初めてのクエスト
ほのぼの……
「にしてもあれがクエスト扱いになるとはな」
レイクと別れた俺はログを見る為自分のステータスを確認していた。
マリウスとの戦闘も経験値に入っているのか多少ステータスが上がっているた。
―――――――
クレア・ジークス
種族:人族
職業:見習い槍士 Lv.3
見習い走兵 Lv.2
筋力 9(↑1)
耐久 10
敏捷 15(↑2)
器用 8
魔力 8
<スキル>
【堅牢 2】【使役 1】【気配察知 1】【健脚 3】
【格闘術 1】【剣術 2】【盾術 2】【槍術 3】
【英雄の神足 2】
<称号>
友と呼ぶもの
――――――
<受注クエスト>
『防具屋の立て直し』
――――――
目立ったところはは特にないが各ステータスが少しずつ上がっている。()で書いてあるのは職業レベルが上がったことで割り振られた値だ。
新スキルの追加は無い。やはり自然と取得することはできないのかもしれない、神殿に行くか誰かにおしえてもらえということなのだろう。
もう一つ<受注クエスト>という欄が増えている。
載っているクエストをタップしてみる。
―――――
『防具屋の立て直し』
受注条件:レイクの悩みの相談を聞く。
達成条件:?????
―――――
うん、わからん。達成条件が?で見れない、もしかしたらいくつかの条件があるのかな?まあ、どうせすぐに解決するような物でもない、長い目で見よう。
さて、武器も防具も新調することが出来た。
予定では冒険者登録をしてクエストに行くつもりだったが今は夜だし現実時間も12時を回っている、これもマリウスとのPvPで時間を取られたせいだ。
徹夜でゲームするのも体に悪い、俺は無理することなくログアウトしたのだった。
◆◆◆◆◆◆
次の日、『HOH』にログインするとちょうど正午ほどの時間だった、天気も晴れだ。
予定通り俺は冒険者ギルドに向かう。
特に何事もない、ほのぼのと露店を見ながら歩く。途中でポーションをいくつかとナイフを買っておいたぐらいだ。
こういうところを見るとたいして現実と変わらない気がするな。
あっという間に冒険者ギルドに到着した。
流石に二度目なので気張らずに気楽に扉を開く、初めて来た時と変わらないたくさんの冒険者が食事をしたり話したりしている。
だけど前回との少し違う光景。
レーティアさんたち受付嬢の担当する列にプレイヤーらしき冒険者の長蛇の列が出来ている。
おかしくって思わず口角が上がる。
するとレーティアさんと目が合ってしまった。ナンパされて困っているらしく助けを目で求めてくる。
「プッ」
耐え切れず噴き出してしまった。
凄い形相でこっちを睨んでくるが助ける方が無理というものだ、そんなことしたら俺の方が吊し上げられて殺されてしまう。
怖い怖い。
俺は逃げるように比較的すいている男性の受付に並ぶ。
その時だった。
「君たち‼そんなに偏って並んだら受付の麗しい女性が困ってしまうだろ‼」
俺の後に入ってきたイケメン顔のプレイヤーが並んでいるプレイヤーに大きな声で注意する。
そのままそのプレイヤーはレーティアさんの前まで行くといきなり自己紹介をし始めた。
「っつーーーー‼‼ ヒーヒーフー、ヒーヒーフー」
勇者だ、勇者がいる‼てかもうダメ、耐え切れない。
他のプレイヤーに縛られて外に連れていかれるプレイヤーを見て、俺はこらえきれずに腹を抱えて床を叩く。
朝一番からこれはきつい、腹筋が崩壊してしまいそうだ。必死に過呼吸を抑え込む。
「ッつ⁉」
笑っているといきなり【気配察知】が殺気を捉えた。
驚いて顔を上げると同時に四角いものが俺に向かって飛んでくる。
速い‼‼
「いっつ~~‼」
ギリギリで腕で防いだのにHPが二割も持っていかれた。
あ、あぶね~‼マリウスの攻撃よりも重かった、てか頭に当たっていたら絶対デスペナルティになっていたぞ。
飛んできたものは受付で使うボードだった。レーティアさんの方を見るとこっちを人を殺せそうな目つきで笑っている。というか現在進行形で気配察知にガンガン反応している。
やばい、やばすぎる。
