26 一変する状況
『カー ザザッ どうし ザザッ』
(通信が上手くいかないってことは、妨害されているか。
とりあえず、この部屋から出たほうが良さそうだ。)
カールはそう判断するとすぐに部屋を出た。
右隣部屋に待機していたワルドも飛び出してきた。
左隣の部屋からは粉塵がまっており扉は壊れていた。
すぐに、その部屋の様子を見に行く。
壁に大きな穴が開いているが、その外には何もない。
カールは火薬の匂いを感じた。
注意をこちらに引き付けたということは、俺を足止めする狙いか。
そうなると爆発は陽動の可能性が高いな。
「ワルド、マーリンとウォーレットと合流するぞ。」
こういう時は使用人から情報を得るのが鉄則のはず。
まあ、ゲームの世界ならだけど。
ワルドは無言で頷き、カールの前を走り進む。
* * *
「何か大きな音がして通信が途絶えました。」
アイリの報告にヴィレたちはどうするか戸惑っていた。
というのも、街が急に煩くなってきたのだ。
宿の外には多くの武装した兵士たちが、ピジョー領との境界付近に集まりだしたのだ。
ピジョー家の兵士たちも警戒しているが、今にも争いに突入しそうな勢いだ。
「なんだか、雲行きが怪しくなってきましたね。」
サンカネルは目を細め、兵士たちの状況を見守っている。
「ピジョー家では何かが起こっているはずです。
このままではカールとワルドの命も危ないですね。」
ヴィレはそう言ってサンカネルに視線を向ける。
「何か言いたそうですね。ヴィレ君。」
「サンカネル先生なら知ってるんじゃないですか?
ピジョー家にすぐ駆けつける方法とか?」
ヴィレの科白に、アキト、カノンが反応する。
「通信が戻りました。
カール様は無事ですが爆発があったとのことです。
何者かの襲撃を受けている可能性があります。」
ふぅっとサンカネル先生は一息つく。
「分かりました。
これは、生徒にはあまり知られたくない魔法ですが仕方ありません。
風魔法の中には術者自身を飛ばすことができます。
空を飛んでいくという表現が近いでしょうか。」
「想像はしていたけど、本当にそんな魔法があるんですね。」
アキトはボソッとつぶやき、目を輝かせていた。
反対にサンカネル先生はテンションが低めだ。
「ですが、飛ばすだけです。
方向は射出角度でどうにかできますが、場所は運しだいですね。
後、着地の問題があります。
風魔法を地面に打ち付けてスピードを殺しても、重傷を負う可能性が高いです。」
「治癒魔法やマジックアイテムを使えば治療はできます。
今は一刻を争うとき。できる手を打ちましょう。」
覚悟を決めたアイリの言葉に、全員が頷くしかなかった。
ヴィレたちはカールのもとに駆けつけるべく、文字通り飛んで行った。
* * *
廊下を掛けていると正面からウォーレットとマーリンがやってきた。
「カール様、無事でしたか。」
「ええ、ですが何があったんです?
部屋の近くで爆発がありましたけど。」
ウォーレットが怪訝な顔をする。
「そちらもですか。
ドルフ様の部屋の近くでも爆発がありました。」
「ピジョー家の者が意図的に狙われているな。
それでは、父は無事か?」
ドガァッ
カールの科白に重なるように爆発音が再び起こった。
「マルティン様の寝室の方からのようです。」
ウォーレットが父の寝室の方に急ぐ。
カール、ワルド、マーリンも後に続く。
父の寝室からは煙が立ち込め、大きな爆発があったことを物語っていた。
「マルティン様…。」
ウォーレットは青ざめた顔で小さくつぶやいている。
「何があった。」
ドルフが大声で父の寝室に入ってきた。
立ち尽くすカールたちを見て、ドルフは状況を理解した。
マルティン=ピジョーは死んでいたのだ。




