キャラメイク
唐突に小説をかきたくなったーー!!!
「ピンポーン‼お届け物でーす」
「はーい‼」
玄関のベルが鳴る。荷物が届いたようだ。
「お兄ちゃん、届いたよ‼」
妹が大きな荷物を両手で抱えて俺の部屋に飛び込んでくる。
「これで一緒に『HOH』で遊べるね‼」
|『Hero of heritage』《英雄の遺産》、通称『HOH』。
2700年にVR技術が飛躍的に進歩し一般化されたVRマシーンや五感にリンクし実際にゲーム内で体を動かし遊ぶことが出来るVRMMORPGなどが多く発売された。
そして今日新たに『Hero of heritage』が発売された。
しかし、この『HOH』は今までのゲームとは別格と言ってもいいものだった。
一つ目にスケールが違った、この『HOH』はゲーム会社が開発したものではない、国が一つのプロジェクトとして開発したもので最新技術がつぎ込まれた国公認のVRゲームと言ってもいいものだった。
二つ目に自由度、RPGのようにシナリオにそって進めるのではなく自由にゲームの中を旅でき、今までのゲームでは簡略化されていたようなことも実際にすることが出来る。
他にもいくつかの理由はあるもののこうしてβテストが終わるころには日本中で話題沸騰の注目の的となったのだ。
そして、そのゲームが今日サービス開始なのである。
「もう、お兄ちゃんどうしたの、考え事?」
真昼は心配したのか俺の顔を覗き込んでくる。
「ん?ああ、なんでもないよ。それより持ってきてくれてありがとう真昼」
「どういたしまして~。まあ、私はβテスターだからねゲームの中でもどんどん頼ってきてくれてもいいよ‼」
胸を張ってどや顔をしてくるが真昼よ……まな板が強調されてお兄ちゃんはなんだか悲しい気持ちになってくるよ。
「……そうだね、頼りにしてるよーー」
「ひどっ‼棒読みすぎでしょ‼ ほんとにこれでもゲーマーとしてはかなり有名なんだから‼」
真昼は両腕をぶんぶん振りながら抗議してくる。
そう、俺の妹陣野真昼はβテスターだ。真昼は重度のゲーマーで俺とは違って様々なゲームをやり込んでいる。そのせいか高校生にもなってなかなか、いやかなり中二びょ……残念なところがあるがそれ以外は俺に世話を焼いてくれるかわいい妹だ。
「ハイハイ、まぁ、ゲームの中まで頼りにするのは悪いしできる限り自分で解決するよ」
「うん、でも……」
真昼は俺の足に目をやるとどんどん声をすぼめていく。
「何度も言うが俺の足はお前のせいじゃないし気にする必要はないよ。これは自分でやったことだしそれにお前が助かったんだ、これは名誉の負傷さ」
俺は笑いながら太腿より先、銀色の鉄でできた義足を叩く。
「それよりもうすぐサービス開始時間だぞ。大丈夫なのか?」
時計は11時55分を指している。確かサービス開始時刻は12時だったはずだ。
「え、ほ、ほんとだ‼急がなきゃ‼ 何かあったらまた『HOH』内で連絡して、それじゃまた後で‼」
俺は急いで部屋から出ていく真昼を笑って見送るとゲームの入った箱からヘルメット型のVRマシーンを取り出す。これは一番オーソドックスなタイプだ、世の中には全身入るカプセルタイプもあるらしいが性能事態はたいして変わらないそうだ。
そしてこのヘルメット型は頭にかぶってスキャンするだけで基本の設定は勝手にしてくれるので実際やらなければならないことはパソコンにコードを刺すぐらいだ。
本当に便利な世の中である。
俺は設定を素早く済ませると窓の鍵がかかっているかを確認してVRマシーンを被るとベットに寝ころぶ。
「ゲーム自体久しぶりだからドキドキするな。えっと始めるには……よし『起動』」
言葉を発すると同時に俺の意識は薄れていった。
◆◆◆◆◆◆
「知らない天井だ……なんてことはないか」
目を覚ますとそこは白い壁と床の質素な小さな部屋だった。真ん中には木でできた四角いテーブルと椅子があるくらいだ。
正直拍子抜けというのが今の感想だ。もっとこう、美人の女性のナビゲーターが出迎えてくれたりするのを想像していた、……小説の読みすぎかな。
しかしそれより大切なことがある。
「俺、今立っている……」
いや立っている感覚がある。
義足とは違う、足の裏に伝わる床の硬さが、足の脛で擦れるズボンの感覚が。
ゆっくり一歩歩く、思った通りに足が進まない。
「はは、義足に慣れすぎちゃったのかな」
一歩もう一歩、今度は思い通り歩くことが出来た。
視界が涙で滲む。三年、三年ぶりだ、あの事故で俺は足を失った。
もちろん真昼を救えたのだから後悔なんてしていない。だけどやっぱり悔しかった、あの頃陸上部のエースとして活躍していた俺は、夢や希望に満ちた充実した毎日を送っていたのだ。
そして事故後、費やしてきた努力が無駄になった虚無感と道が閉ざされた絶望感に打ちひしがれた。
もちろん今ではきちんと前を向いて新しい道に進めている。
