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20 マルティン伯爵への報告2

ピジョー邸の応接室には長テーブルがあり、それを囲うように一人掛けのソファーが10脚並べられている。

部屋のドア側にカールが座り、ワルドとウォーレット、マーリンはカールの後ろで立っている。

カールの向かいではマルティンが座り、ナニィがマルティンの後ろで立って待機している。


緊迫感のある雰囲気の中、カールはマルティンに報告する。


「今回、噂になっている件について報告いたします。

 既にお聞きの通り、私は魔法実習の際に事故に会いました。」


カールはマルティンとナニィの様子を伺うが、特に反応は無い。


「ですがこの事故、あえて事件と申しましょう。

 この事件の裏には陰謀があります。

 私は陰謀に巻き込まれる形で今回の事件に発展しました。」


そのカールの発言に、皆言葉は発しないものの場の雰囲気が変わったことがわかる。

「ほう。」


先ほどまで不機嫌だったマルティンは一転興味深そうにしている。

口許はにやりと悪い笑みがこぼれているほどだ。


「ですが、残念ながら犯人の特定には至っておりません。」


「何!? なら、どうして陰謀だと解る。」

マルティンの表情が少し険しくなる。先ほどからコロコロと百面相のように表情が変わっている。


「それは後で説明致します。

 次に、今回の件で現在、私は魔法行使に支障をきたしています。

 専門家からは一時的なものだと言われていますが、上手く魔法を扱えません。」


「なっ!!」

カールの説明にマルティンは驚きのあまり言葉を詰まらせる。

それはそうだ。陰謀によるものであれば周囲に説明もつくうえ、将来カールが魔術師になるという可能性は残される。

しかし、魔法が使えないとなれば話は別だ。陰謀によるものでも、カールが大成することはなくなってしまう。

そうなれば、公爵家や王族との縁を結ぶこともできなくなる。


「それは、いわゆる魔法障害に掛かっているということですか?」

「ああ、その通りだ。」


ナニィの質問にカールは肯定する。

魔法障害は、怪我を負った魔術師がなりやすい症状の一つだ。

肉体的なものか精神的なものかは解明されていないが、魔法をうまく扱えなくなる場合があると言われている。

一度そうなった者は妙な癖がつくことが多く、魔術師としての道を諦めざるを得なくなるものが後を絶たない。


カールとワルド以外皆、驚いた表情で固まっている。

(ふふふ。なるほど。

 ヴィレが突飛な発言をして何をニヤニヤしているのかと思っていたが、周りの反応を楽しんでいたんだな。

 同じ立場になってみて初めて分かるが、あいつの気持ちもわからなくはないな。)


「そう…か。では、犯人の特定を急がねばならないな。

 カールよ、安心しろ。犯人には必ず罪を償わせてやる。

 ナニィ、至急諜報員を使い、犯人を特定しろ。早急にだ。」


「は、承知いたしました。」

マルティンはナニィに犯人捜索の指示を出すが、そこにカールが割って入る。


「ちょっと待ってください、父上。

 犯人の件について、今から説明します。

 先ほど、今回の件は陰謀によるものだと言いましたが、外部の者による犯行ではないかもしれません。」


「それはどういうことだ?

 まさか…。」

マルティンは一瞬意味が分からなかったが、次第に頭に血が上っていくようで顔に赤みが増していく。


ヴィレ達が導き出した事件の着地点はそこにあった。

『何者かの陰謀に巻き込まれカールの事件が起こった。

 しかし、それがピジョー家の内部であるかもしれないと匂わせること』


ピジョー家はまだ後継者は決まっておらず、家督争いのただなかにある。

そこに野心があってもおかしくはないだろう。

それはつまり、他の候補者を蹴落とすためにあらゆる手段を講じてくる可能性があるということを示している。

今回のカールの件が、その兄弟達によるものだとマルティンに暗に印象付けることでこの件をうやむやにしようと考えているのだ。


「あー、それでかぁ。」

「これ、やめんか。伯爵様たちがお話し中であるぞ。」

マーリンが間の抜けた声をあげ、ウォーレットが慌てて止めに入る。


「なんだ?この際構わん。話せマーリン。」

マルティンはマーリンに話すよう促す。


マーリンは一歩前に出て、軽くお辞儀をした後、帰郷の際の襲撃事件の話をした。

どうもタイミングが良すぎると感じていたようだ。


今回の報告について、マルティンはこの場にいる全員に緘口令が敷し命令を下した。

それはつまり、この件についてはこれ以上突っ込まないという意思表示に他ならない。

まぁ、真実を暴いてそれがピジョー家の更なる恥が出てきては身も蓋もない。


ただ、マルティンのことだ。陰謀に巻き込まれたという点だけを周囲に言って回る可能性もある。

取り合えずその場をしのいだといったところだった。


 *  *  *


カールとワルドはマルティンへの報告の後、ピジョー家の自室に戻るために廊下を移動していた。

そこに後ろから声を掛けられる。


「よう、カール坊じゃないか。久しぶりだな。元気にしてたか?」


振り返ると、カールが警戒している兄たちの1人、マルティン=ピジョーの次男であるドルフ=ピジョーがいた。

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