39 決闘の方法
夜、ルワンが宿から出て行ったのを確認したヴィレとカノンは、決闘について打ち合わせをしていた。
ひょんなことからマッケインと決闘することとなった。
決闘方法について、ルワンの提案により3日後に開催される闘技大会に出場することになった。
ヴィレとマッケインのより好成績を残した方の勝利とすることとした。
だが、そこで物言いが入った。カノンである。
いわく、自身が賭けの対象となっているのが納得いかないため、自分も出場する。
そして、一番になれば誰にも文句は言わせないというのだ。
それにより、闘技大会に3名が参加し、勝者を決めることとなったのだ。
「闘技大会は、参加人数によっては予選があるらしい。
本戦出場者は1対1のトーナメント方式を採用しているとのことだ。
殺し以外であれば基本的に何でもありだ。
上位入賞者には結構な額の賞金も出るらしい。
なお、大会には万が一に備えて治療班が待機しているとさ。」
ヴィレはルワンから渡された大会のチラシを読み上げる。
ふとカノンの方を見ると、カノンはやる気に満ち溢れていた。
「この大会はね、毎年行われるんだけど、上位3名までは上位大会への出場権を獲得できるのよ。
さらに、上の大会で好成績を残せれば家名に箔が付くわ。」
「詳しいな。」
「小さいころから聞かされてたもの。騎士爵の家としては重要な大会よ。」
「なら、準備をしておかないとな。
ということで、少し試したい魔法があるんだが、付き合ってくれるか?」
そう言って、ヴィレは皮鞄から本を取りだした。
それはウルの街の露店で購入した本で、中身はどうやら詠唱魔法が書かれているようだった。
「わかった。」
そうしてヴィレとカノンは特訓を開始していく。
* * *
「闘技大会の出場ですか?」
マッケインに尋ねたのは、人のよさそうな顔をした女性だった。
彼女はカルラと呼ばれているガウス教ウル支部の司祭であった。
「はい。参加させてはもらえませんか?」
「毎年行われている歴史ある大会ですし問題無いでしょう。
ただし、それとは関係なく、研究の協力もよろしくお願いしますね。」
「もちろん、わかっています。」
研究とは、異世界の知識をこちらの世界に転用するための研究だ。
異世界の理論とこの世界の理論が一致するとは限らないため、転用可能かをテストする。
コウなんかは、保護される前は戦々恐々としていたが、嬉々として研究している。
「それと、くれぐれも内密にお願いしますね。
ガウス教徒の中には過激派もいると聞いています。
ロスムイ教に保護されているとは言え、異世界人や転生者の立場は危ういものがありますから。」
カルラ司祭はマッケインにくぎを刺して、マッケインの寝所を離れて行った。
マッケインはベッドに腰掛け、何か誓うようにつぶやいた。
「俺が何もかも変えてやるさ。
カノンを救い出し、転生者の立場も良くしてやる。」
マッケインは、元の世界に帰ろうという考えなど既に無くなっていた。
その時、コンコンと部屋がノックされ、一人の男が入ってくる。
「失礼するよ。
おっと、なんかやる気に満ちてるねー。」
彼はサイ=アーガネットと言う転生者で、このガウス教の研究者の一人だ。
マッケインは彼の元で研究に携わることになっている。
「話は聞いたよ。大会に出るらしいね。
しかも、好きな女を賭けてだなんて、青春してるね。
研究も兼ねて、ちょっと手を貸してやろう。」
サイは研究者らしい顔で協力を申し出た。
「ありがとうございます。」
マッケインはサイの申し出に感謝した。
だが、彼は気付かなかった。サイの口許があやしく緩んでいるのを。




