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武技と初心者講習その2

キャラぶれしていないかな……

キャラの設定作るのすらめんどくさい……

 教官との訓練から何時間たっただろう、あれから俺は……


「いーか、目を逸らすな‼ 敵の武器や体の一部を見るんじゃない、敵の体全体を感覚的に捉えるんだ‼目は相手の目を見ろ‼ 返事は‼」


「はい‼」


 スパルタになっていた。

 左手には大きな円盾を構え、右手には身長の1.5倍もある長槍を振り回す。まさにスパルタ兵のような恰好だ。


 教官のサンドバックという名の訓練により今の俺はロングソード、長槍、そして円盾をそれぞれ最低限ではあるものの扱えるようになっていた。

 教官曰く、このケルディア周辺のモンスターには遅れは取らないだろうということだ。


「よし‼ なかなか様になってきたぞ。この訓練ももう終盤だ‼」


 教官は嬉しそうに俺を見て頷く。


「ありがとうございます。でも、もう一通り訓練し終わりましたよ?」


「ああ、基本的な扱いはもういいだろう、しかし最後にもう一つ教えることがある。今からやって見せるからよく見ておけ」


 教官はロングソードを左腰に構え腰を下ろす。

 それと同時に空気が張り詰めたような雰囲気が教官から発せられてきた。まるで自分より圧倒的に強いものに睨まれた時のような感覚、うまく体が動かない。

 その瞬間だった。


「フンッ‼」


 一瞬だった。

 教官の剣は振り切られた形で止まっていた。同時に地面の砂が大きく舞い上がる。

 ……速すぎる、ギリギリ目で追える速度だった。そして何より力強さが、威力が違う。


「見ていたか、あれは『スラッシュ』と呼ばれる剣の武技だ。

 武器にはそれぞれ武技がある。剣には剣の、槍には槍のそして盾には盾の武技がある。

 これは、スキルを鍛えていくだけでは得ることはできない。誰かに教えてもらうか、もしくは自分で技を磨いて自力で取得しなければならない。

 そしてお前には今からそれぞれの武器に対応した基本的な武技を会得してもらう、これが最後の訓練だ」


 凄い、凄すぎる。これが武技。

 俺は無意識のうちに拳を握っていた。


「俺にも教官と同じような事が出来るんですか?」


「もちろん同じようにはいかない、威力も速さも俺より何段階か低い形になるだろう。しかし今のお前なら会得することはできる。そこからお前が自力で武技を昇華させるのだ」


 教官の声は無駄に大きくなく真剣さがあふれている。

 本気で俺が覚える事が出来ると信じてくれているのだろう、そう思うとボロボロだった体だが訓練前よりも気力に満ち溢れているような気がした。


「わかりました。会得して見せます」


「……よし、その意気だ」


 教官は満足そうに頷く。


「まずは長槍からやってみろ。長槍の武技は『上段突き』だ。見本を見せるから見様見真似でやってみろ」


 教官が『上段突き』を放つ。

 相変わらず、いやさっきよりも速い。その矛先は相手の心臓を最短距離で貫いているようにも見えた。

 もし武技を知らずに初見でやられたら何もできずに心臓を貫かれてしまうだろう。


 俺も見よう見まねでやってみる。


「フンッ」


 しかし矛先はぶれて安定せずに力も入らない。

 再度突く。

 今度は突きの勢いで体が持っていかれる。

 更にもう一度突く。

 相手の心臓の位置は突けたものの何かが違う、おそらく手だけで突くのではだめなのだろう。


 難しい。

 基本的な突き、基本的だからこそ難しい。

 正直ここまでうまくいかないとは思わなかった。


 それでもへこたれるなんてできない。

 諦めるのなんてもうごめんだ。

 何度も、何度も何度も突く。


 より速く。

 より正確に。

 より力強く。

 突く、突く、突く。


