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概念スキル

 あれから一日中深層部でモンスターを討伐しまくっていた俺たちは、休憩の為隠れ家を目指していた。

 

 オークの群れを遠距離から【投擲】、【精霊魔法】そして鋼銃による狙撃で殲滅し、いつぞやのレッドグラップベアーを【幻霧作成】で確固撃破。

 手ごわそうだったエルダートレントの群れもグランのサポート、モナの【結界生成】、そしてたくさんのモンスターを討伐したことによって大幅に上昇したステータスによる俺の拳によって打ち砕くことが出来た。

 深層部ではおそらく弱い部類に入るモンスターを今日一日でたくさん倒すことが出来たのだった。




 「……疲れたな。でもこれなら頑張れば明日中に、遅くても明後日にはホーン村に戻れそうだ」


 疲れ切り重たくなった体を引きずるように歩きながら俺たちは隠れ家に辿り着く。

 約半日にも及ぶ同格、もしくは格上との戦闘はステータス面上には表れない形となって着実に俺の体にのしかかってくる。

 例え、HP、MPが全快だとしてもこれ以上戦闘は行いたくない。


 たどり着くと同時に近くの家具に倒れ込むように体を預ける俺、しかしそれとは真逆の様子を見せる一匹と一人がいる。


 「……楽しかった。もっと銃を撃ちたい‼」


 「ポンポンポーン‼」


 嬉しそうに鋼銃に熱い視線を送るモナに【変化】で人型となって持ち帰った果実に頬ずりしているグランだ。

 モナはともかくグランがここまで元気だとは俺も以外で仕方がない、戦闘でもさぼっている様子は見なかったにも関わらずだ。


 ——もしかして俺、忍耐力的な面でグランに負けてるのかな……


 その意外な事実が余計に俺の心身ともにダメージを与える。

 グランの事を下に見ていたわけでは無いが精神的に負けてるとは普通にショックだ。

 

 「ポン?」


 そんな俺に気が付いたのかグランが俺に近寄ってくる。


 「なんだ? 心配してくれてるのか、グラン。お前も成長したなー」


 「……クレア。グランが早くご飯にしようって」


 「ポン‼」


 「……そうだな」


 わかってた、わかってたけど何か虚しさを感じざるを得ない。

 俺は何かで霞む目を拭いながら立ち上がる。

 別に泣いているわけでは無い、これはモンスターとの激しい戦闘でかいた汗だ。


 「今日は皆頑張ったし、豪華にいくか」


 そう言いながらアイテムボックスから深層部でかき集めた果物や、モンスターを解体して手に入った肉を解体用ナイフで刻み始める。

 グランは気にしてないがここ最近果物しか食べてない、そろそろ肉が恋しくなってきたのだ。

 

 ——料理するなら調味料買っておけばよかったな、まぁ今回は焼くぐらいでいいか。


 刻んだ肉と山菜を一緒に炒める、素の味だがまずい事は無いだろう。

 そんな俺の様子をモナはじっと見つめてくる。


 「……クレアって料理できたの?」


 「まぁな、スキルの方は持っていないからそこまで美味しくは無いだろうけど。

  もしかして料理してみたいのか?」


 「……別に、少し興味がわいただけ」


 しかしそんな事を言いながら目を離さずに俺の手元を見つめてくる。どちらかというと物珍しいから見ているようだが興味はあるようだ。

 俺は【料理】スキルを会得するつもりは無いがもしモナが会得したいなら協力してやろう。

 どうせこれからたくさん旅をするのだ、野営なんかで料理する機会なんて腐るほどあるだろう。


 「ポンポン‼」


 ……もちろんグランは食べる専門だ。


 「こんなもんかな。よし、飯にするぞ‼」


 俺たちは料理し終えると早速グランとモナと一緒に食べ始める。

 味気は無いが血の味……というか塩っぽい感じがして食べられるものになっている、調味料もあればかなり上手くできていただろう。

 

 「まぁ、こんなもんだろ」


 「……うん、美味しい?のかな」

 

