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38 ウルの街の酒場

ウルの街は夜になっても活気づいている。

そんな騒がしい街の、一層騒がしい酒場では商人や衛兵等でごった返していた。

女性をナンパする者、酔って他者に絡む者、大声で騒ぐ者など様々だ。


その中でひと際豪快に飲む男達がいた。

がははと笑いながら豪快に酒を煽る男。筋肉隆々なスキンヘッドで体中に切り傷のあとが見られる。

剣を腰に着けているが、堅気のようには見えない。賊の類だといわれたほうがしっくりくるようだった。


「いやー、今日はちょろい仕事だったな、アニキ。」

「まったくだ。ちょっと小突いたらネズミのように逃げ出していってな。

 少し細工したら、簡単に教会に入っていったぜ。」

「それにしても、さすがアニキだな。」

「へ、よせよせ。でもま、俺くらいになればあんなの朝飯前よ。

 用心してる奴なんてのは、どっかで盗み聞きでもしてるからな。

 それらしいことを話してれば勝手に動いてくれらぁ。」

そう言って、笑いながら上機嫌に酒をあおる。


「お、景気がいいな、アーレス兄弟。うまく儲けたのかい?

 一杯おごるから、俺にも教えてくれよ。」


「なんだ、ジョンか。お前にはお世話になってるし、しゃーねーな。

 要は用心棒の一種よ。依頼主が教会だからたんまりさ。」


ジョン=スミス。彼はこのウルの街にいる情報屋の一人。

職業柄顔が広く、様々な人脈を持っている。アーレス兄弟もそんな人脈の一つだ。


「へー、教会の用心棒ね。それってどっちだい?」


「ここだけの話にしといてくれよ。契約が切れるまでは信用問題に関わるからな。

 羽振りのいい方っつったらわかるだろ?

 ただよ、場合によっちゃ対象を脅すなんてこともするからよ。

 なんかやばい話が出てきたらこっちにも情報くれよ。」

アーレス兄弟の兄であるフォボスはジョンに小声で話した。


「お前さん、見た目はともかく義理堅いから仕事があるんだろ。

 そんなことしていいのか?」


「場合によるさ。雇われる側も危険は事前に知っとかないとな。

 結局、命と金と両方欲しいのさ。」


「ごうつくばりはこの世界じゃ長生きしないはずだがね。

 わかった。俺にとっても貴重な情報源が居なくなると困るからな。

 また何かあったらよろしくな。」


そう言って、ジョンはテーブルに多少色を付けた金を置いて酒場を出ていく。

そのまま大通りを渡って別の酒場に入っていき、一人で飲んでるテーブルに座った。


「よう、楽しくやってるかい、兄弟?」


「楽しくやってるといいたいとこですが、そうでもありません。

 少々厄介ごとがありましてね。色々とあなたに頼ってるんです。」


「なるほど、そりゃそうか。

 俺を頼る奴は大体なんか企んでるやつだしな。」

ちょうど店員が運んできた酒を受け取りジョンはぐぃっと一気に飲みほした。


「それで、状況はどうです?」


「おたくの睨んだ通りさ。ガウス教会のやつら、転生者を集めてるようだ。

 今日も転生者が2人、教会に保護されてる。

 しかも、人を雇って保護されるよう誘導したらしい。」


「やはりですか。何をしようとしてるんでしょう?」


「そこはこれから調べるところさ。

 別件については、まだ報告できる段階にないね。」


「そうですか。では引き続きお願いします。」

そう言って、金を置いて男は出ていく。


ジョンは男が酒場を出ていったあと、ひとりごちた。

「どうやら賑やかになっていきそうだ。」


一方、外に出た男も、ロスムイ教会の方向に歩きながらひとりごちていた。

「はぁ、面倒なことになってきましたよ。ドルフ様。

 どうやらカール様はトラブルに巻き込まれる体質のようです。

 そして、類が友を呼んだのか、ご友人たちもなかなかトラブル体質のようです。」

これから起こるであろう出来事に愚痴をこぼさずにはいられなかった。

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