 武技の会得の鍛錬を開始してから何時間たっただろうか、すでに突きの回数はゆうに四桁を超えた。

 それでも教官は何も言わずに俺の横に立って見守ってくれている。

 そして俺の集中力は最高潮に達していた。腕は持ち上げるのも怠く足は微かに痙攣している。

 視界の端では体の変調を訴えるアラームが鳴り響ている……しかし止めない、ひたすら突く。


 そしてその時は来た。

 矛先は力強く正確に、体の前身の力が槍に載るのが分かる。

 まるで体が自動的に動くように、否無意識的に動く。


「ハッ‼」


 出来た‼ 感覚的にわかる、それぐらいの今までとの突きの違い。


「よくやった‼ 武技が発動したぞ‼」


 教官の顔も喜びが表れていた。


「はい‼ありがとうございます‼」


『ピロン‼ 槍系統武技『上段突き』を会得しました』


 頭の中に会得を知らせるログが流れた。


「一度武技を会得すると体がそれを覚え込む、次からは意識するだけで発動することができる。もう一度やってみろ」


 教官に促され、槍を構える。


「フンッ」


 二度目は驚くほどに簡単にできた。なんだかさっきまでの努力の無駄になったようで少し悲しいが、会得できたのは正真正銘、俺の努力だ。なんだか嬉しいな。


「感傷に浸っているような時間は無いぞ‼まだ二つも会得しなきゃならないんだ。さっさと剣を構えろ‼」


「は、はい」


「さっきみたいにノロノロしてたら日が暮れちまうぞ‼さっさと会得しろ‼」


「わかりました‼」


 そしてまた俺は剣を振るい始めたのだった。







 …………『上段突き』を会得した後の訓練はより熾烈を極めた。

 それこそ本当に日が暮れるまでやり続けた。

 そのかいあってか何とか俺は残る二つの武技も会得に成功した。


「よくぞ武技を覚えこの初心者講習を乗り切った」


 教官も俺もすでにボロボロになっているが心は充実感に満ち溢れている。


「だが絶対に慢心するな。確かに武技は会得したがそれもはっきり言ってまだまだだ。同じ武技をぶつけ合っても確実にお前が競り負けるだろう」


 その通りだ。俺の武技は教官と比べるまでもなく完成度が低い。

 会得したと言っても基本中の基本だ、当然競り負ける。


「これからも止まることなく技を磨くことだ。

 そうすればお前の武技はより昇華して強くなれるだろう。

一流の冒険者やそれこそ過去の英雄はそれぞれ技を突き詰めて自分だけの独自の武技を会得している。

 それは相手を必ず殺すための技、これを『必殺の一撃』と呼ぶ。お前ももしかしたらいつか生み出せるかもしれない、一応頭の片隅に覚えておけ」


 必殺の一撃。かっこいい響きだ。

 何と言うか子供心をくすぐる。


「教官も自分だけの必殺の一撃を持っているんですか?」


 気になったので質問してみることにした。

 俺個人の感想だが教官は冒険者ギルドで見た中で一番強そうに見える。


「フッ、さあどうだろうな。もしかしたら持っているかもしれんな」


 教官は不敵な笑みを浮かべ笑う。

 かっこよすぎるよ、教官。


「さて、そろそろ訓練修了の時間だ。これで初心者講習を修了する‼

 その武器は三つともお前にくれてやる、ありがたく受け取れ」


 三つとももらえるなんてすごくラッキーだ。

 おそらく初心者講習で払ったお金より高くつくだろう。


「ありがとうございます‼本当にお世話になりました」


「俺こそ感謝したいくらいだ。ここ最近誰もこの初心者講習を受け無くてな、ずっと暇していたんだ。

今日は久しぶりに運動できたしいいこと尽くしだ。」


 そりゃあ、あの訓練じゃ誰も受けたがらないだろう。あれじゃ命がいくつあっても足りない。


「本当にありがとうございました、また訓練しに来ますね」


「おう、定期的に来いよ。初心者講習じゃなくても冒険者に向けていつでも訓練所は開けてあるからな‼」


