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職業と出会い

二日に一回ってなかなかハード……

 教官との訓練を終えた俺は一度ログアウトしていた。

 『HOH』の中では現実世界の二倍の体感時間、つまりこちらで向こうの世界で一日過ごしても現実では半日しか経っていない計算だ。


 昼の12時から初めて今の時間は午後5時、つまり向こうで10時間も過ごしていたことになる。

 夕食の準備をするためにリビングに行ってみるがまだ誰もいない、まだ真昼はログアウトしていないのだろう。

 我が家では夕食の準備は交代制で回している。

 そして今日は俺の番だ。高校時代は料理も洗濯もできなかったが事故に遭ってからは暇になったので料理の練習もして、今ではそれなりのものを作れるようにはなっている。実力的には真昼より少し上手いぐらいだろうか。


「今日は無難にシチューでいいかな。真昼の事だし夜中までゲームをやってお腹を空かせるかもしれないしな」


 俺は今日の夕食を決めると手早く野菜を切り始める。この程度ならもう慣れたものだ。



 料理を始めること1時間。すでに夕食は完成している。

 後は真昼を待つだけだ。


「ごめん、お兄ちゃん。待った?」

 

 するとちょうど階段を真昼が下りてくる。


「いや、今できたところだよ。冷めないうちに食べよう」


 真昼が遅れてくるのはいつもの事だたいして気にしない。


「うん、そうだね」


 お互いに席に着くと夕食を食べ始める。


「ねえ、お兄ちゃん」


「ん?」


 唐突に真昼が話しかけてきた。


「その……『HOH』やってるよね?」


「あ、ああ、やってるけどどうしたんだ?」


「よかった~。広場でお兄ちゃんを待っていたのに全然表れないんだもん、てっきり『HOH』を止めちゃったのかと思ったよ」


 なんだそんな事か。いきなり真面目な顔で聞いてくるから驚いてしまった。


「待っていてくれたのか?悪いことしたな。でもちゃんと楽しんでやってし大丈夫だよ」


「それならよかったよ~。もしわからないことがあったら何でも聞いてね‼ このトッププレイヤーである真昼がなんでも答えてあげるよ‼」


 うんうん、わかったから胸を張るな。見ていて悲しくなる。


「はいはい。期待しておくよーー」


「もう、なんで信じてくれないの‼」


 もういい年なんだから頭の痛い発言は控えてほしいものだ。

 でもいい機会だ。俺のスキルの【英雄の神足】のスキルについて聞いておこう。


「ちょうど聞きたいことがあったんだよ。実はキャラメイクで変なスキルを当ててな、【英ゆ「ストーーップ‼‼」な、なんだ?」


 真昼がいきなり大声で話すのを止めてきた。

 とうとう頭がイッてしまったか?


「お兄ちゃん‼駄目だよそんな簡単に人に自分のスキルを持っていることを言ったら‼」


「そ、そうなのか?」


「そうだよ‼この『HOH』はスキルと職業でステータスが決まるからね。他のゲームと違ってレベル制じゃないからそこらへんがシビアなんだよね~。だから誰にもスキルの事は言っちゃ駄目だよ?

