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11 夜の特別授業

オイオット学院は特例を除き全寮制の教育機関である。

そのため、基本的に寝食は学院の中ということになる。

学院側に申請すれば外出も許されるため、学外に出ていく生徒もいる。


そしてオイオット学院は夜になると寮を除いて静まり返っている。

しかし、ここ最近、夜になると中庭が騒々しくなっている。


何かが爆発するような音。金属同士がぶつかる高音。

人の声。といっても楽しく談話しているような声ではない。

指揮をするような声や悲鳴に似た声が漏れてきていた。


「カノン、右だ。」

カノンは指示通り右に横に飛ぶ。カノンの居た場所に火の球が飛んで来ていた。


「ヴィレ、正面に魔法が来るよ。」

カノンの言葉に従い、ヴィレは正面に防御魔法を展開する。

飛んできた火の球の連弾を弾く。1つ、2つ、3つ目を弾いたところで防御魔法の効力が失われていく。

4つ目は防御魔法により速度を殺したため身体を捻って避ける。


今、カノンとヴィレはオイオット学院の中庭でサンカネルと対峙している。

サンカネルは魔法を駆使し、カノンとヴィレを翻弄しているところだ。


カノンの方は身に付けたマジックアイテムに魔力を注ぎ込み、身体能力を向上させ、サンカネルに最短距離で突っ込んでいく。

カノンは脇構えの形を取り、サンカネルに迫ると下から上に振りぬく。


サンカネルはバックステップしながらカノンの剣を自分の剣の腹で受け、剣の勢いを殺す。

それと同時に、空いている左手で魔法を発動すると、隙を窺っていたヴィレに石の弾が飛んでいく。


ヴィレは再び防御魔法を展開するが、石弾はその展開した防御壁を貫通しヴィレに当たる。

驚きを隠せないでいたが、ヴィレは身体を捩り、とっさに急所を外す。

致命傷というほどではないものの右脇腹に少なくないダメージを受けた。


一方のカノンは、振りぬいた後に隙が出来た足もとを狙われた。

サンカネルに足を掛けられてバランスを崩し、地面に仰向けに倒されたところに剣を突き付けられる。


「そこまでですね。」

サンカネルは剣を抜き、終了宣言をした。

ヴィレ、アキト、カノン、アイリ、ワルド、カールがそれぞれ地面に倒れ、肩で息をしていた。


 *  *  *


サンカネルが出した条件。

それは、カール達に対する実践的指導であった。


カールはその血統のせいで、日常的に命を狙われてもおかしくはない。

今回はそこまでの状況にはならなかったが、自衛の力をつけなければいずれ命懸けの状況に陥るだろう。

オイオット学院はその学院の性質上、基礎的な要素しか教えることはできない。


通常は上位の学院でより高度な教養を学ぶのだが上位の学院に進学するということは、カールの才能を世に知らしめることになる。

それはサンカネルの雇い主の依頼に反するため、サンカネルが指導することで、カールの才能を秘匿しつつ伸ばしていくことができる。

ついでにカールの傍にいる者達もサンカネルの指導を受けることになったのだ。


ヴィレはサンカネルとの戦いの後、あの中庭での交渉時に対決することにならなくてよかったと胸を撫でおろしていた。

サンカネルと対決するという最悪の状況を想定してアキトと訓練をしたものの、今回の戦闘を経験してみて敵うとは思えなかったからだ。


ヴィレとカノン以外にも、カールとワルド、アキトとアイリが2人一組となりサンカネルと闘ったが、どの試合でもサンカネルの圧勝に終わった。

サンカネルは魔法の技術はさることながら剣技も相当なものだった。


「やはり、カール君が一番魔力保有量が多いですね。ただ、魔法の発生速度と正確性が課題です。

 アキト君は魔法の正確性と威力はいいですが、発生速度が難点ですね。

 まあ、これは工夫次第で利点にもなりますので、研鑽を積むことでかなり有効になるでしょう。


 カノン君とワルド君は騎士の子というだけあって、体術や剣術はかなりのものです。

 ただ、2人とも身体強化を上手く使えていません。

 今は身体強化のマジックアイテムを駆使していますが、近いうちに魔法での身体強化を会得したほうがいいですね。

 詠唱魔法であれば会得は難しくありませんから、頑張って習得しましょう。


 アイリ君は魔法は全般的に得手不得手はありませんが、全体的に威力が弱い傾向にありますね。

 攻撃魔法よりも防御魔法や治癒魔法を重点的に学習していったほうがよさそうです。


 そしてヴィレ君。魔力量は少ないですが、魔法の制御や調節に関しては一番上手いですね。

 これは魔法の経験によって身に付いて行くものですが素晴らしいものです。

 ですが、魔法行使の際に何か間が開くというか妙な癖があるようですね。

 それは早めに直さないと致命的なことになりますよ。」


さらには、対戦した相手の感想を述べるだけの余裕を残している。

サンカネルは伊達じゃないことをヴィレは改めて実感した。


「皆さん、少なくとも私と1対1で戦って逃げ切れる程度には強くなってください。

 私程度なぞ、世の中にはざらにいますからね。

 今後、そういった格上相手にも対処できるだけの知恵と経験を備えていないと生き残れませんよ。」

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