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33 ウルの街の出来事

ウルは行商人の中継地点として栄えている街である。

交通や商売がしやすいように区画がきれいに整備されているため、商人達は好んでこの街にやってくる。

ウルの街は国内外から様々な人種、様々な商品で溢れており、最新の技術や情報などもこの街で入手することができる。

また、警備体制も厳重であるため、街の治安も良いのも人気の理由だった。

そのため、四六時中街は人でごった返し、お祭り騒ぎのような賑やかさを演出している。


そんな街のはずれにマジックアイテム専門ショップがある。

その店内にはガラス製のショーウィンドウに様々なマジックアイテムが置かれている。


カランカラン。と小気味良いカウベルの音が鳴り、店のドアが開いた。

そこに、紫色に白いラインが1本入ったローブを着た男が入ってきた。


「らっしゃい。」

椅子に座った無愛想な店主がじろりと客を一瞥すると、読んでいた新聞をたたみ席を立ち、店の奥へと歩き出した。

ついて来いということを理解したローブの男は、店主についていった。


やがてとあるドアの前にやってくると、店主はトントンとノックした。

「例の男を連れてきたよ。」

そういうなり、店主は踵を返して、店番に戻っていった。


残されたローブの男が待っていると、ドアが開き、青白い顔の男が出迎えた。

髪は所々に白髪が混じり、目元に隈がある。

無精ひげが伸び放題になっており、見るからに不健康そうな男がいた。


「君があいつの言っていた男だね。

 とりあえず立ち話も何だから入って話そう。」

ローブの男はその不気味さに少したじろいだが、無言でうなずき歩を進めた。


部屋に入り腰を据えると、ローブを取ると黒い髪に、銀色の瞳をした15~16歳ほどの少年のようだった。

「は、はじめまして。

 私はマッケイン=ドーラと申します。」


「私はコウ=タキス。あいつから話は聞いてるよ。

 異世界転移の魔法だろ。それで、お前はなぜそんなものを望む?」

コウはマッケインを睨むように見た。


「それは、私があなたと同じく異世界からやってきた者だからです。」

そう言ってマッケインは、左手首を見せる。


そこにはコウが作成した腕輪型のマジックアイテムがあった。

マジックアイテムはそれぞれ作り手の意匠デザインが入っているため特定できる。

コウはその意匠デザインに元の世界の言語の文字を彫り込んでいた。


「その腕輪の文字からここにやってきたか。

 だが、私の質問はそれじゃない。なぜ欲するかだ。」


「異世界に転移されたのなら、逆もできるはずだ。

 俺は元の世界に帰りたい。」

それはマッケインの決意だった。


「この世界は嫌いか?」

コウはマッケインに尋ねる。


「いや、嫌いじゃない。

 実際この世界に来て数年は楽しくやってきた。

 だが、この世界は俺の世界じゃない。だから帰るんだ。」


「そうか。その程度なら残念だが、お引き取り願おうか。

 命を懸ける覚悟ができてから出直して来な。」


「ちょっとまて、それはないだろ。

 俺はユーイ先生にあんたならどうにかしてくれると言われてここに来たんだ。」

マッケインは顔を真っ赤にさせて、席を立ちさらに抗議しようと詰め寄る。

だが、ちょうどその時、非常ベルがジリリリリと鳴った。


非常ベルは不法侵入者か店番をしている店主が異常を感じたときに鳴る仕組みになっている。

「ちっ、お前、誰かに狙われているな?」

コウは舌打ちしてマッケインを睨んだあと、すぐに席を立ち荷物をまとめ始めた。

ここから逃走するための準備だった。


「そんなバカな。尾行はすべて巻いたはずだ。」

一方のマッケインは動揺し、慌てていた。


「仕方ない。お前が捕まってこっちまでとばっちりを食うのも困る。

 緊急事態だから、逃げる手助けだけはしてやる。俺についてこい。」

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