 掲示板なんかではスキルの考察なんかやっているけどそれ以外は言わないのが暗黙の了解だよ」


「はぁ、そうなのか。ならスキルポイントがあるって聞いたんだがそれはなんなんだ?」


 そう、レーティアさんが言っていたスキルを会得する方法の一つだ。だがそれらしいポイントはまだ見かけていない。


「うーんとね、スキルポイントっていうのは、その名の通りスキルを取るためのポイントだよ。

 って、もしかしてネットとか掲示板見てないの?」


「うん、見ていないけど」


 真昼は呆れたものを見るような目で俺を見てくる。しょうがないだろ、掲示板なんて今初めて聞いたぐらいなんだから。


「こまめにチェックした方がいいよ?結構役に立つ事とか載っているから。

 まぁ、それはいいとしてスキルポイントだったよね?スキルポイントは所持スキルのレベルが5上がるごとに1ポイントもらえるの。

そしてそのポイントは転職の神殿で交換できるよ」


 はぁー、便利だなぁ。訓練しなくてもとれるのか、なんだか少し悲しいな。


「でも、結構制限があるんだー。スキルは所持数が多いほどスキルレベルが上がりにくくなるし取得できるのもスキルの取得条件を満たしたものだけなんだよね。

だからβテストでも検証しきれなかったり、レアなスキルの取得条件を隠している奴もいたりするからねー」


 ほんとにシビアなゲームだ。もしやたらめったらに取ってしまったら確実に終わってしまうだろうな。


 そんな話をしばらくしているとシチューを食べ終わった。

 真昼はまたゲームを続けるそうだ。

 すぐさま食器を片付けてゲームにログインしに行こうと二階に行こうとする真昼に声をかける。


「真昼」


「なあに?お兄ちゃん」


「真昼はゲームの中での名前はなんて言うんだ?」


「ふふふ、そうだったね。言い忘れていたよ‼」


 真昼はわざわざ半分ほど上っていた階段から降りてきて意味ありげに笑う。

 俺には分かる、これはめんどくさい奴だ。


「あ、やっぱり教えてくれなく「しょうがないなー‼お兄ちゃんは‼」……」


 別に教えてくれなくたっていいんだけど……


「私の『HOH』での名前は……、ブラック・デスシャドーだよ‼」


 真昼はまるで『キラッ』とでも効果音でも付きそうなポーズを決めてこっちを見る。

 今までに見たことないくらいのドヤ顔だ。


「……」


「……」


 止めてくれ、痛すぎて目が潰れそうだ。

 だが、これだけでは言える。

 ゲーム内で俺が真昼、ブラック・デスシャドーを頼る、いやもう近づくことすら無いだろう。





◆◆◆◆◆◆





 夕食の片づけを終えて俺は再び『HOH』にログインしていた。

 ログイン場所はログアウトした場所と変わらないようだ。


 さて、今からやることと言えば……


「転職の神殿で職業の会得と冒険者ギルドに登録かな……」


 とりあえずの目標はこんなところだろう。


 俺は転職の神殿の神殿を目指して冒険者ギルドを出た。


「おおぉ‼」


 俺が冒険者ギルドに来た時とは違う景色、そうケルディアの街は夜だった。

 当然と言えば当然。半日で一日なのだからもちろん夜もある。

 しかし、俺が驚いたのは夜だったからではない。


「すごい……すごく綺麗だ」


 日本の夜とは違う街並み。

 あちこちに置かれた蠟燭は白い石の壁を暖かい光で照らし、家や店らしきところからは笑い声や怒鳴り声が聞こえてくる。

 空では赤い月と青い月が浮かびたくさんの星が輝いていて電灯が無くても見えるくらいに夜道を照らしている。昼間とは全く違う雰囲気、景色、すべてが美しく幻想的だった。


 俺はそんな街中を鐘の塔の下を目指して歩く。

 昼間にはあまり見なかったプレイヤーもたくさん歩いている。ドワーフやエルフ、キャラメイクでは見なかったが小人のような小さな人もいた。

 こんな歩いているだけで楽しいのは初めてだ。


 そんな景色に見とれていたのか神殿まではすぐだった。

 神殿は何と言うか……神殿だった。石でできた屋根を石の円柱が支えているだけのシンプルな神殿。なんて言うか違和感がすごい、街中にいきなり神社があるような感覚だ。


 しかしほとんどの人はすで職業を会得したのだろうか?人はほとんどいない。

 その時だった。


「あの、すいません」


 後ろから誰か声をかけてきた。

 後ろを振り向くとそこにいたのは俺の胸ぐらいの身長をしたドワーフの女の子だった。

 頭の上に名前が出ない、おそらくプレイヤーなのだろう。


「もしかして初心者ですか?」


 女の子はおどおどしながら聞いてくる。


「あ、そうですよ?」


 いきなり話しかけられて少し驚きながら答える。


「あぁ、よかった~。違ったらどうしようかと思いましたよ~。あ、すいません、ため口でいいですか?」


 やけに大袈裟な女の子だ。真昼と同じような残念な雰囲気が少しする。


「うん、いいよ。俺もため口で話さしてもらうね」


「うん。私、ドワーフで名前をハルって言うんだ。同じ初心者同士よろしくね‼」


「俺は人族のクレア・ジークス。こちらこそよろしく」


 俺たちはお互いに自己紹介をすますと一緒に神殿に向かう。


「ねぇ、クレアってなんで職業を会得してないの? 私、プレイヤー全員すでに会得してると思ってたんだけど」


 ハルは会得していないのが不思議に思ったのか質問してきた。


「俺は冒険者ギルドで訓練を受けてたんだ、それが結構長引いてね。それでこんな時間になっちゃったんだ」


「訓練?そんなのあったんだ~。掲示板でも上がってなかったし初耳だね」


 そうなのか? てっきり登録する際に皆言われるものかと思ったが。もしかして他のプレイヤーはきちんと職業を会得してから登録しに行ったのかな?


