2通目
お姉ちゃん、やっぱりハルファは天然さんかも知れません。
あたしを間違って異世界に連れ込んだのも、天然さんのなせるワザなのかも、です。
意識せず騒動の火種を放り込む女神さまです。
ハルファの世界に案内されましたが、勇者と一緒の所に案内されました。
勇者召喚したのはとある王国らしいですが、勇者が四人で大騒ぎです。
この世界では勇者は三人、『陽の勇者』『月の勇者』『星の勇者』と呼ばれ、左手の甲にそれぞれ象徴となる紋章があるそうです。
王国の関係各者が大慌てで左手を確認しています。
茶髪のお兄さんは○にその周りを四つの△が囲んでます。
『陽の勇者』ですね。
黒髮の前髪ダラリのお兄さんは『月の勇者』です。三日月でクロワッサンみたいな紋章です。
栗色の髪のポニーテールのお姉さんは星の紋章☆が付いてます。『星の勇者』確定です。
あたしは勇者じゃないので左手に紋章はありません……のはずですが、何かありますね。イナズマみたいなアルファベットのZをくちゃって潰して斜めにしたみたいな紋章(?)が。
「ハルたん、これ何?」
あたしは肩に乗るハルたんにコソッと聞きました。
ハルたんは首を傾げてます。ハルたんも知らないようです。お姉ちゃんなら何か知ってるかもしれないです。
何か分かったら教えて下さい。
王国の関係各者さんも首を傾げてます。
勇者召喚は、ハルファの手に負えない事態に対応する手段だと本人が言ってました。
ハルファが直接女神の能力で世界に干渉すると、世界が崩壊するかも、だそうです。
笑顔で言うことではないです。
そこで、異世界の人間に能力を授けて対応するのです。
お姉ちゃん、あたし達の世界はハルファのお兄ちゃんが管理してるそうです。知ってました?
あたしは知りませんでした。
困った事があるとお兄ちゃんにお願いするそうです。
お兄ちゃんはものすごく優秀だ、そうです。
ハルファがデレデレで言ってました。
ものすごく優秀なのは、お姉ちゃんと同じです。
あたしもお姉ちゃんを自慢しときました。
ハルファが、次の勇者候補に入れとこうって言ってましたよ。
あ、それで優秀なお兄ちゃんの世界のあたし達は、ハルファの世界の人達より基本数値が高いのです。
だいたい村人Aと勇者ほど違うそうです。
よく分かりませんでした。
「勇者ならば、女神様から祝福を得てるはずじゃ……」
頭とヒゲが反比例したお年寄りが、頭をキラリーンと光らせ突然そう言いました。
「勇者様、女神様から祝福は授かってませぬか?」
「僕は全刃適応、補正とか言ってた。刃の付いた武器なら全て使えて、色々補正が付くとか……」
『陽の勇者』の茶髪お兄さんがそう言いました。
うらやましいです。
その能力があれば、お魚の三枚おろしも簡単です。お刺身も美味しく頂けるです。
「俺は全魔法適応補正だそうだ。全ての魔法を覚え、使えるらしい」
『月の勇者』の前髪ダラリさんがそう言います。
それはあまりうらやましくないです。
覚えるのは面倒いです。
ポニーテールのお姉さんは、回復や付与魔法が全適応補正だと、ポショポショと言いました。
恥ずかしがり屋さんみたいです。
もちろん勇者ではないあたしにはそんな便利能力は……。
「有りますよー」
とハルたんがコソッとあたしの耳を引っ張ってそう言います。
「強化ですよー」
あるそうです。
文字通り強化する能力です。
関係各者が微妙な顔をしてました。
女神さまからの祝福とは思えない、ショボさみたいです。
一般人も持ってる、普通だそうです。
普通良いです。お魚が三枚におろせなくても、生きていけます。
とりあえず、あたしは他の勇者さん達と教育を受ける事になりました。
またメールします。
お姉ちゃんバイバイです。
お読み頂きありがとうございます