「……何しているんですか?」
俺が並んでいた受付の男性が困ったように見てくる。どうやらいつの間にか俺の番まで回ってきたらしい。
灰色の髪の優しそうな顔の男性だ、冒険者ギルドではなんだか珍しい気がする。
「いや、ちょっと笑いすぎて怒られてしまって」
立ち上がりながらさっき買った回復ポーションを飲む。
「気を付けてください、彼女はバジルさんの妹です。次は確実に死にますよ」
彼は真剣な目で俺に話しかけてくる。
おそらく本気で俺の心配をしてくれているんだろう、ありがたくご忠告を聞き入れておく。てかほんとに怖すぎる。
「ええ、ついさっき体験したので分かってます」
「ならいいんですがあまり怒らせると……。ゴホン、ではご用件はなんでしょうか?」
彼はレーティアさんに睨まれて本題に入る。
「冒険者ギルドの登録をお願いするよ」
「わかりました。ではこのカードに血を一滴お願いします」
俺は差し出された白いカードに血を一滴垂らす。すると同時に無地だったカードに俺の名前や職業が浮かび上がってきた、凄いファンタジーだ。
「これで登録は完了です。このカードはクレア様の身分証明の代わりになります、どこの街でも出入りするのに必要になるのでなくさないようにお願いします」
なるほど、便利なものだ。
思ったよりも簡単に登録が済んでしまった。
「次にランクについて説明します。ランクはFランクからSランクまであります、クレア様はFランクからのスタートとなります。
クエストをたくさんこなせばランクは上がっていくので頑張ってください」
うん、何と言うか定番だな。
「クエストは入口付近に貼ってあるクエストボードに張り付けてあります。
クエストは最高でも自分のランクの一つ上までしか受けられません、クエストはクエストボードからとった時点で受注状態となるので気を付けてください。
何かご質問はありますか?」
「討伐クエストはどうしたら達成となるんだ? 何か討伐証明とかいるのか?」
「いえ、モンスターは討伐すると先ほどお渡しした冒険者カードに記載されるので討伐証明はいりません。
しかしクエストによっては必要な場合がありますが、その場合は横にある素材交換所で渡すことでクエスト達成となります。採取クエストも同じしようとなります。他にはございませんか?」
なるほど、横を見ると冒険者が持ってきたモンスターのアイテムらしきもの鑑定してお金を渡している。
しかし俺の場合はしばらくはレイクの方に売るので使う機会は少なそうだ。
「いや、ありがとう、もう無いよ。関係ないんだけど、この冒険者カードってどうなってんの?」
ついでにさっきから気になっていたカードについて聞いてみる。
「これは冒険者ギルドの創立者が古代遺跡で発見したマジックアイテムです。どうなっているのかは分か
りませんが今は量産されていますね。いわゆる古代の遺産、ロストアイテムです」
遺跡か~、遺跡もあるならダンジョンもあるのだろう、なんだかワクワクする。
「なるほど、じゃあ最後に名前を教えてくれ、これ全員に聞いているんだよ」
「ははは、そうなんですか。もちろんいいですよ。私の名前はオクスです、これからのご活躍期待してい
ますね」
俺は無事? 冒険者登録することに成功したのだった。
『ピコン‼ 『受付:???』➡『オクス』』
◆◆◆◆◆◆
早速クエストを受注するためクエストボードを眺める。
このケルディアは外交都市なだけ合ってたくさんのモンスターが存在している。しかし今の俺が倒せそうなのは数少ない。
俺はたくさんのクエストからいくつかまとめて受注することにする。
―――――
『ホーンラビットの討伐』:常駐クエスト
ホーンラビットを10体討伐
報酬:1500$
『ゴブリンの討伐』:常駐クエスト
ゴブリンを10体討伐
報酬:2000$
『薬草の採取』:常駐クエスト
薬草の納品
報酬:薬草の数×100$
―――――
「こんなもんかな……」
一度に受けられるクエストは最高5つまでだ、今回俺が受けるのは駐在クエスト、つまり常に張られているクエストだ。