 モナも美味しそうに食べている。

 彼女はまだ本当に美味しいものを食べたことが無いのでいまいちよくわからないのだろう。

 

 「はは、ありがと。ホーン村に戻ったら酒場に連れてってやるよ、これより数倍美味いから期待しとけ」


 その言葉に驚いた顔をしながら嬉しそうに頷く。

 

 ——銃以外の事はまだまだ純粋だなぁ。まぁモナはいい、問題は……


 俺は視界の端で必死に飯を口に詰め込んでいる一匹の狸に視線を送る、その様子は狸というよりもハムスターに近い気がする。

 グランはかなり量を食べるが、地味に美味しくないものは自分で見極めて食べない姿を見ることがある。

 食べているということはまずいわけでは無いのだろうが舌の肥え始めたこの大食い狸だ、文句を言ってくるに違いない。


 「ポンポン、ポポン」


 「モナ、なんて言っているんだ?」


 【シンクロ】を使っているわけでもないのでモナに翻訳を頼む。


 「……えっと、その、……美味しいって」


 彼女はどことなく気まずそうな様子で答える。

 だがその様子が何を言っているのかを如実に表してる。


 ——別に傷ついたりはしないさ、調味料もなかったしな。だが……


  

 「俺、得意料理は狸鍋なんだよなぁ……」


 「ポン‼ ポンポン‼」


 「……すごく美味しい、いつまでも食べていたいだって」


 「はは、そうかそうか。それは良かった」


 うん、これで皆ハッピーだ……とグランをからかうのを止めてそろそろ明日の準備をしておくとしよう。

 俺は料理を食べながら、武器の手入れと消費したアイテムの確認を行う。

 

 今回もかなりモンスターを倒したしかなり消耗したはずだ、いつもならハルに見てもらいに行くのだが今はそうもいかない。長槍についた血や油をぬぐい取りながら磨き、手入れ用の油を軽く塗り込んでおく。

 戦闘中に手入れ不足で武器が壊れるなんてことになっても全く笑えない。

 

 と言ってもそんなにすぐ壊れることは無い、モンスターの素材を【鑑定】している内に武器の耐久度もわかるようになってきたのだ。

 俺は最後に確認のために長槍に【鑑定】をする。



『黒鉄の十字槍:『銘:クロス』

 耐久度 320


 巨匠フェグルスによってつくられた漆黒の長槍。

 耐久性が高く、普通武器の中ではかなりの業物の部類に入る』  

 


 耐久度はまだ320もある、耐久度が0となると壊れるのでかなり無茶してもまだ壊れることは無いだろう。

 しかし同時に【鑑定】で分からない部分も出てきた。

 俺は飯を食べ終わり、【初級錬金術】で弾丸を作ろうとしているモナの持つ銃を【鑑定】する。



『獅子の紅銃:『銘:なし』

 耐久度 200


 錬金術師ヴェルナートによって魔改造された片手銃。

 獅子の咆哮にも似た発砲音を聞くだけで一部のモンスターは死を覚悟するだろう。

 その銃身には獅子の概念が込められている希少武器。


 概念スキル:『獅子の紅弾』』



 

 この通りである。

 概念スキル、初めて聞く言葉だ。

 もしかしたら希少武器だけが使えるのかもしれないし、魔改造されたから付いたのかもしれない。今は分からないがケルディアに帰ったらフェグルス爺さんに聞いてみるのもいいかもしれない。


 「まぁ、使い方も分からないしな。今はあまり関係ないだろ」


 俺は【鑑定】を終えると、次に自分のステータスを開く。

 かなりレベルも上がっている……が今はそれより俺の目を引く表示が浮かび上がってる。

 それは【使役】の横に開かれた従属モンスターのステータス、そう、グランとモナのすてーたすだ。


 思わず目を擦り見直すがその表示は変わらない。

 つまりこれはバグでもなんでもないと言う事だ。

 

 開いた口がふさがらないとはこういうことだ、俺は呆然としながら呟くのだった。


 「……お前ら、もしかして進化してる⁉」

短め……だ――!

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