、しっかりものである。

商人の子息で、算術や交渉術などにも長けており、頼れるお姉さんといった印象だ。


カノンとアイリの2人は宿舎でも同室のようで、かなり仲がいい。

また、アキトはカノンに気に入られているようだ。

顔を合わすたびに毎回、顔のことでいじられている。


周囲の男子生徒達からは恨めしいような声が漏れ聞こえてくる。

同室のカールなんかはあからさまに睨んできていた。


サンカネル先生から、実技の内容が説明される。

「魔法行使の方法は詠唱や無詠唱、魔法術式をあらかじめ組み込んだものなどいくつかあります。

 それぞれに特性はあり、メリットとデメリットがあります。

 その中で、当学院では詠唱魔法を教えていきます。

 魔法行使の失敗が少なく、魔力制御が容易だという点がメリットです。

 それでも、安全とは言い難いため、サポートとして他の先生にも来てもらっています。」


サンカネル先生の後ろに赤いローブを来た人が数名並んでいる。

彼らは教師であり、万が一のスタッフでもあるということだ。


「皆の中には、既に詠唱魔法を使用した経験のある者もいると思います。

 詠唱魔法は耳で覚えるのが一般的だが、間違った詠唱内容になっている可能性もあります。

 そこで、正しい詠唱を知るために、魔法書を用意しました。」


サンカネルは各グループに基本魔法書を配っていく。

生徒達の間でざわざわとした驚きが広がっていく中、サンカネルは説明を続ける。


「詠唱魔法はその詠唱の正確性が魔法行使の威力に影響すると言われています。

 つまり、正しい詠唱を行う方が威力が高いということです。

 詠唱を多少間違えても魔法は行使されるため、今まではあまり問題視されてきませんでしたが、最近では魔力暴走などの事故も増えてきています。

 魔力暴走による事故は魔術師としての資質に大きく傷を付けてしまいますので、この機会に正しい詠唱を学ぶようにして下さい。」


俺達のグループにも魔法書が配られた。


「全グループに魔法書がいきわたりましたね。

 それでは、早速魔法書の18ページを開いて。

 今日覚えるのは火属性の基本魔法、【火烈】です。

 まずは、自分たちで正しい詠唱を導き出してください。

 合格基準は【火烈】を発動させて5秒以上キープさせることです。

 それでは、みなさん始めましょう。」


サンカネル先生はそう言って、各グループの様子を回り始めた。


「あれ?詠唱を教えてくれるんじゃないのか。」


「そうなんだよ。この学院は生徒の自主性を重んじててね。」

俺の疑問に答えたのはアキトだった。


「それに、詠唱魔法は詠唱呪文が人によって違うらしいんだ。」


詠唱が人によって違うのか。どういう仕組みだろうか。


「そうなの。だからそれぞれが魔法書を解読しなきゃいけないんだから

 早くに始めましょう。」


そう言って、カノンは魔法書の18ページを開く。

魔法書にはハルウ語とは異なる言語が羅列されていた。


「その様子ですと、ヴィレさんは魔法書の中を見るのは初めてのようですね。」


「あ、アイリさん。魔法書がこんなになっているなんて知らなかったよ。

 みんなはすでに知っていたのか?」


「そりゃあね。ヴィレ君が編入する前の授業でも習ってるからね。

 それに、実物を見た経験のある人もいるだろうし。」

なるほど、アキトが言うように他のグループで驚いている人はいないようだ。


「ヴィレさんは魔法についてどれほどご存知ですか?」


「ほぼ知らないんだ。」


「えっ!?」

カノンが驚きの声を上げる。


「うん、僕もちょっと前に聞いてびっくりしてたんだ。」

アキトもカノンの反応に同調する。


一方、アイリは我関せずというように、黙々と魔法書を解読していた。


その後、俺はアキトとカノンから魔法のレクチャーを受けた。


魔法は火・水・風・土の4属性に分類されている。

昔からの分類方法で、現在では、複数の属性を持つ魔法なども多く存在している。

属性間での相性は術者によるとしか言えない。というのも、イメージの影響を受けやすいためだ。

高位魔術師になると属性の差はあまり見られないようだ。


そしてその魔法行使の方法はいくつかあるらしい。

今回行う詠唱行使、無詠唱行使、魔法術式を組み込んだ補助魔具による行使等だ。


魔法書は扱う魔法の詠唱呪文は精霊言語で書かれているが、見え方が人によって違う。

そのため詠唱内容が異なっているという。


事実、魔法書と一緒に渡された精霊言語表をもちいて解読していくが、皆呪文内容が違うようで解読するのに一苦労だった。


しかし、個人個人で呪文の内容が異なるのになぜグループ作業なのか。

それは、グループ内で呪文解読のコツを共有することと各自が呪文が違うことを認識するためだとサンカネル先生は語っていた。

だが、実際には高価な魔法書を人数分確保することが困難だったというのが真相らしい。

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