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31 ケインとヴィレ

ヴィレ自身、ケインの【影糸】を防いだことを驚いていた。

何かを理解したわけではなかったが、身体が無意識に反応していた。


そして、ケインがサンカネルたちを殺すと宣言した今も無意識に動いていた。

ヴィレはケインの眼前まで一気に距離を縮めており、ケインの胴を狙い剣を振るう。


ケインは一瞬、反応が遅れたものの、バックステップで距離を取りながらヴィレの剣をかわす。

すると、上から氷の連弾が降ってきた。

それはヴィレ自身も巻き込んだ魔法行使であった。


サンカネルはヴィレの動きに気づけず、呆気に取られていた。

ヴィレの動きは明らかに今までの模擬戦では見せなかったような動きだ。

しかも、自分自身を巻き込んでの魔法行使など、通常の魔術師のセオリーに反する行動だ。


「な、なかなか無茶なことをしますね。

 かなり、効きました…よ。」


ケインは氷の連弾を防ぎきれなかったのか、頭や右肩、腹などから血が出ている。

一方のヴィレも、自分の魔法で左腕と右足にケガを負っていた。


 *  *  *


ヴィレは自分自身のことが分からなかった。

気が付いたときには記憶がなかったからだ。


時間がたつにつれて、ヴィレは自身のことを少しずつだが理解してきた。


記憶の断片を思いだすことがある。

オイオット学院で知識や経験を積んできたことで、思い出すきっかけになったのだろう。

ヴィレは、それとともに思考や性格も変化してきているように感じていた。


それだけではない。

サンカネル先生との模擬戦を通して、次第に身体の反応が良くなっていくのを感じていた。

それも、熟練度が高まる感じではなく、忘れていたものを取り戻すような感覚だった。

おそらく、身体の方にも戦闘の記憶があり、それが残っているのだろう。


だから、ヴィレは、何かあれば自分の直感と身体に染みついた記憶を頼ろうと考えるようになった。

そのおかげでケインの発動した【影糸】にも直感で対応することができた。


そして、ケインがサンカネルと問答をしている時、何か危ないと直感が叫んでいた。

そのため、ヴィレは自身の身体強化と氷の魔法を準備し、先手を打つことにした。


 *  *  *


カール驚いていた。

この金縛りはケインの魔法である。それはわかる。

サンカネル先生がその魔法を防いだのも、熟練の魔術師なら可能だ。

しかし、同じオイオット学院の生徒の1人であるヴィレが防いだことに驚きを禁じえなかなった。

さらに、ウォーレットでさえダメ―ジを与えることができなかったケインにダメージを与えたのだ。


「なんだ、あいつ。

 やっぱりどこかのスパイとして学院に潜り込んだ奴か?」

カールは思っていたことを無意識に口にしていた。


「ん、あいつはお前の配下じゃないのか?

 いいな。面白そうだ。

 なら、あいつをもらってもいいか?」

隣にいるドルフから尋ねられた。

カールと同じように金縛りで動けない状態であるにも関わらず楽しそうだ。


「ドルフ兄さん、この状況でよくそんな余裕がありますね。」


「はっはっはっ。どうせ動けないんだ。

 考えることか相談ぐらいしかすることができんだろう。」

カールは兄のその楽天的発想にため息をついた。


しかし、ドルフのいうことはもっともだった。

とりあえず、今後の対応を相談するか。


「ドルフ兄さん。今後のことを相談したいんですがいいですか?」

「お、やっと話を振ってきたか。」

ドルフはカラカラと笑った。

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