出来るだけ簡単そうなクエストをピックアップしてみた。
クエストの紙をボードからはがすと光の粒となって消えてしまった、ステータスから確認したがちゃんと受注出来ているようだ。
俺は早速クエストに向かう、目指すはケルディア北門の草原『ディアノ平原』だ‼
早速『ディアノ平原』に辿り着いたのだが……
「思ったより人がいるな……」
平原ではたくさんのプレイヤーがパーティー単位でモンスターを倒しまくっていた。
モンスターがどこからか現れる度に競い合うようにプレイヤーに狩りつくされていく。
「これじゃあとてもモンスターを倒すなんて無理だな……」
仕方なく俺は平原の奥、より街から離れた場所に行くことにする。モンスターは街から離れるほどレベルが高く、強くなる。街の近くは安全の為に定期的に狩られてしまうからだ。
街から一キロほど離れるとプレイヤーの姿もほとんど見えなくなってきた。ここならだれにも邪魔されずに倒すことが出来るだろう。
早速、気配察知にモンスターが引っかかった。
そのモンスターはホーンラビット、赤い目に鋭い角を持ったウサギのモンスターだ。
ホーンラビットは俺を見るなり突進して自慢の足でジャンプしてくる。が思ったよりも遅い、マリウスの方がまだ早かった。
横に避け着地の瞬間を狙って長槍を振るう。一撃では倒せない、そのまま流れるように蹴りを決める。
【格闘術】と【槍術】の合わせ技だ。二撃でホーンラビットはその場に倒れ込む、思った以上に新しい長槍の攻撃 力が高いようだ。
しかし倒したはずのホーンラビットは光の粒とならずに丸ごとそのままの状態でその場に残る。
「え……もしかして自分で解体するの⁉」
こう、なんて言うか倒したら光の粒となってドロップアイテムが残るのかと思っていたのだが。なんだか変なところでリアルだな。
「仕方がない……解体するか」
解体の仕方自体は知っている、暇だったので色々な動画サイトで見まくったからね‼
まずは首を切って血抜きをして腹から胃や腸をを取り出す、その後は足の骨を外すんだっけ?
「うわっ、グロイな……」
正直血などには耐性はあるが実際にやってみるとよりグロイ。掴んでいる筋肉質の足が死んでもピクピクしているのがより生々しさを感じさせる。
「これ、どうなってるんだろうな。これじゃあできない人も多いし絶対運営に苦情が行くだろ」
結局、内臓を取り出すまで30分近く掛かってしまった。これじゃあ時間がかかりすぎる、クエストが終わらないかもしれない。
俺はホーンラビットをアイテムボックスにしまうと気配察知を使ってホーンラビットを探す。
そしてまた手早く倒す、そして解体、気配察知、倒す、解体、気配察知……
あれから四時間。ひたすらホーンラビットを狩り続けた、倒した数ももうすぐ80体を超えそうだ。
ひたすら槍で突く、斬る、そして蹴る。
より一撃で仕留められるように鋭く、そして力強く正確に。狩っている最中にスキルレベルが上がっているのか気配察知の範囲は広く正確になり身体能力も上がって行っている気がする。
おかげで最後の方はジャンプしてくるホーンラビットの首を狙って切り払うことまでできるようになってきた。
「……」
解体にももう戸惑わない。むしろ心は無になり、手先は機械のように手早く動く。解体する時間も5分を切り、解体も内臓が千切れて残ったりすることもない。
しかし……
「も、もい嫌だ‼ 戦う時間より解体の時間の方が長いじゃないか‼」
俺は空に向かって大きな声で叫ぶ。
思っていたのと全然違うじゃないか‼こんな一方的なのは戦いとは言わない‼
もっとこうモンスターとの生死を掛けたギリギリの戦いをしたい‼血湧き肉躍る戦いを‼
そして俺は走り出した。気配察知に反応するたくさんのモンスターの気配。街から逆方向に見える森に向かって。
書くタイミングが無いので現在クレアが取得済みの職スキル載せときます。
見習い槍士
『見習い槍術』:槍を使った攻撃力が5パーセントアップ。
見習い走兵
『瞬間装備』:アイテムボックスに入っている装備を一瞬で切り替えることが出来る。(兵士系統基本スキル)