 教官とも訓練も何度殺されかけたかわからないが今では少し名残惜しい。

 そういえば、教官の頭の上に浮かんでいる名前はまだ『???』のままだ。別れ際に教官に名前をもう一度聞いておこう。


「教官‼」


「なんだ⁉」


「教官の名前をもう一度教えてください」


「あ?そんな事か。俺の名前はバジル。バジル・チルドだ‼」


 バジル・チルド?なんか聞き覚えのあるフレーズの気が……


「はっはっは、不思議そうな顔してんな‼ 俺は受付嬢の、レーティア・チルドの兄貴だ‼」


「え、レーティアって受付嬢の⁉でもレーティアさんは人族じゃ……」


「俺たちは人族と獣人のハーフだ。俺は獣人のちを濃く受け継いでいるがあいつは人族の血が濃いんだよ」


 なるほど、ハーフだからって生まれるのはすべて獣人ではないのか。

 驚きの事実である。


「ああ、それとレーティアには感謝しておけよ‼」


「え?何でですか?」


「お前が死にかけるたび飛んできた回復魔法。あれはレーティアの回復魔法だ」


「な‼」


「はっはっは、楽しかったぜ‼」


 いつの間にかバジルの横でレーティアさんが笑いながら手を振っている。

 つまり俺はこの兄妹に嵌められたということなのだろう。


「次に来たときはボコボコにしてあげますよ‼

 それとレーティアさんもありがとう‼」


 こうして俺は振り返ることなく訓練所の出口に駆けていくのだった。



◆◆◆◆◆◆

----バジルside----




「クレアさんすごかったですね、バジル兄さん」


 クレアが走り去るのを見ながら横からレーティアが話しかけてきた。


「ああ、今どきの奴にしては珍しい根性のあるやつだったな」


 横にレーティアが居るので口にはしないがまさしくクレアを天才だと思った。


 ランニングでは泣き言をいうし、格闘術に関しても喧嘩をしたことがないのかお粗末なものだった。

 しかしそれ以上に見せつけるセンスと身体能力がクレアにはあった。


 手加減したとは言え獣人の、ましてや職業持ちの俺に迫るほどの敏捷力と持久力。

 気配察知の訓練で見せた判断力。

 武技の会得の訓練で見せた集中力。

 そして何より格闘術で怖がりながらも前に進む勇気とぶっ飛ばしても起き上がる根性。


 思わず予定になかった武技の会得まで教えてしまうほど目に光るものがあった。


「レーティア、もしクレアが何かに悩んでいたら力になってやれ」


 横にいるレーティアにクレアを助けるように指示を出す。

 助けすぎはよくは無いが少しだけならいいだろう。


「うふふ、そんなに気に入ったんですか?でも大丈夫ですよ。もちろん私も協力しますし、どうやらドジルさんも目をかけているみたいですしね」


「フン、ならいいんだが」


 鼻を鳴らしながら腕を組む。


「そんな意地張っちゃって。少ししっぽが揺れてますよ?」


 横からレーティアがニヤニヤ顔で覗き込んできる。

 ほんとに憎たらしい妹だ。


「お前こそ人面気にして気持ち悪い笑顔浮かべやがって。クレアもきっと気持ち悪がってるぞ」


「そんなことありません~。クレアさんはきっと私の可愛さにドキドキしてますよ~だ」


「はん、どうだかな」


 俺は体を翻しながら訓練所の出口へと向かう。


「いくぞレーティア。元の職場に戻れ」


 後ろから追いかけてくる受付嬢に言葉を投げかける。


「わっかりました~、ギルドマスター(・・・・・・・)


「フン、その言葉遣い上に戻るまでに元に戻しておけよ」


 そうして、俺、冒険者ギルド・ギルドマスターのバジル・チルドは元の職場に向かうのであった。


『ピコン‼ 『訓練官(???):???』➡『ギルドマスター:バジル・チルド』』


次で戦闘シーン入れられるかな?

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