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24 背景と交渉内容

ドルフは一つ深呼吸をしてからカールに問いかける。


「一つ確認したい。

 カール、お前は転生者という理解でいいか?」


その言葉にカールとワルドは固まった。

この場でカールが転生者だと知っているのはワルドしかいない。

カールはそう思っていただけに、ドルフの科白は衝撃的だった。


「なぜ・・・、そう思うのですか?」

カールはようやくそれだけを絞り出すと、その様子を見てドルフはにやりと笑った。


「さっきとは逆になったな。

 理由は転生者の行動には特徴がある。

 その特徴にお前の行動も当てはまるからだ。」


「転生者の行動の特徴?」


「ああ、そうだ。まあ、お前達が知らないのも無理はない。

 貴族のそれも上位に位置する家の跡取り候補、特に長男と次男だけが受ける教育で知ることだからな。

 色々と教えられたが、その中に転生者に関する事柄もあってな。」


ドルフはちらりとルワンの方を確認する。ルワンは何食わぬ顔で平然としていた。

そこで、ドルフは話を再開することにした。


「ウルハメード建国には異世界から召喚された勇者が関わっているのは知っているな。

 そいつらは建国後、異世界の知識をもとにこの世界の技術革新や経済革新を行い、社会の礎を作ったんだ。

 そうなれば当然だが、貴族達も異世界の知識をもつ者を囲い込もうと考えたが、競争率が高すぎた。

 異世界の知識をもつ者は限られていたからな。

 そこで考え方を変えたんだ。新たに異世界から連れてくればいいではないか、とな。」


「なっ!!」

カールは絶句した。


「すごいだろ。貴族達は自らの利益のために異世界人の召喚という方法を真剣に考えたんだ。

 貴族にお抱えの魔術師が多くいるのはそういった事情もあるんだと。

 そこからは各家毎の秘匿技術なので、どの家がどういった方法をとっているかは知らない。

 

 ピジョー家では、早々に異世界人の召喚ではなく、異世界人の転生術を磨いた。

 見知らぬ他人では無く、自分たちの子孫が異世界の知識を保って生まれてきた方が、御しやすいし政治的にも利用しやすいからな。

 当然、父であるマルティンも俺達兄弟に転生術を施したらしい。

 まあ、俺は成功しなかったようだがな。」


「なるほど、それで俺が転生者である可能性があると。」 


「そうだ。異世界転生者の傾向にもあうからな。

 他にも転生者と呼ばれた者達はいるんだが、行動に特徴があるんだ。

 すべてでは無いが、幼少期から算術が得意だったり、知らない言語を読めたりする。

 魔法に対しての理解力が高かったり、独特の剣術を身につけていたりする。

 他には、やたらと難しい本を読み漁り、よくわからない質問を大人に投げかけて困らせたりな。」


カールはその言葉にはっとなった。

幼い時に魔法が使えることに夢中になったり、魔法関連の書物を読み漁っていた時期がある。

その頃はカールにとって接点があったのはワルドとルワンくらいであり、年上のルワンにはよく質問したりしていた。


ドルフはカールの動揺を見て取り、にやりとしたり顔になった。


「どうやら、当たりのようだな。

 よし、だったらここからが本題だ。

 俺の保護下に入り転生者であることを公表してくれ。

 もしくは、公には暗殺されたということにしてくれ。」


「どういうことですか?」

ドルフの不穏な科白に、カールの眉が吊り上がる。

自分でも感情を抑えきれていないことはわかっていた。


「父はピジョー家のことでだいぶ焦りがある。

 ああ、その焦りは、今回お前が起こした事件よりも前からだ。

 原因は長男のルイスだと俺はにらんでいる。

 あいつは好き放題し過ぎていて、手が付けられん。

 いつ他諸侯から責められる口実になるかわからんからな。

 しかも、あいつはピジョー家をまとめるほどの器は無い。」


「なら、ドルフ兄さんが家を継げばいいじゃないですか。

 そこまでわかってるなら父も文句は言わないでしょう?」

カールは不満そうにドルフに答える。


「残念だが、父はその判断ができない。

 よっぽど何か武勲や功績でも無ければ長男が家を継ぐのが習わしだからな。

 そんな中、長男を跡継ぎ指名しなければ、長男が無能だと外にアピールするようなものだ。

 家名が傷つくようなことを父はしないしできないだろうよ。」


「話が見えませんね。

 どうせ、俺は家名を継ぐことはありません。

 冷たいようですが家督争いはドルフ兄さん達で好きにやってくださいよ。」


「まあ、もう少し聞け。

 そこで、保険としてお前を公爵家なり王族に婿入りさせることでピジョー家の安泰を狙ったんだよ。

 今回の事件でその目論見も失敗しそうだがな。」


「転生者として公表すれば、俺の価値を再びつり上げることが出来る。

 それは公爵や王族との縁をつくる芽も出てくるということか。」


まるで、ニュースによって株価が上下するような株取引のような話だ。

この場合、俺はバイヤーじゃなく株そのものというのが滑稽だが。


「そうだ。

 その際、俺が保護したとあれば俺の株も上がり、ピジョー家の後継に一歩近づく。」


「なるほど。ですが、暗殺というのはどういうことです?」


「お前、父にピジョー家内部に自分を狙った犯人がいると進言しただろう?

 それが外に漏れる前に、他の諸侯の手によって暗殺されたことにする。

 俺としては、それを口実に武勲を立て、家を継ぐというわけだ。

 もちろん、実際には殺すことはない。

 ただ、お前はピジョー家の者では無くなり別の名前で生きていくことになるがな。」


重大な言葉をドルフはずいぶんあっけらかんと言うもので、カールは驚きを通り越して乾いた笑いがでていた。


「第三の選択肢は?」


「下手なことはせんほうがいいぞ。

 俺の部下たちは強い。

 腹違いとはいえ、10以上も離れた弟を殺したくはない。」


「………。少し、考えさせてください。」

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