しかし今でも考える時がある、「あのまま足を失わなければ、足があればもっと色んな事が出来たかもしれない」
しかし現実の俺の足は鉄の義足だ、満足に歩けない。
だけどここなら『Hero of heritage』ならやりたかったことがやり残したことが出来るかもしれない。
そう思うと涙が止まらない。嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい‼‼
最初は真昼に誘われて暇つぶしにやるつもりだったが楽しみになってきた。
やりたいことを全部やろう‼そう心に固く決意したのだった。
さて、あれからしばらく部屋の中を走り回ったりジャンプしまくったりしてしまった。
こんなことしてるの俺だけだろうし他のプレイヤーはみんなすでにキャラメイクを終えてプレイしだしているだろう、俺もそろそろ次に進もう。
「キャラメイクは椅子に座ったら始まるのかな」
部屋のなかを走り回っていても始まらないのだからおそらくそうだろうと目星をつけて椅子に座る。
『ようこそ、『Hero of heritage』の世界へ、我々はあなたを歓迎します。』
唐突に部屋の中に機械の声が聞こえてきた。
思った通りキャラメイクに移れたようだ。
『初めにあなたの名前を教えてください』
目の前に半透明なウィンドウが出現する、うん、ファンタジーだ。
『あなたの名前は「クレア・ジークス」でよろしいですか?』
目の前のウィンドウでYESをタップする。名前は特に意味は無い、ただ自分の好きな小説の登場人物の名前をパクって組み合わせただけだ。
『次に容姿を設定してください。
一から作成することは可能ですが身長などに大きな差が生じるとゲーム終了後、変化の差に酔うことがあるのでご注意ください』
なりきりプレイをする人は一から作成すると真昼から聞いたが俺は特に弄るつもりはない。
なのでウィンドウから体のスキャンから作られたアバターを呼び出す。
「すごいな、ほんとに俺そっくりだ」
目の前に現れた立体の3D映像を眺めながら呟く。
アバターの顔については真昼からあまり弄らない方がいいと言われている。なんでも弄りすぎると大きな違和感が出てしまうらしい。
なので、髪の毛は明るい茶色にして下がっている髪を後ろに流すような髪型にして目は真っ赤な紅色にするだけにしておく。
『次に種族を選んでください』
人族、エルフ、ドワーフ、獣人。いわゆるファンタジー基本な種族だけのようだ。
タップしてみるとそれぞれについて細かな説明が出る。それぞれ特徴やステータスに多少の偏りがあるようだ。
「まぁ、まだ何をするかも決めていないし人族でいいかな」
ついでに人族はステータスはすべてほぼ同じ値で偏りがないが、特徴として一番就けるjobが多いらしい。
『最後にランダムに三つスキルを獲得できます。机の上のくじから三つの珠を引いてください』
ナビが終わると同時に机の上に多きな箱が現れる。ここから三つ珠を引けというのだろう。
「にしても薄々感じていたけどなんだか演出がへぼいな……」
ぼやきながらとりあえず中を覗いてみる、しかしすべての珠が黒くなっていて色や形ではわからないようになっているようだ。
手を突っ込んでみたがすごく数が多い、おそらく珠の数は千を超えてるんじゃないかと思うほどだ。
とりあえず一つ適当に取り出してみる。
「よっと、……うおっ」
取り出した珠はいきなり銀色に色が変わった。
『スキル【堅牢】です』
「堅牢って耐久が上がるのか、使えるかどうかよくわかんないな……まぁフツーかな」
二つ目も迷わず手に付いたものを取り出す。
今度は銅色だ。
『スキル【使役】です』
「モンスターとかを仲間に出来るのか?さっきよりは使えそうだけど。でもなんで銅色なんだ?」
しかしあまり時間がないので考えるのを放棄して三つめも時間をおかず手を突っ込む。うん、まあ勘だ。
「って、うおぉぉぉぉ‼‼」
取り出した珠は黒色から虹色に変化し光りだした。
『ユニークスキル【英雄の神足】です』
「うぉ、なんかレアそうだ‼」
というか足に関係あるから大当たりだな‼俊足の部分が俺には輝いて見える。
今の俺にとっては足に関係あるものは何でもラッキーに思えてしまう。
『キャラメイクはこれで終了です。
キャラメイク終了後はアカウントの削除、または特殊アイテムが無ければ変更はできません。
間違いがなければYESを押してください。
『クレア・ジークス
種族:人族
職業:--、--
筋力 5
耐久 5
敏捷 5
器用 5
魔力 5
<スキル>
【堅牢 1】【使役 1】【英雄の神足 1】 」』
特に問題もないのでYESをタップする。
『これでキャラメイクは終了です。
ではあなたにまだ見ぬ冒険と祝福を』
そうして再び俺の意識は暗転したのだった。
つらっ、最後の方書いてるの辛いわ!!