「ふーん。ハルこそ何で転職しようとしているんだ?」


 見たところハルは俺とは違ってきちんとしたアーマーのようなものを着ている。モンスターを倒しに行ったのならすでに職業を会得しているはずだ。


「あはは……、うん、すでに職業を会得してモンスターを倒しに行ったんだけどね。その……モンスターがリアルすぎて倒すのが怖くなっちゃったんだ」


 ハルは困ったように笑いながら言う。


「だから戦闘職から生産職に転職しようと思ったの。もともとどっちにしようか迷っていたしキャラメイクでも生産系のスキルが出たからこの際って感じだね」


 なるほど、そんな事もあるのか。確かに今までのゲームとはクオリティもリアルさも違うからそんな状態になってもおかしくは無い。


「なるほど、大変だったんだな」


「ははは、まあね~」


 そんな話をしている内に神殿の中心部に到着する。そこには真ん中に丸い水晶のようなものが台座に置かれていてその前には四角い石板が置いてある。


「あそこで職業を会得するんだよ。

 水晶に手を当てると手前の石板になれる職業が出てくるの。なりたい職業を触れば会得完了だよ。まぁ、私が先にしてくるよ。見てて」


 ハルは二度目なだけあってやり方は分かっているようだ。

 水晶に触りすぐに転職して戻ってきた、もう転職先は決めていたようだ。


「こんな感じかな、まあ簡単なものだよ。次クレアの番だよ」


「おう、行ってくるよ」


 俺も職業を会得するために真ん中の水晶へと近づいて行く。


 水晶は透明で中で小さな光が瞬いている。

 手を水晶に乗せると俺のなれる職業が表示された。


『見習い剣士・見習い槍士・見習い盾士・見習い戦士・見習いテイマー・見習い歩兵・見習い走兵』


 ……意外と選択肢が多くて驚いた。聞いたところによると戦士や歩兵は全員に表示されるらしいが……


「まぁ、迷うことは無いかな」


 俺は『見習い槍士』と『見習い走兵』を選択する。

 走という字を見たらもう迷うことは無い。


「終わった~?」


「おう」


「結構迷うかと思ったけど早かったね、何にしたの?」


 こういうのは言ってもいいんだろうか。まあ無難そうな『見習い槍士』はいいだろう。


「『見習い槍士』にしたよ」


「え、クレアって槍使いなの?」


 ハルはやけに驚いて聞いてくる。どこかおかしいかな?


「メインはね。どうしてそんなに驚いてんの?」


「いや、まぁ驚くほどでは無いけど槍使いは結構少ないんだよ?」


 意外だな、結構ロマン武器として人気がありそうだが。


「剣はもちろん人気で弓もコストはかかるけどソロにも向いているし結構多いんだよ。だけど槍は攻撃判定が厳しかったりパーティーでも邪魔になっちゃうことがおおいから」


「あー、それは教官にも言われたな~」


でも、周りがどうだろうとあまり関係ないのでどうでもよかったりする。


「教官? まあいっか。私スキルポイントつかってスキル取得してくるけどどうする?」


「うーん、俺はやめておく、ここでステータスの確認してるよ」


「そっか、じゃあちょっと行ってくるね」


 そういってハルはもう一つの水晶の方へと走っていく。あれがスキル用の水晶なのだろう。

 俺もステータスの確認作業に入ろう。俺はメニューからステータスを呼び出す。


―――――――

クレア・ジークス

種族:人族

職業:見習い槍士 Lv.1

   見習い走兵 Lv.1

筋力 7

耐久 9

敏捷 12

器用 7

魔力 7

<スキル>

【堅牢 2】【使役 1】【気配察知 1】【健脚 2】

【格闘術 1】【剣術 1】【盾術 1】【槍術 2】

【英雄の神足 1】


<称号>

友と呼ぶもの

――――――


 ……結構増えてたな。

 どうやら教官との訓練でかなり増えたようだ。


「そういえば職業には職スキルがあるって教官が言っていたような」


 職スキルはいわゆる専門のスキルだ、職業ごとに存在しレベルが上がるといくつか得ることができるらしい。だからなのか今の俺には職スキルはそれぞれ一個ずつしかなかった。


「お待たせ。まった?」


 ハルが帰ってきたようだ、中々王道なセリフを吐いてくる」


「……」


 本当に真昼に似ているな。

 思わず真昼を相手するように意地悪をしてしまう。


「まった?」


「……」


「……ねぇクレアってさ友達少ないでしょ」


「いや、多いぞ」


「……クレアってさ性格悪いよね」


「……それはよく言われる」


 離しながらお互いに苦笑しながら神殿をでる。

 俺はそのまま冒険者ギルドに行く予定だったが、ハルからの提案で露店や生産ギルドの案内をしてもらい、防具を買いに行くことにした。


 二人で適当に話しながらハルに案内され道を歩く。

 そして大道理に出た出た時だった。


「ふざけんなって言ってんだよ‼‼」


 いきなり大声の罵倒が聞こえてきた。

 そこには、立派な装備を着けた集団と何人かの初心者らしきプレイヤー同士が向かい合い、それを囲むように人だまりが出来ていた。


 完全に面倒ごとだろう。まあ、俺には関係ないのだが。

 立ち去ろうとハルの方を振り向くと彼女は真剣な顔でその喧騒を見ていた。


「あの中に知り合いでもいるのか?」


「うんん、居ないよ」


「なら関係ないんだろ。早く行こーぜ」


 自分から面倒ごとにかかわるなんてごめんだ、めんどくさい。

 しかし返されたのは予想外の言葉だった。


「いえ、私もクレアも関係あることだよ」


「え⁉」


 こうして俺は面倒ごとに巻き込まれていくのだった。

後半になるにつれてめんどくさくなり、文章が稚拙になっていく……

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